早く死ねということか?…死の淵から生還、相続対策を急ぐ60代地主に告げられた「銀行員からの失礼な言動」【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月19日 9時15分
(※画像はイメージです/PIXTA)
地主の相続において相続の当事者は、関係者から思わぬ発言を耳にする機会があるかもしれません。しかし、そこで忘れてはならないのが、相続対策の主体となるのが誰であるかということ。本記事では横井氏(仮名)の事例とともに、地主の相続におけるよくあるトラブルについて、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。
死の淵から生還…急ぎ、相続対策を進めることに
横井智也(仮名/60代)は昨年から本格的に相続対策に着手した。
きっかけは大病を患い生死の境をさまよったことにあった。いまではリハビリも進み、従前の状況に近づきつつあるが、将来のことを考えると生前に準備を行っておくことが望ましいと考えている。
身体をもとの状態に戻すとともに、この世に生を享けた限り寿命をまっとうしたいと思い、リハビリや筋力の回復にも全力で取り組んでいる。
承継にあたっては、2人の子供(長女・長男)のうち長女に不動産を承継してもらいたいと考えている。長女は、人との接し方も抜群に優れているとともに、不動産や金融、税務の知識にも長けており後継者として最も相応しいためだ。
早速、所有資産の整理および相続税額の試算から着手した。その後、さまざまな検討を行い納税資金の確保とともに、所有する月極駐車場への賃貸マンション建築、不動産の購入を対策の柱とした。
取引のある金融機関への融資の打診なども並行して行い、計画の骨子が徐々に固まってきた。ここに至るまで長女にはすべて同席をしてもらい主体的に取り組んでもらった。
しかし、順調に進んでいくことに比例して私の心には大きな不満が膨らんできている。
不満の正体
不満の正体は明確である。私の「死」を前提にして話をしているためだ。一例をあげればこのようなこともあった。古くから融資や預金の取引がある地方銀行の担当と面談したときのことだ。
相続税の申告書に私の所有資産や負債を記載のうえ「いま、智也さまに相続が発生したら〇〇円です。計画している内容を実現できたとすると〇〇円まで下がります」との提案であった。しかも、娘に対してのみ説明をしており、横に座っている私のことはあたかも存在しないかのような対応であった。
また、別の機会においても「駐車場に、賃貸マンションを建築すると相続税は〇〇円になります。費用はお示ししたとおりですがローンを調達するため、自己資金はさほど要りません。智也さまの相続が発生しても安心して家賃収入からの返済が可能です」この内容についても、娘に対して話をするばかりで私のことを気に掛けるそぶりもない。
私のほうから、長生きすればローンが減っていくことを指摘すると、「当然、その場合には相続税は上がっていきます」との回答である。
対策を進めていくと必ず同じような場面に出くわすことになり、あたかも対策が終われば早く死んでください、と言われているかのようだ。
「相続」が心に重くのしかかる
対策によって気持ちが滅入っている。すべての話が「智也の相続」であり、提案にくるさまざまな関連業者も大概同じような内容だ。
話をする相手も娘であるが、相続対策の主体はどちらなのであろうか。
――あくまでも相続対策を始めることにしたのは私であり、どのように進めるか決断するのも私であると思っている。それぞれ協力してくれている会社も営利法人にあることから、なにか形にしないといけないのはよくわかるが、私の意向に寄り添うような提案がなぜできないのか、と思うことが多い。
私としては、寿命をまっとうしたいと思っているし、孫の成長も見届けていきたい。可能であれば曾孫の顔も見たいと思っている。「自分が亡くなる」という言葉を連日のように聞き続けることに堪えられなくなってきている。
最近では「相続」という言葉も聞きたくないし、目にも入れたくない。通院先の担当医からも最近顔色がよくないので、心労が溜まっているのではないかとの指摘を受けることが増えてきたし、リハビリに通うこともだんだんと億劫になってきた。
先日はついに担当の銀行員に向かって「自分の死の話を無神経にされて大変腹が立っている。失礼である」と声を荒げてしまった。突然怒鳴られた銀行員は、とても驚いた顔をしてその後、終始黙ってしまった。大人気ないことをしてしまったと反省したが、自分の気持ちを伝えたことで少しスッキリもした。
相続対策で直面する「失礼な〇〇」
「失礼な〇〇」には、さまざまなものが含まれる。
家族であり、士業などの専門家であり、ハウスメーカーであり、不動産業者であり、金融機関であり、そのほか多くのものが含まれる可能性がある。ついつい成果を求めて後継者ばかりに接触をしたり、提案を行ったりと当事者が蔑ろにされていることがあるのではなかろうか。
「死」について扱うのは非常にデリケートな問題であり、よかれと思って進めていることが相手にとっては「失礼なこと」として捉えられていることもある。
相続の関係者は、
・言葉を柔らかく置き換える
・関連する当事者全員の顔をみて提案を行う
・家族それぞれの意向に相違がないか確認を行う
・焦らずに時間を空ける
など相手方の心についても気にかけながら話を進めることが望ましいと思う。
一方で、生前の適切な準備によってその後の円滑な承継につながることは間違いない。提案を行う側は、特に資産がある場合には依頼者(本件では横井智也氏)の気持ちに寄り添って計画的に進めていくことが大切である。あくまでも、依頼者が最も重要な当事者である。
小俣 年穂
ティー・コンサル株式会社
代表取締役
<保有資格>
不動産鑑定士
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
宅地建物取引士
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