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スクエニ221億円の巨額損失……カプコン、コナミと大きな差がついた理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月15日 8時5分

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 スクウェア・エニックスが「コンテンツ廃棄損失」として221億円の特別損失を計上した。

 ゲーム開発における戦略的転換として、同社は開発プロジェクトをより選択的かつ集中的に進めることを目指し、質と投資収益率を重視する方針にシフトするという。この巨額減損の背景には『ファイナルファンタジーXVI』『ファイナルファンタジーVII リバース』など、主要タイトルの売り上げが期待通りではなかったことがあるだろう。

 特にプレイステーション5が消費者へ十分に行き渡っていないうちにリリースした『ファイナルファンタジーXVI』は累計300万本程度の販売にとどまり、人気作をリメークした『ファイナルファンタジーVII リバース』も発売後の売り上げが期待を下回った。

 『ファイナルファンタジーVII リバース』が不振だった原因は、PS5の普及率の問題だけではなさそうだ。同作はサイドクエストやミニゲームのボリュームが過剰で、往年のプレーヤーを中心に「ゲーム体験を損なう」という声もあった。ゲームシステムなどについて、期待されていたほどの革新性や魅力を提供できていないとの意見もあった。

●巨額のコンテンツ廃棄損失は問題か?

 耳慣れない言葉である「コンテンツ廃棄損失」だが、これは投資における「減損損失」の考え方に近い。

 コンテンツ廃棄損失とは、企業が製品開発プロセスで、未完成のプロジェクトや商品を中止する際に発生した損失を指す。開発中のゲーム、ソフトウェア、映画などのコンテンツが商業的にリリースされることなく終了した場合、それにかかった投資や開発費用が回収できず、経済的な損失として計上されるということだ。この損失は、通常は会計上の特別損失として処理される。

 コンテンツ廃棄損失が発生する主な理由としては、市場環境の変化、プロジェクトの予算超過、商業的成功の可能性が低下したことなどが考えられる。特に技術進化が早い業界では、開発中に新しい技術が登場し、現行のプロジェクトが時代遅れになることも珍しくない。

 ただし、このようなコンテンツ廃棄損失は一時的な財務上の打撃となり得るものの、長期的には不採算プロジェクトを整理し、リソースをより有望な取り組みに再配分する効果もある。つまり、中長期的には企業の健全性を改善する施策の一つである。

 このような損失を対外的に公表することで、投資家に対して透明性を保ちつつ、事業の健全化を図る姿勢を示せる側面もある。事業化が難しいコンテンツを、特別損失を恐れてダラダラと開発し、本業の利益を垂れ流すくらいであれば、見切りをつけて再出発できる方が健全という見方もできるわけだ。

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