戦争を始めた世界のエリートは自国民を守らない ミアシャイマー『大国政治の悲劇』が示す国家の自己保存
東洋経済オンライン / 2024年5月19日 8時0分
2024年5月9日、第2次世界大戦勝利を祝う式典が終わった後、ロシアはハルキウ(ハリコフ)への総攻撃を開始した。ウクライナ戦争は、今新しい局面を迎えたともいえる。
これまでの戦場は、ドンバス地域からザポロジエ(ザポリージャ)地域に限定されていた。いわば2014年のミンスク合意をめぐるドンバス、ルガンスク地域の攻防線として展開されていたともいえる。
新局面を迎えたウクライナ戦争
2022年3月末にトルコで合意寸前までいった停戦の前提は、ロシアにとってドンバス地域の独立とウクライナの中立が主たるテーマであった。ウクライナにとってはNATO(北大西洋条約機構)加盟とドンバス地域の維持がテーマであった。
そのころ展開されたキーウ(キエフ)、ハルキウ近辺へのロシアの当初の攻撃は、ドンバスとザポロジエの兵力の集中を避けるための陽動作戦であった。しかし、今回の攻撃はハルキウ占領を視野にいれた攻撃である。
その目的は、ロシアの戦争の目的は、もはやドンバスやザポロジエ地域の維持ではなく、ウクライナ全土をせん滅することに変わったのだともいえる。
今後、キーウやオデーサへのロシア軍の侵攻は避けられないであろう。その目的は、もはやロシア人居住区の保護ではなく、NATOの勢力圏を完全にウクライナの外に押し出すことにある。その意味で、ウクライナ戦争は新しい局面を迎えたのである。
いまやこの戦争は、NATOとロシアとの勢力圏をめぐる直接対決になったということであり、第3次世界大戦の可能性がさらに強まったことを意味する。人類にとっては悲劇というしかない。
ロシアの猛攻に対しもしNATOが本格的に介入すれば、世界大戦は避けられない。そうならないことを祈るが、ウクライナ政権がロシアとの停戦協定に進まない限り、ウクライナでの戦争が終わることはない。これも悲劇だ。
ゼレンスキーは国民を犠牲にしてウクライナ消滅を待つのか、それともNATOを巻き込んで世界大戦へ突き進むのか。世界はこの戦況を不安をもって注目せざるをえない。
国家の自己保存権
ロシアとNATOとの対決は、非西欧と西欧との対決でもある。ではなぜこうした対決が戦争へと至るのか。これまで膨大な学者たちがその解明を行ってきたが、これといった原因究明ができたわけではない。
経済的利益、領土問題、資源問題、支配欲、攻撃性向といった理由をいくらあげても、これといった戦争にいたる決定的原因がつかめたわけではない。
この記事に関連するニュース
-
習国家主席がプーチン大統領と会談、パートナーシップ強化(中国、ロシア、ウクライナ、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月28日 0時15分
-
インタビュー:ウクライナ、同盟国の支援加速・直接関与を働きかけ=ゼレンスキー氏
ロイター / 2024年5月21日 8時12分
-
「ロシアが勝利する。我々も韓国を攻撃できる」金正恩、開戦初期の不気味な予言
デイリーNKジャパン / 2024年5月13日 4時2分
-
武力行使を伴わない外交はロシアに通用しない…プーチンの侵略を止めるために西側諸国がやるべきこと
プレジデントオンライン / 2024年5月5日 10時15分
-
ロシアからのサイバー攻撃非難 NATO「協調し対応」
共同通信 / 2024年5月4日 9時1分
ランキング
-
1〈元ウルトラマン俳優の今〉沖縄でバー経営も失敗、最高106キロに激太り…芸能界を辞めた本当の理由と「生きるためになんでもやる」境地に至った引退後11年の日々
集英社オンライン / 2024年6月1日 12時0分
-
2逮捕の男「やばい、帰らなくちゃ」=タクシー銃撃、公開捜査知り出頭か―埼玉県警
時事通信 / 2024年6月2日 12時23分
-
3日本政府が防衛費を上げる前にやるべき3つのこと 陸自予算の削減、新戦闘機開発の中止、耐震改修…
東洋経済オンライン / 2024年6月2日 8時0分
-
4「相手から暴力を受けた」40代妻が通報 自宅で妻に体当たりなどの暴行 43歳の男「体当たりしたのは事実です」北海道鷹栖町
北海道放送 / 2024年6月2日 11時36分
-
5マイナカードの保管をめぐり口論…ビールジョッキで40代女性の顔面を殴打 まぶたから流血の女性「殴られた」傷害容疑の50歳男「間違いない」
北海道放送 / 2024年6月2日 9時3分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください