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【マツダ CX-60 新型試乗】あえての辛口評価も、ポテンシャルあればこそ…中村孝仁

レスポンス / 2024年5月18日 16時0分

◆実は改良されていた「乗り心地」の課題


2022年にマツダはいわゆる「ラージプラットフォーム群」と称する縦置きエンジン、FR駆動のプラットフォームを開発し、その第1陣として『CX-60』を上梓した。


野心的なFRプラットフォーム故に期待が大きかった半面、初期モデルを試乗した多くのユーザー並びにジャーナリストからは不満の声も漏れた。最大の問題点は乗り心地で、私も初めて試乗したモデルに対し「特にリアからの突き上げ感をやや顕著に感じてしまった。」と書いた。


あれからすでに2年。公式にマツダは何かの変更を加えたというアナウンスはしていないのだが、多くの指摘を受けて実はリアのダンパーをいじっている。小さな変更故にその変更についてはアナウンスをしていないそうだ。


で、その結果どうなったか。確かにリアからの突き上げ感は減少している。確実に効果を上げているということだ。では現状のCX-60の乗り心地に対して諸手を挙げて良くなったと言えるかという話になると、残念ながらそうはいかない。


確かにリアからの突き上げ感は減少しているものの、依然としてこのサイズのクルマとしては乗り味にフラット感が感じられず、路面の状況によってやはり相当に不快な印象が残るケースがある。というわけでどうしても乗り心地に関してはもう一度メーカーに検証をお願いしたいものである。


◆内外装の上質さと疲れ知らずの走り


ネガ要素はあと二つあるのだが、そればかりではCX-60がかわいそうなので良い面にも目を向けよう。


一つは内外装の上質さである。所有するユーザーからすれば、高級車に乗っている満足感は質感に関する限り確実に得られると思う。もう一つは3.3リットルターボディーゼルが織りなす怒涛のトルク感である。パワーこそ231psだから、まあそこそこではあるけれど、最大トルクは500Nmであるから高速道路などでの追い越しは胸のすく加速感と共に実に気持ちが良い。そして乗り心地はともかくとして室内の広さに関しては十分なゆとりがあって、長距離の移動でも正直疲れ知らずである。


今回はゴールデンウィークの休み中ずっとお借りして、およそ750kmほどを走った。ゴールデンウィーク最終日は予想したよりはるかに少なかったものの、かなりの渋滞に嵌まってしまったが、ACCを駆使すれば、それも大した問題ではないほどである。こうした疲れにくさは、良質でフィット感の良いシートと、着座位置が適正で常にステアリングに対して正対した姿勢で運転できるからなのだと思う。


◆8速ATのフィールと6気筒ディーゼルの音


そしてまたネガ要素に戻ってしまうが、渋滞中の極低速での走りである。内製の8速ATは依然としてギクシャク感が消えていない。この点についても以前指摘した通りで、トルクコンバーターではなく機械式クラッチを採用したことでダイレクト感を出したいというエンジニアの気持ちはよくわかるが、使う側の身になると、低速でもっとスムーズになって欲しいというのが本音。エンジニアとしてはシャキシャキ感を出したかったのだと思うけれど、それはもっとスピードが上の領域では確かにそうかもしれないが、低速域では意図した性能が出ていないと思う。


そしてもう一点が6気筒ディーゼルの音問題。デビュー時にエンジニアとお話をさせて頂いた時に、音には拘りがあり音やリズムが人の感性に大きな影響を与えるということで意図して心地よい音を聞かせるチューニングとしている…ということだったのだが、やはりこれもエンジニアの意図と使う側の気持ちに乖離がある気がする。はっきり言えば「うるさい」である。


これなら4気筒ディーゼルでも問題なし。敢えて6気筒にする必要性を正直言ってあまり感じない。確かにパフォーマンスは良いかもしれないが、かけた瞬間からガラガラディーゼル特有のサウンドが出てしまい、全然心地良い音ではない。それにエンジンの透過音がダイレクトに室内に侵入する点もいかがなものかと思った。


◆ポテンシャルは間違いなくある!


厳しいことを言うようだが、このクルマのポテンシャルは間違いなくあると期待するからこそ、良くして欲しいという思いが前面に出てしまうので、メーカーも戯言とは思わすに真摯に受け止めて欲しいものである。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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