居酒屋の喫煙所で火事が発生した場合、賠償金を請求されることはある?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月25日 9時10分
近年、居酒屋では禁煙店舗が増加したり、徹底した分煙が進んだりしているため、愛煙家の方にとっては居心地が悪くなっています。お酒を嗜(たしな)むとついついタバコも進んでしまうという方もいるでしょうが、お酒の席ではタバコの火の始末に注意が必要です。 今回は「もしも居酒屋の喫煙所で火事が発生したら」というケースを想定し、考えられる事態を紹介します。
根拠となるのは「失火責任法」
喫煙所で起こった火災の責任問題については「失火責任法」と「民法第七百九条」が関連しています。失火責任法では「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」といった文言が記載されています。
該当する民法第七百九条には、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」という旨が記載されています。
重過失とは?
失火責任法で見られる重過失は、明らかにその事態に対して顕著な責任が見られることを指しています。そのため、居酒屋での火災が「喫煙者が明らかに悪い」と判断された場合は責任問題に発展する可能性があります。
客側に重大な過失があると認められた場合は責任を追う必要も
喫煙所での火災は、一見お店側が責任を負う必要があると考えられます。しかし、火事の発端が客側にある場合は、多額の賠償責任が発生する可能性もあるでしょう。
もしも自分の過失で1000万円の賠償金が発生したら?
タバコの火の不始末で、仮に自分に1000万円の賠償責任が発生したことを考えてみましょう。生活は一変し、以下のような事態が考えられます。
●支払いが困難になり債務整理が発生する
●家や車、資産を失う
●周囲との関係性が悪化する
●仕事や家族を失う
賠償金が発生するほどの火災では、メディアで報じられ身元が特定される可能性もあるでしょう。そのため、賠償金を支払うだけでなく、人生そのものに支障が生じる可能性もあります。
周囲との関係性が悪化すると、家族と離れることになったり仕事を失ったりして、生活に困窮する未来も想像できます。このように、火災は人生を一変させてしまう恐れがあるため、タバコを吸う際は火の後始末に注意が必要です。
空気が乾燥する時期は特にたばこの扱いは慎重に
東京消防庁が過去に発表した資料によると、タバコの火災月別状況は表1のとおりです。
表1
発生月 | 件数(件) |
---|---|
1月 | 863 |
2月 | 704 |
3月 | 807 |
4月 | 735 |
5月 | 665 |
6月 | 417 |
7月 | 552 |
8月 | 544 |
9月 | 476 |
10月 | 506 |
11月 | 561 |
12月 | 695 |
※東京消防庁「たばこ火災に注意して!!」を基に筆者作成
1月から4月、そして10月から12月において火災の発生件数が多い傾向が見られます。居酒屋では、春の歓送迎会や、年末の忘年会などで盛り上がるタイミングで注意が必要でしょう。
みんなで気をつけたい!喫煙所で火災を防ぐポイント
次に、喫煙所でのタバコ火災を防ぐ方法を紹介します。店舗側も来店客側もタバコの扱いには十分注意して、店内の環境維持に努めましょう。具体的な対策は、以下の通りです。
火のついたタバコを持ち歩き回らない
喫煙者は、火のついたタバコを持って喫煙所以外の場所へ移動しないようにしましょう。特に人の往来がある場所では火災だけでなく、やけどの可能性もあります。
携帯灰皿を持参する
喫煙所には灰皿が置かれています。しかし、携帯灰皿を持参するとより安心できるでしょう。歓送迎会や忘年会シーズンの居酒屋は賑(にぎ)わっており、喫煙所の手入れまで行き届いていない可能性もあります。山積みになったタバコは火災のリスクを高めるため、自分で片付ける意識も欠かせません。
灰皿の吸い殻をこまめに片付ける
店舗側での取り組みには、喫煙所の清掃が挙げられます。吸い殻をこまめに片付けて、火事が起こらないよう見回る機会を増やしましょう。時間を決めて管理すると漏れを防ぎやすいです。
タバコはマナーを守って
愛煙家の方にとって、お酒の席でタバコは欠かせない存在でしょう。もし居酒屋の喫煙所で火災が発生した場合、客側に明らかに重大な過失があると認められれば、賠償金を請求される可能性もあるでしょう。酔いがまわった状態だと、普段よりも注意力が散漫になるため、火の扱いには十分注意しましょう。
出典
東京消防庁
たばこ火災に注意して!!
e-Gov法令検索 明治三十二年法律第四十号(失火ノ責任ニ関スル法律)
e-Gov法令検索 明治二十九年法律第八十九号 民法 第七百九条
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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