「近眼だから老眼にはならないはず」は都市伝説【一生見える目をつくる】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月2日 9時26分
【一生見える目をつくる】#11
この連載のタイトル「一生見える目をつくる」には、視力矯正技術の進歩を多くの方々に知っていただきたいという私の思いがこもっています。決して大げさではなく、いまや目の見え方は「つくる」ことができる時代となりました。
たとえば老眼。人はみな老眼になります。それは決して避けられないもの。ひと昔前までは「老眼鏡をつくりましょう」とほとんどの眼科医が患者さんに勧めたものです。実際、当時はそれ以外に方法はありませんでした。
でも今は違います。私は視力回復を専門とする眼科医ですが、ここ数年は「いかに老眼を治すか」というテーマを自分の中に掲げています。老眼や近視を治し、ひとりでも多くの患者さんに「眼鏡のない快適な生活」のすばらしさを知ってほしい。「一生見える目をつくる」ことは大げさではなく、実現可能な世界なのです。
長きにわたって老眼鏡以外に矯正方法がなかった老眼に対しても、技術の進歩でさまざまな矯正方法が出てきました。老眼治療の最前線を話す前に、私がよく耳にする“あるある話”をひとつ。それは「私、近眼だから老眼にはならないはず」というもの。これ、はっきりいって都市伝説です。
近視の人でも、45歳ごろから目の水晶体の弾力性がなくなり硬くなっていきます。眼鏡をかけた状態では近いところが見えず、気が付けば、眼鏡を外して見るようになっている。これが老眼なんですね。
進行すると一番近くでピントが合う「近点」までの距離が、目からだんだんと離れて遠くなっていきます。「眼鏡を外せば近いところが見えるから、まだ老眼じゃないんだ」と主張する人もいますが、老眼にあらがい無理して小さな文字を見続けていると、目が疲れて眼精疲労につながってしまう。「まだ老眼じゃないはず」という思い込みは捨てること。45歳以上の年齢であれば近視であろうとも老眼になることを受け入れるようにしましょう。スマホ、以前より離して見てはいませんか?
さて老眼治療のお話ですが、昨今では老眼鏡のほかにどんな治療があるのか。
ひとつは遠近両用のコンタクトレンズ。使っている方も多いでしょう。ですが、老眼鏡とコンタクトレンズのほかに、視力矯正が専門の眼科医の間では「手術によって老眼を治す」ことが普通の治療として広まっています。
その手術のひとつは「レーシック」の技術を使って老眼を治療するもの。また、もうひとつ、白内障治療で使う人工水晶体の「眼内レンズ」を目の中に入れて老眼を矯正するという治療方法があります。調節力が弱まった水晶体の代わりに、多焦点眼内レンズを目に挿入する手術です。これによって遠くも近くも眼鏡なしで見えるように。次回はこの治療方法について詳しくお話しします。
(荒井宏幸/クイーンズ・アイ・クリニック院長)
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