エッチなイラストを見てから座禅体験...だと? 京都のお寺が実施する「煩悩展」が斬新すぎる
Jタウンネット / 2024年3月28日 11時1分
「お腹いっぱい美味しい物が食べたい」とか、「お金持ちになりたい」とか、どんな人間にも「煩悩」というものがある。
2024年3月30日、京都市内の寺・妙心寺長慶院で開催されるのは、そんな煩悩に斜め上の角度から向き合おうというイベントだ。
その名もズバリ、「煩悩展」。
煩悩とのつき合い方を考えるために、イラストレーターのけそシロウ(@kesokeso_keso)さんが描いた"煩悩をくすぐるアート"が展示されている会場で、座禅や精進料理体験のワークショップを実施。人の在り様を見つめ、煩悩との付き合い方を探っていくという。
"煩悩をくすぐるアート"とはつまり......ちょっとエッチなイラスト。あえてそういった物を見ながら座禅をするというのは、なかなか斬新な切り口のイベントだ。
一体どういう経緯で開催に至ったのか。そして、イベントを通じて参加者に何を伝えたいのか。Jタウンネット記者は17日、長慶院住職の小坂興道さんに話を聞いた。
人間の根本的欲求と向き合う
小坂さんによると、ことの発端は3年前。神社仏閣と企業とのコラボ事業の運営などを手掛ける「神社仏閣オンライン」(京都府京都市)からの持ち込み企画で、Vライバー(※)ファン向けに寺を舞台にした宗教体験を交えた京都観光ツアーを実施したことがきっかけになった。
「その際、ふだんは宗教やお寺に関心のない人たちでも、好きな少女絵や推しの絵師さんという切り口があれば、宗教体験をハードルなく参加してくれるということを感じました。
また、参加した後の声としても好評で、宗教体験そのものの持つコンテンツとしての魅力を再確認しました」(小坂さん)
この経験から、宗教とは縁が薄かった層に届く企画をまたやってみたいという思いが生まれ、「煩悩展」に繋がったという。
(※)バーチャルキャラクターを用いて顔出しせずにライブ配信活動をする配信者
「煩悩」をテーマに選んだのは、宗教者としての務めの1つである悩み相談の中で、「我々が苦しむのはなぜか」「そもそもどのような仕組みで苦しみが生まれるか」を一緒に考えることが多かったから。
「苦しい思いをしている時に、ふだん意識していなかったことに目を向けたり、悩みとの共存を意識したりするようになれば、苦しみを乗り越えたりやり過ごしたりすることの一助になると考えました」(小坂さん)
「煩悩展」ではこの考え方を中心に据え、「性」「食」「眠」といった人間の根本的欲求にまつわって起きる煩悩と向き合うことで、それらとの付き合い方を知ることを目的としているという。
「節せず恣にせず(せっせずほしいままにせず)」
では、イベントではどのように煩悩と向き合っていくのか? 記者の質問に、小坂さんは3つの観点から当日の大まかな流れを説明してくれた。
まず1つ目は「性」。
まず、けそシロウさんの絵を起点に、自分たちの性的欲求を何が刺激し、それに対して自分たちがどう反応するか、考察する。
「欲求が煩悩へと変わるその境い目を考えることで、煩悩の正体や生じる仕組みについて知るのです」(小坂さん)
その後、座禅体験を通じて、今度はその煩悩を手放していく感覚を養う。
座禅中には様々な思いが湧き上がってくる。それらを肯定も否定もせず、縛られることもないように、「横に置いておく」ことを練習する。それが「(煩悩を)手放す」という感覚につながっていくという。
2つ目の煩悩は「食」。
精進料理を食べて、「命をいただく」ということについて、あらためて考える。それにより、食にまつわる煩悩とのつきあい方を思索していく。
「大事なことは『節せず恣にせず(せっせずほしいままにせず)』です」(小坂さん)
「食べること」に罪悪感を持つこともなく、同時に命に丁寧に向き合うことの大切さを知ることが目的だという。
3つ目の「眠」では、睡眠にまつわる悩みと向き合っていく。
「快適な睡眠は結構難しいものです。現代人の在り様とすれば、寝すぎて困るというよりは眠れなくて困るというものの方が多いのではないでしょうか」(小坂さん)
そこで、座ってではなく、寝た状態になって、座禅と同じ要領で「寝たい」「寝られない」「寝なきゃならない」などの睡眠にまつわる様々な思いをそのまま大事にしながら、それらを少しずつ手放していく。そうすることで、参加者に心身の休まる感覚を知ってもらうという。
人間が生きていく以上は煩悩や欲求が絶えることはない。それらを「断ってしまおう」「消滅させねば」と思うと、それ自体が苦しみになってしまう、と小坂さん。
「(参加者には)我が身に生じる煩悩、それをそのままに大事にしながら振り回されることもないというところ、すなわち『手放す』というところを経験してもらえればと思います」(小坂さん)
自らの内なる煩悩に悩んでいるという読者の皆さんは、このイベントをきっかけに自分の欲求と向き合ってみるのも良いかもしれない。
座禅体験は1回1時間を予定。精進料理体験は完全予約制(予約期間は28日12時まで、1人2500円)。
詳細は白糸取材公式サイトへ。
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