ラジオやヒーターすら無いクルマがあった!? 走るためだけに誕生したクルマ5選
くるまのニュース / 2019年7月28日 6時30分
いまのクルマは快適装備が付いていることが当たり前で、装備していないクルマの方が圧倒的に少数派です。ところが、走ることのみにこだわったクルマが存在します。そこで、走ることにストイックなほどこだわったクルマ5車種を紹介します。
■走るためには快適装備なんて必要なし!
クルマの進化のひとつには、快適なドライブを実現する装備があります。いまでは軽自動車でも標準でエアコンやパワーステアリングが装備されるのは常識です。
ところが、まるでレーシングカーのように走ることに特化して、こうした快適装備をあえて付けないクルマもあります。
そこで、これまで販売されたクルマのなかから、走ることにストイックなほどこだわった5車種を紹介します。
●日産「フェアレディZ432R」
現存数はわずか数台といわれる日産「フェアレディZ432R」
1969年に発売された初代日産「フェアレディZ」には、「スカイラインGT-R」と同じエンジンを搭載した高性能版の「フェアレディZ432」がありました。
フェアレディZ432は160馬力を発揮する2リッター直列6気筒DOHC24バルブのS20型を搭載。「432」というネーミングは「4バルブ・3キャブレター・2カムシャフト」に由来しています。
このフェアレディZ432には、さらなる軽量化を施した競技専用のベース車「フェアレディZ432R」がありました。
フェアレディZ432Rはフロントウインドウ以外の窓をすべてガラスからアクリルに変え、内装ではラジオ、ヒーターはおろか、時計も省略されています。
始動するための鍵はシフトレバーの後方にあるため、ハンドルロックも付いていません。当然、下回りのアンダーコートもなく、音や熱は容赦なく室内に侵入してきます。
FRP製のボンネットの下にあるエンジンにはエアクリーナーボックスが無いため、キャブレターのファンネルもむき出しの状態です。
こうした手法によってベース車両に対して100kg以上も軽量化されています。
なお、本来フェアレディZ432Rは一般には販売されないはずでしたが、数十台が流通し、現存数は10台にも満たないといわれています。
●ルノー「スポールスピダー」
公道走行が可能なレーシングカーのルノー「スポールスピダー」
1990年代のなか頃は、F1においてルノー製エンジンがホンダに変わって常勝となっていました。このイメージを市販車にも取り込むため、ルノーは「スポールスピダー」を1996年に発売します。
スポールスピダーには屋根がなく、簡易的な幌もありませんでした。当初はフロントウインドウも無い状態で、後にフロントウインドウが装備された仕様が追加となります。
もともと、ワンメイクレース用車両だったモデルを公道でも走行できるようにしただけなので、ヒーターやパワーステアリングなど、なにも付けられておらず、普段使いはまったく考慮されていませんでした。
シャシはアルミの角パイプが組み合わされたスペースフレームで、外板はFRP製。エンジンは2リッター直列4気筒を、リアミッドシップへ横置きに搭載していました。
製造はルノーのレース部門である「ルノースポール」が担当し、日本にも100台ほどが正規輸入されましたので、いまも中古車として流通しています。
●アバルト「695 ビポスト」
外観から想像できないほどホットなモデルだったアバルト「695ビポスト」
1950年代から1960年代に、フィアットのクルマを高度にチューニングして、レースに出場し活躍することで名を馳せたアバルトは、市販車のチューニングも手がけるようになりました。
後にフィアットグループの傘下になると、いまでは同社のスポーツカーブランドとなっています。
アバルトが手がけたクルマでもっとも有名なのが、大衆車のフィアット「500」をベースとしたモデルで、復刻した500でもアバルトモデルがラインナップしています。
なかでも2015年に販売されたアバルト「695ビポスト」は、過激なチューニングが施されたことで話題となりました。
695ビポストは500をベースに2シーターとし、サイドウインドウをプラスチックの固定式に変更。エンジンは1.4リッター直列4気筒ターボで、最高出力190馬力と2リッタークラスに迫るパワーでした。
695ビポストには2種類の仕様が用意され、標準仕様とフルスペック仕様となっており、フルスペック仕様ではサーキット走行用に開発されたレース用トランスミッションである「ドグリングトランスミッション」を、公道仕様車として世界で初めて採用していました。
ほかにも、アルミ製ボンネットやチタン製ホイールボルトなどの採用と、エアコンレスとすることで軽量化をおこなっています。
ちなみにフルスペック仕様の日本での価格は845万6400円(消費税込、以下同様)、標準仕様は599万4000円でした。
■方向性がまったく異なる2台のストイックなクルマ
●三菱「ジープ」
自衛隊車両に採用されるなど悪路走破性と信頼性が極めて高かった三菱「ジープ」
三菱「ジープ」というと、これまで紹介したクルマとは対極に位置するモデルですが、しっかりと共通するところがあります。ジープは速く走ることではなく、悪路の走行性能をストイックなまでに追求したクルマということです。
三菱「ジープ」は本格的な4輪駆動車の原点ともいえ、1952年に三菱自動車の前身である「新三菱重工業」とアメリカの「ウイリス・オーバーランド社」との間で締結された契約のもと、ノックダウン方式により翌1953年には第1号車が完成しました。
1956年からは国産ジープを本格的に生産し、以来約半世紀に渡って根強いファンに応え、20万台を超える台数が生産されました。
シンプルなメカニズムのパートタイム4WDシステム(切替式)と長いサスペンションストロークによって、悪路走破性の高さはもちろんのこと、トラックと同じフレーム構造に前後リーフスプリング(板バネ)の採用は、丈夫で高い耐久性を誇ります。
また、装備は当初から一貫してシンプルで、快適装備というとヒーターとラジオくらいです。決して軽いクルマではありませんがパワーステアリングが無いため、カタチに惹かれて買ってみたものの普段使いには辛く、すぐに売ってしまうユーザーも多かったといいます。
1998年に専用ボディカラー、専用幌生地、防錆強などを採用した「最終生産記念車」が発売され、三菱ジープは長い歴史に幕を引きました。
●ケータハム「セブン」
フォーミュラーカーに近い乗り味と評されるケータハム「セブン」
イギリスを代表するレーシングカーおよびスポーツカーメーカーといえばロータスです。
ロータスを創業したコーリン・チャップマンは天才技術者で、もともとは裏庭でクルマをチューニングしてレースに出るという「バックヤードビルダー」から会社を興し、F1に参戦するまでの成功を収めます。
レースに出る傍らで、市販車(キットカー)の製造もおこなっていたロータスは、のちに傑作といわれた「セブン」を1957年に発表します。
セブンは古典的なロングノーズ・ショートデッキのスポーツカーで、ドライバーは後輪軸付近に座るレイアウトになっていました。
このセブンは大ヒットを記録して1973年の「シリーズ4」まで生産が続きます。そしてセブンの製造権と販売権を引き継いだケータハムによって作られた「シリーズ3」セブンの進化系が、いまのケータハム「セブン」になります。
ロータスのころからエンジンや足回りは進化していますが、装備自体はほとんど変わらず、ヒーターは基本的にオプション扱いであったり、かつてラインナップしていた廉価グレードでは、フロントウインドウもありませんでした。
セブンはドライバーをサポートする電子装備もなく、ドライバーの技量に委ねられているピュアスポーツとして、世界中で人気を維持しています。
※ ※ ※
日々進化する安全装備や、低燃費化技術によって、クルマは人にも環境にも優しくなっています。
今回紹介したようなストイックなクルマは、いまの環境での実現はなかなか難しいですが、新時代のスポーツカーとして、安全面を担保しつつ軽量かつパワフルなモデルが出ることに期待したいところです。
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