早大、網膜の複数箇所の電位を測定可能なコンタクトレンズ用技術を開発
マイナビニュース / 2024年5月9日 17時57分
そして、最終的なターゲットである多点電極によるERG計測において、マイクロメッシュ電極から計測につなげるリード電極の絶縁をどのようにするのかという課題が浮上した。そうした中で、メッシュ電極の導電性高分子のみの導電性を維持する方法として発見されたのが、電極全体の両端に直流電流を印加することで、リード線に流れる電流と金マイクロメッシュ上に新たに流れる電流値を電極構造で制御できるということだった。
その確認のため、計算機シミュレーションが行われ、電流密度として約70倍以上の電流値の差があることが確かめられ、実験的にリード線上の導電性高分子のみが過酸化されること、同時に、フーリエ変換赤外線分光法による分子振動解析で導電性高分子の構造変化が確かめられたとした。さらに、通電試験が実施されたところ、マイクロメッシュ電極を介してのみ電圧が計測されることも確認されたという。
最後に、開発された複合化マイクロメッシュ電極の生物学的安全性と動物試験によるERG計測電極としての性能評価が実施された。ヒト由来の角膜上皮細胞を用いて、各マイクロメッシュ電極(Au、Au/PEDOT、Zn)上での細胞生存率が求められた。その結果、AuとAu/PEDOT電極上は90%以上の高い生存率を保ち、電気メッキで作製されたAu/PEDOT複合電極は十分な安全性を有しているといえるとした。
さらに、今回の複合マイクロメッシュ電極をアレイ化(7電極)した多電極レンズが試作され、家兎の眼に装着させた結果、各電極からERGが計測できることが確認されたとする。今回の研究で開発されたメッシュ電極から取得された網膜電位信号は、市販のERG電極と同等の性能を有していることも確認済みとした。
研究チームは今後、事業化に向け、今回の計測レンズを用いて臨床試験に取り組む予定だという。また、今回のプロジェクトに興味のある企業からの問い合わせを待っているとしている。
(波留久泉)
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