新潟新発田市の女性殺害事件、喜納尚吾被告に控訴審も無期懲役判決・東京高裁
新潟日報 / 2024年5月17日 15時25分
2014年に新潟県新発田市の会社員女性=当時(20)=が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた無職喜納(きな)尚吾被告(41)の控訴審判決があり、東京高裁は5月17日、無期懲役とした一審の新潟地裁判決を支持し、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。齊藤啓昭裁判長は一審で認められた事件性と犯人性を採用した上で、量刑については「無期懲役が軽すぎて不当であるとは言えない」とした。
* [丸刈り姿、再び無期懲役判決にうなだれる被告](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/407323) * [遺族コメント「極刑が相応という気持ちは変わらない」](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/407269) * [死刑回避、専門家の見方は?](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/407362) * [検察側は量刑不服で死刑主張、弁護側は事件性否定し無罪訴え…5月17日に新発田女性殺害事件の控訴審判決 一審判決は無期懲役、別事件の影響は?](https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/405533)
判決によると、14年1月15日、新発田市内で女性の車に乗り込み、車ごと女性を連れ去り、わいせつな行為をしてけがを負わせ、殺害した。
控訴審では一審に引き続き、事件性、犯人性、量刑が争点となった。
弁護側が事故死の可能性があるなどとして無罪を主張した事件性については、殺人、強制わいせつ致傷、わいせつ目的略取・誘拐のいずれの罪も、一審判決が依拠した各医師の所見や状況証拠を支持し「事件性を肯定した原判決の判断が不合理とはいえない」とした。犯人性も、住民証言や被害者女性の車から採取したDNA型鑑定に照らした一審判決の認定を採用した。
量刑判断を巡っては、被告が別の女性4人を襲って強姦(ごうかん)致死罪が確定した事件を、犯行に至る経緯として考慮することは許され、結果の重大性などから被害者が1人であっても死刑が検討されるべき事案だとした。
一方、被告が犯行に至った経緯や殺人の動機は明らかになっておらず、計画性があったとも認められないなどと指摘。齊藤裁判長は「死刑が究極の刑罰であり、適用は慎重に行わなければならない」と述べ、同種事案の量刑傾向の多くが無期懲役であるとした一審の判断を支持、検察側の死刑求刑を退けた。
閉廷後、喜納被告の弁護人は「納得のいく内容ではない。上告は検討しているが、本人と相談して決めたい」と述べた。
喜納被告は13年8〜12月にも新発田市で別の女性4人を相次いで襲い、そのうち1人を死亡させた強姦致死罪などで18年に無期懲役が確定。服役中だった20年2月に、会社員女性に対する殺人容疑などで逮捕された。
◆【判決要旨】
新発田市の会社員女性殺害事件で、喜納尚吾被告を無期懲役とした一審判決を支持し、検察側、被告側双方の控訴を棄却した5月17日の東京高裁判決の要旨は次の通り。
【事件性】各医師の見解から、女性の死因は溺死または鼻や口の閉塞(へいそく)、頸部(けいぶ)圧迫による窒息死と認められる。事件性がないのに、女性が通勤経路を外れた車両発見現場付近の竹やぶに入り込むことは考えがたい。事故死の可能性についても、高さ3メートルの土手から小川に転落したとうかがわせる外傷がなく想定しがたい。女性を溺死または窒息死させた犯人は3〜5分程度、呼吸に障害を与え続け、殺意は明らかだ。事件性を肯定した一審の判断に誤りはない。
【DNA型鑑定】女性の車のハンドル付着物のDNAは、被告と女性のDNAが混合したものである可能性が相当に高い。鑑定作業に特段の問題点は認められず、被告がハンドルに触れたことがあると推認できるとした一審の判断に不合理な点はない。
【犯人性】遺体発見現場近くの住民の証言は信用でき、被告が事件当日に現場から1キロ前後離れた所にいたと認められる。本件以前に被告と女性に接点があったとうかがわせる事情はなく、被告が女性の車のハンドルに触れる機会は当日以外には考えられない。犯人性を肯定した一審判決に事実の誤認はない。
【量刑】本事件の半年前からわいせつ略取・強姦致死などを繰り返し、本事件でも全く落ち度のない被害者を殺害した被告の犯情は甚だ悪く、被害者が1人であっても死刑の選択が検討されるべき事案ではある。しかし、犯行の動機や経緯は明らかでなく、計画性があったとも認められない。本事件と軽重の差を付けられないような事例のほとんどが無期懲役に処されていると一審が評価したことも不合理とはいえず、死刑が真にやむを得ないとまではいえない。
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