[社説]衆院補選で自民全敗 突き付けた怒りと不信
沖縄タイムス+プラス / 2024年4月30日 5時0分
自民党政権に対する国民の不信感の表れだ。岸田文雄首相は、政権に突き付けられた審判を重く受け止めるべきである。
派閥パーティーを巡る裏金事件発覚後、初の国政選挙となった衆院3補欠選挙で、自民党が全敗した。東京15区、長崎3区で候補者を擁立できず不戦敗に追い込まれ、与野党の一騎打ちとなった島根1区での勝利に懸けたが、大差で敗退。三つで元々持っていた議席を全て手放す結果となった。
島根は、1996年の小選挙区制導入以降、自民が全選挙区を独占してきた「保守王国」だ。期間中、首相は2度も足を運び、応援演説では政治の信頼回復に向け「先頭になって取り組む」と強調したが有権者には響かなかった。
自民全敗の背景には、有権者の怒りと政治不信がある。
最大の争点は「政治とカネ」だった。島根は巨額の裏金還流が明るみに出た安倍派の前身派閥で会長を務めた細田博之前衆院議長の死去に伴う選挙。東京は公選法違反事件を巡る議員の辞職、長崎も裏金事件を巡る議員の辞職を受けて実施された。
だが今も裏金事件の真相究明は進んでいない。関与した議員に対する処分は甘く、再発防止に向けた政治資金規正法改正の自民独自案も「抜け道」が残る、生ぬるいものだった。
国民の信頼回復に向けた徹底的な改革には程遠く、熱意も覚悟も伝わってこない。これで、有権者が納得して票を投じると思っていたのだろうか。
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補選を前に岸田首相は「私の政治姿勢も評価の対象に入っている」と語ったが、国民の怒りは明白に示された。「政治とカネ」の問題を洗い出し、真剣に向き合わなければ、有権者は離れる一方だ。
政治資金規正法改正について、岸田首相は6月で会期末を迎える今国会での成立を目指すとしている。
だが自民が示した独自案は企業・団体献金の禁止に触れず、政策活動費の扱いも透明性に疑問が残る。連座制導入も含め、厳格に対処する姿勢を打ち出すべきだ。
首相肝いりの「異次元の少子化対策」についても、論戦が続いている。財源確保のため公的医療保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金」を創設するというが、なぜ医療保険料と少子化対策が結び付くのか、納得のいく説明はない。
抑止論を強調し防衛費を大幅に増額する一方で、物価高は暮らしを直撃。実質賃金は23カ月連続のマイナスだ。
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今補選では立憲民主党が3戦全勝し、次期衆院選へと弾みを付けた。一方で国民の政権に対する不信感が結果に影響したことも否めない。「自民に入れるよりは」と、消去法で投票した有権者もいただろう。
次期衆院選に向けて、野党は候補者調整に力を注ぎ、自公との全面対決を前提に候補者の一本化を図る必要がある。しかし、野党共闘の足並みは乱れている。批判票の受け皿となる態勢構築を急ぐべきだ。
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