「成果を出せない上司」は発酵を学ぶといい理由 答えのない不確実な時代のチームマネジメント
東洋経済オンライン / 2024年4月29日 11時0分
醤油、みりん、酒、味噌、酢など、日本で発酵食品が多く使われているように、世界各国にも発酵食品は多くあります。例えば、フランス料理にはワインが欠かせませんし、ドレッシングにはバルサミコ酢が入っています。また、付け合わせのパン自体も発酵食品です。中華では豆板醤、甜麺醤、XO醤などの調味料の他、紹興酒や白酒などのお酒、ザーサイ、また、エスニック料理ではニョクマムやナンプラーなどが発酵食品です。
今世界で注目されている発酵の、日本と世界の考え方の違いなど、食品としての面以外について、室町時代から600年続く種麹メーカーの第29代当主であり『ビジネスエリートが知っている 教養としての発酵』の著者である村井裕一郎氏が解説します。
日本の発酵と西洋の発酵
味噌、醤油、清酒など、多くの日本の発酵食品は、麹菌、酵母、乳酸菌の3種類の微生物の相互作用によって行われます(この仕組みを専門用語で並行複発酵といいます)。そして、醸造家は、複数の微生物が働きやすい環境を整えていくところに特色があります。
それに対して、ワイン、ビール、パン、ヨーグルト、バター、チーズなど、多くの西洋の発酵は、酵母、あるいは乳酸菌などの単一の微生物による発酵です(これを単発酵、あるいは単行複発酵といいます)。そのため、酵母や乳酸菌という単一の微生物をどうコントロールするかという点に焦点があり、微生物間の関係性という概念は強くありません。
これを、少し概念的な観点からも見てみましょう。
リチャード・E・ニスベット『木を見る西洋人 森を見る東洋人』(ダイヤモンド社)の訳者・村本由紀子さんの要約によると、「東洋人のものの見方や考え方は『包括的』であり、西洋人のそれは『分析的』である」としています。
そして、「包括的思考とは、人や物といった対象を認識し理解するに際して、その対象を取り巻く『場』全体に注意を払い、対象と様々な場の要素との関係を重視する考え方」とし、「分析的思考とは、何よりも対象そのものの属性に注意を向け、カテゴリーに分類することによって、対象を理解しようとする考え方」としています。
つまり、書籍のタイトルの通り、東洋人は「森全体を見渡す」思考、西洋人は「大木を見つめる」思考の様式を持っているということです。
この思考は、「発酵」にもつながっています。先ほど、日本の発酵は複数の微生物の相互作用と説明しました。具体的には、麹菌が酵素を生産し、その酵素で原料が分解され、分解された原料を乳酸菌が食べることで乳酸菌が産出され、産出された乳酸によって酵母が活躍できる環境が整い、酵母の活動によってアルコールや香りの成分が産出されます。
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