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モノ言う株主・丸木氏が語る「日本企業の経営問題」 見過ごされる「ガバナンスウォッシュ」とは

東洋経済オンライン / 2024年5月7日 20時0分

株を保有していなくても、製品やサービスの質が良ければ取引してもらえるはずですし、将来の協業をめざして業務提携もできるはずです。

だとすれば、なぜ株を持ち合うのか。安定株主として常に経営者の味方をすることを条件に取引させてもらっているという理由以外、まったく思いつかないのです。

だから我々は、投資先企業が政策保有株を持っている場合には、「すべて売却してください」と提案するのが常です。しかし、そう簡単には売れないというのが最初の反応です。やはり先方との関係が崩れ、円滑な取引ができなくなることを懸念されているようです。

これは現実にあった話ですが、政策保有株式の売却を要請した際、投資先企業の代表取締役から、「売却すると、株式発行企業との取引が縮小して売り上げが減りますよ。株主としてそれでよいのですか」と言われたことがあります。

そのとき、私はこう返しました。

「筆頭株主を脅すのですか。かまいません。株式を保有しているから取引できるというのは不健全だし、株式を持たないと取引しないなどという取引先はコンプライアンス上問題があるのだから、取引しないほうがよいです。

政策保有株式を売却するという正しいことをして売り上げが減るなら仕方がない。それより、当社が株式を保有しているからとの理由ではなく、他社より優れた製品やサービスを提供できるとの理由で、顧客から選ばれるように努力してもらいたい」

大手損保のカルテルの背景にあるもの

2023年末には、大手損害保険会社4社が企業向け保険契約時にカルテルを結んだ疑いがあるとして、公正取引委員会による立入検査を受けるという事案がありました。実はこの背景にあるのも、政策保有株だったようです。

顧客企業は、契約する損保会社を選定する際、保険料などの条件よりも、その損保会社が自社の政策保有株をどれだけ多く持っているか、もしくは自社の営業にどれだけ協力してくれたか等で決める傾向があったとのこと。

そこで損保各社としては、正規の営業努力で競争するのではなく、条件を調整して顧客企業を割り振っていたらしい。

顧客企業にとっては、政策保有株を損保会社に持ってもらうことで、取引上有利どころか割高な契約を結ばされていた可能性もあるわけです。

この件に関し、金融庁は2023年12月に大手損保会社に対して業務改善命令を出し、そのなかで政策保有株の削減計画と見直し案の報告を求めることとなりました。当然の措置だと思います。その後2024年2月には、各社とも政策保有株を段階的にゼロにする方針と報じられました。

丸木 強:株式会社ストラテジックキャピタル代表取締役

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