物価目標実現に現実味、緩和修正の具体策を議論=1月日銀会合要旨
ロイター / 2024年3月25日 11時54分
日銀が1月22―23日に開催した金融政策決定会合では、物価目標の達成が現実味を帯びる中、大規模緩和の修正をどのように進めていくか、政策ツールごとに議論が展開されていたことが明らかになった。写真は、2024年3月19日に日銀本店で会見する植田和男総裁。(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Takahiko Wada
[東京 25日 ロイター] - 日銀が1月22―23日に開催した金融政策決定会合では、物価目標の達成が現実味を帯びる中、大規模緩和の修正をどのように進めていくか、政策ツールごとに議論が展開されていたことが明らかになった。日銀が25日、同会合の議事要旨を公表した。
日銀は1月の決定会合で金融政策の現状維持を全員一致で決めた。続く3月18―19日の決定会合ではマイナス金利解除を含む政策修正を賛成多数で決定した。
1月会合では、複数の委員が物価目標の実現を「見通せる状況は近づいている」と指摘した。このうち1人の委員は、1月1日に発生した能登半島地震について、1―2カ月程度は事態の進展をフォローし「仮にマクロ経済に与える影響が大きくないことが確認できたなら、金融政策の正常化に向けた検討が可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い」と述べた。
その上で、経済・物価情勢に応じて、ゆっくりと正常化の道のりを進めていくためには「その第一歩であるマイナス金利の解除に、適切なタイミングで踏み切る必要がある」と発言。判断が遅れれば2%目標の実現を損なうリスクや急激な金融引き締めが必要となるリスクがあると指摘した。
ある委員は「現在は金融政策変更の千載一遇の状況にある」と語った。
委員は、物価目標の実現が現実味を帯びてきていることも踏まえると、政策変更の際の留意点やその後の政策運営について基本的な考え方を整理しておくことが重要との見解で一致した。
<マイナス金利解除でも「緩和的な金融環境は維持」>
多くの委員は「現時点での経済・物価見通しを前提とすると、先行きマイナス金利の解除等を実施したとしても、緩和的な金融環境は維持される可能性が高い」との認識を示した。
マイナス金利の解除後について、ある委員は、マイナス金利導入前の状態に戻すとすれば、当座預金への付利金利をプラス0.1%とし、無担保コールレートはゼロープラス0.1%の範囲での推移を促すことになると指摘した。
1人の委員は、自然利子率や予想物価上昇率を巡る不確実性を踏まえると「最終的な金利水準の到達点やそれに至るまでの金利パスについてあらかじめ見極めることは難しい」と指摘、その時々の経済・物価・金融情勢に応じて考えていかざるを得ないとの見方を示した。何人かの委員は、日本の経済・物価情勢は数年前に米欧が利上げ開始時点で直面していた環境とは大きく異なっているとして「米欧のような急速な金融引き締めが求められているわけではない」と述べた。
イールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みについては、何人かの委員が撤廃するにせよ何らかの形で維持するにせよ、「国債買い入れは継続していくことになる」と述べた。このうちの1人の委員は、YCCとその後の国債買い入れの運営は連続的なものだと指摘した上で、「変更の前後で不連続な形で金利が急激に上昇したりすることがないよう、コミュニケーション・オペレーションの両面で工夫する必要がある」と述べた。
YCCを見直していく際、「長期金利の急上昇を抑制する一定の措置を検討していく必要がある」との意見が1人の委員から出されていた。
上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の買い入れについては、何人かの委員が、大規模緩和の一環として実施してきたものであり「2%目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになれば、買い入れをやめるのが適当だ」とした。このうち1人の委員は、保有ETFの取り扱いは「時間をかけて検討していく必要がある」と指摘した。
<対外発信でも申し合わせ>
委員は1月会合の議論を踏まえ、先行き物価目標の実現が見通せる状況に至ればマイナス金利を含む大規模な金融緩和策の継続の是非を検討すると、総裁の記者会見などの場で対外的に示していくことが重要との見解で一致した。
緩和策の修正を行うとしても現時点での経済・物価見通しを前提にすれば緩和的な金融環境は継続する可能性が高いことや、政策変更の前後で不連続な動きが生じないようにしていく点も、同様に対外発信が重要だとの見解に至った。
(和田崇彦 編集:田中志保)
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