アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱化
ロイター / 2024年4月28日 8時1分
4月24日、代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインがここ数カ月で過去最高値を更新する中で、ビットコインの採掘(マイニング)で消費される電力量の多さやそれが環境に及ぼす影響を巡り、全米で論争が白熱化している。2023年10月撮影(2024年 ロイター/Dado Ruvic)
Avi Asher -Schapiro
[ロサンゼルス 24日 トムソン・ロイター財団] - 代表的な暗号資産(仮想通貨)のビットコインがここ数カ月で過去最高値を更新する中で、ビットコインの採掘(マイニング)で消費される電力量の多さやそれが環境に及ぼす影響を巡り、全米で論争が白熱化している。
ビットコインは、膨大な電力を使うコンピューターを駆使した複雑な計算式をいち早く解いた採掘者(マイナー)に報酬として与えられる。
バイデン政権は採掘業界にこの電力使用量の詳細な開示を要求する一方、業界側は自治体が事業拡大を規制するのを防ぐための法整備を推進しようとしている。
ビットコインは19日、採掘者への報酬が半分になる「半減期」を迎えており、採掘のコストは割高化した。これがビットコインの新規採掘と電力消費にどう影響するのかはまだ分からないが、各事業者は設備拡充に費用を投じてより激しくなる競争に備えているところだ。
環境保護団体アースジャスティスの弁護士、マンディ・デロッシュ氏は「われわれがこの種の電力使用を奨励し続ければ、クリーンエネルギーに関する目標を達成できなくなる」と危機感を募らせる。
アースジャスティスは自治体に対して採掘施設の許可制限を求める訴訟を起こした。
これに対して業界側はかねてから、他の電力使用者と平等に扱われるべきだとの主張を展開している。
主要なビットコイン採掘事業者が加盟するデジタル・エネルギー・カウンシル創設者のトム・マペス氏は「われわれが使うエネルギーを獲得する上で、なぜ勝者と敗者に分けられなければならないのか」と問いかけた。
バイデン大統領は3月に提示した予算案で、ビットコイン採掘に伴う電力使用に30%の税金を課す方針を表明。しかしビットコイン採掘事業者を支援するワイオミング州のシンシア・ルミス上院議員は、そうした課税は米国の採掘業界を破壊すると警告している。
ケンブリッジ・ブロックチェーン・ネットワーク・サステナビリティー・インデックスが開発したモデルに基づくと、採掘事業から排出される温室効果ガスは2022年が4800万トン、23年が6100万トンで、今年は最大で9000万トンに達する恐れがある。
<正確なデータ不在>
幾つかの上場しているビットコイン採掘事業者は自分たちの電力使用量を公表しているものの、業界全体としての正確な消費量を示すデータは存在しない。
米エネルギー情報局の見積もりでは、国内のデジタル通貨採掘に使われる電力は全使用量の0.6―2.3%だが、採掘施設から直接報告されたものではない。
例えばテキサス州ロックデールにあるライオット・ブロックチェーンの採掘施設の電力使用量は、最大で周囲の30万世帯分に匹敵する。この数字は環境保護団体から業界による電力浪費の典型として引用される。
ビットコイン採掘事業者側は、一般家庭と異なって電力需要のピーク時にはコンピューター機器を止めることができるため、電力使用の平準化に寄与していると説明している。
ただ今年1月には米証券取引委員会(SEC)がビットコイン現物の上場投資信託(ETF)を許可し、多額の新規資金が業界に流入して環境保護団体の怒りを倍増させた。
2月になるとエネルギー省が82のビットコイン採掘事業者に電力使用量を開示するよう通告したが、ライオット・ブロックチェーンなどはこの措置の一時差し止めを求める訴訟に勝利した。
<反対運動>
政府が業界に情報開示強化を求めるのと同時に、アースジャスティスのデロッシュ氏の話では、ビットコイン採掘事業者の事業拡張や新規施設建設に対する反対運動も米国各地で起きている。
アースジャスティスはニューヨークで採掘施設の許可を阻止する訴訟を進めているほか、アラスカでは地域住民が採掘施設の騒音被害に対する苦情を申し立てた。
これを受けアラスカ州議会では4月、州内の採掘事業者に新たな免許の要件と騒音対策の義務化を定めた法案が提出された。
昨年にはニューヨークが米国の州として初めて、化石燃料を利用するビットコイン関連の新規事業を一時的に停止させることも決めている。
またペンシルベニアの地元住民グループは今年3月、採掘事業者と事業を認めた当局を相手取り、採掘のために廃石炭や古タイヤを燃やして地域の空気を汚している責任を問う訴訟を起こした。
業界側も負けていない。一部の団体は、地元自治体が採掘事業を独自に規制するのを難しくする州レベルの法令導入を働きかけつつある。
一方でデジタル・エネルギー・カウンシルのマペス氏は、事業者としても適正なビジネスを行っていて地域に貢献できるのだ、と地元を説得する義務があると指摘した。
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