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アングル:英女王在位70年、祝賀ムードに影落とす王室人気の低下

ロイター / 2022年1月29日 8時17分

 1月25日、英国は今年、エリザベス女王が在位70年を迎え、祝賀ムードに包まれている。写真は2012年2月、ロンドンで撮影(2022年 ロイター/Eddie Mulholland)

[ウィンザー(英イングランド) 25日 ロイター] - 英国は今年、エリザベス女王が在位70年を迎え、祝賀ムードに包まれている。だが、その陰に隠れるように王室にとってあまり喜ばしくない現実が存在する。つまり、この70年間のほとんどの期間で考えられなかったほど、君主制への疑問が高まっているということだ。

現在、95歳の女王が即位したのが1952年2月6日。それ以来、今ほど王室が厳しい視線を浴び、権威に傷がつくニュースの見出しが躍った局面はほとんどない。

例えば、女王の次男のアンドルー王子には、米国における性的虐待疑惑が浮上。孫のヘンリー王子と妻のメーガン妃は、王室内で人種差別的な発言にさらされたと報じられている。

女王は国民から非常に深い尊敬を得ているので、彼女が健在なうちは1000年近く続く君主制は安泰に見える。ただ、その後の展開となると、不透明感が増してくる。

英国で君主制反対運動を活発化させている政治団体「リパブリック(共和国)」を率いるグラハム・スミス氏は、ロイターに「君主制とエリザベス女王は、大半の国民にとっては同義語になっている。女王がいなくなった後は、世論がどうなるかは全く分からない」と語った。

その上でスミス氏は、議会が動きさえすれば君主制を廃止できるとはいえ、まずは国民投票をやるべきだという雰囲気になる公算が非常に大きいとの見方を示した。

現在の英王室は、遠く先祖をたどると1066年にイングランドを征服したノルマンディー公ウィリアムにたどりつく。その後、盛衰を繰り返してきたものの、英国が共和制となったのは1649年の清教徒革命でチャールズ1世が処刑されてからの約10年間だけだ。

エリザベス女王即位以降、王室の権威が最も下がったのは1990年代。3人の子どもが結婚に失敗したほか、1997年にはチャールズ皇太子の最初の妻だったダイアナ妃が死亡したことが響いた。

逆に権威が一番高まったのは、女王在位60年となった2011年で、この年に孫のウィリアム王子とキャサリン妃が結婚したことも重なり、国民の王室支持が強まった。

王室によると、今年は女王在位70年を祝う「プラチナジュビリー」として、6月に4日間特別の祝日が設けられる。王室報道官は、君主制の長期的な将来に関する質問についてはコメントを拒否した。

<不祥事続き>

英国の君主制支持派は、女王が国を安定させる役割を果たしている上に「ロイヤルブランド」が観光客を呼び込むため、経済も潤していると主張する。反対派は、君主制こそが不相応な特権の巣窟で、予算の一部は納税者が負担し、何人かの王室メンバーの振る舞いによって信頼も損なわれていると述べる。

そのメンバーの1人は、女王が4人の子どもの中で最も可愛がっているとメディアが伝えるアンドルー王子だ。米国で性的虐待の疑いで訴追されて係争中の王子は今月、王室によって軍籍と慈善団体などのパトロン(後援者)の役職を事実上はく奪された。

英紙サンデー・タイムズのコラムニスト、カミラ・ロング氏は「英国の君主制にとってこれは『滅亡レベル』の出来事だ。1000年にわたって大衆にこれ以上ないほど特別な存在だと言い聞かせてきたのに、現在の法廷で実は特別でも何でもないと大衆が分かってしまった」と記した。

一方、かつて王室内で最も人気があったヘンリー王子は、妻のメーガン妃とともに王室の責務を放棄し、ロサンゼルスに移ってしまった。王室内で何度か辛らつな悪口を言われたショックが原因だ。

チャールズ皇太子も長年の側近だったマイケル・フォーセット氏が、寄付の見返りに勲章を授与していたとされ、皇太子の慈善団体の責任者を辞任したため、厳しい目を向けられている。

ただ、王室の伝記作家、ペニー・ジュノー氏は「(これらのスキャンダルが)国民に君主制をなくすべきとの考えをもたらすだけの材料になるかどうか、私は懐疑的だ」と話した。

<世論の風向き>

各種世論調査では、国民の大多数が君主制は存続すべきとみている。昨年12月のある調査によると、エリザベス女王に好意的な見方をする人は83%に達した。それでも王室にとって心配な兆候も出てきている。

昨年11月にはカリブ海のバルバドスがエリザベス女王を元首とする立憲君主制を廃止し、共和制に移行。チャールズ皇太子は女王に比べて人気がなく、特に若い世代からの支持が低下しつつある。

女王が大半の時間を過ごしているウィンザーに住む学生のマルゴ・バトラーさん(20)は「私は(チャールズ皇太子が王位に就くのは)嫌な思いがする。王室全般について気掛かりはないが、皇太子は少しばかり問題がある。若い人の多くは同じ気持ちだろう」と話す。

だが、チャールズ皇太子に対する国民の気持ちが離れることや、アンドルー王子やハリー王子に関するタブロイド紙の見出しが王室の権威を低下させるというだけで、君主制がなくなることはなさそうだ。

一部の国民からすると、最近の新型コロナウイルス関連規制下でのジョンソン首相の「不行跡」や、トランプ前米大統領がもたらした騒ぎで、選挙で決まった指導者や国家元首は、人間性において君主よりも魅力が乏しく映っている。

政治・経済のエリート層の間でも、王室支持は盤石だ。与党・保守党が君主制廃止に賛同する気配は全くないし、主要野党の労働党は2019年の選挙で、元党首が愛国心に欠けると受け取られたため苦戦を強いられた。

ジョンソン氏は昨年、亡くなったフィリップ殿下をしのび、殿下は73年間女王の伴侶として君主制が国民生活の安定と幸福に不可欠な存在であり続ける手助けをしてきたと称賛した。

王室自体も、変化する世界にどのように適応していくべきか自覚している。女王は1997年の演説で、政治家は選挙を通じて国民から厳しい審判を受けるが、王室がそうしたメッセージを読み取るのはより難しいことがままあると発言。「私は結婚し、女王となってからずっとそうしたメッセージを正しく受け取るべく最善を尽くしてきた。そして、われわれ王室は将来も一体となってその努力をしていくつもりだ」と述べた。

(Ben Makori記者、Michael Holden記者)

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