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バッタを食べて戦う兵士たちは、なぜか明るく楽しげに歌う 戦略なし、将来像なし。民族間に横たわる不信感。「それでも今は戦うのみ」【ミャンマー報告】2回続きの(2)

47NEWS / 2024年4月29日 11時30分

ミャンマー北西部チン州テイザーンの前線本部でギターを弾きながら歌う兵士=3月12日撮影(共同)

 事実上の内戦が本格化するミャンマーで、民主主義と自治権を求めて軍事政権と戦う少数民族武装組織の多くは貧しい。共同通信記者が3月に同行した北西部チン州の部隊では、バッタの炒め物や干し魚が夕食の主菜だった。少数民族は各地で軍政を追い詰め支配地域を拡大しているが、最大民族ビルマ人との共闘が進まず、民主派は一枚岩には程遠い。歴史的な民族間の不信感が克服できないのだ。軍政打倒に向けた統一戦略も国家の将来像も見当たらない。それでも若い兵士たちはなぜか明るく楽しげで「今の自分にできることをする」と口々に語った。(共同通信ミャンマー取材班)

 ▽貧しい食事、清潔なトイレ、不思議な部隊

 「こんなものしか用意できず申し訳ない」。取材班は3月中旬に約1週間、チン州の武装組織「チン防衛隊(CDF)」に同行し兵士らと寝食を共にした。食事は冷めた米飯と、菜の花やジャガイモなど野菜の煮物、干し魚や干し肉が中心。意外に油が少なく日本人にも食べやすい味付けで、量は豊富だが、戦闘任務に付く若者たちには気の毒なメニューだ。ときにはバッタの炒め物や犬肉が食卓に上った。


ミャンマー北西部チン州テイザーンの宿舎で取材班に提供された食事。菜の花の煮物と干し魚などが米飯に載っている=3月12日撮影(共同)

 村の民家を数軒借り上げた「前線本部」で、板間に毛布を敷いて雑魚寝。まだ寒さが残る季節だったが、お湯は貴重品でシャワーはなく水浴びのみ。村の女性たちが交代で炊事や掃除をしている。宿舎のトイレが極めて清潔なのに驚いた。筆者はイラクやシリアなどでの紛争地取材の際、トイレの不潔さに苦しんだ。チン州の兵士は公共意識が高いのだろうか。


 兵士たちは10代後半から20代半ばがほとんどで、とにかく若く明るい。非番の兵士が宿舎でギターを弾き歌う姿をあちこちで見かけた。安室奈美恵さんのミリオンセラー「CAN YOU CELEBRATE?」のビルマ語版は人気曲の一つ。古いロックもよく歌っていた。
 初年兵のミンレイさん(19)は日本語で「コンニチハ」と筆者に話しかけてきた。小柄な体に担いだ銃が重そうだ。侍と日本文化に憧れ、チン州に隣接する北部ザガイン地域カレイで日本語学校に通っていた。昨年、カレイで国軍の攻撃が強まり家族は避難民キャンプに逃れた。ミンレイさんは「軍政の横暴はこれ以上許せない。自分が戦うしかない」とCDFに加入した。初の戦闘任務として近くカレイの最前線に投入されることが決まった。「どうか気をつけて」と言葉をかけると「ハイ、ワカリマシタ」と笑顔で答えた。同世代の3割が武装組織に加入したという。
 部隊には10代後半の女性の姿も目立つ。原則的に戦闘任務には就かず後方で医療や調理を担う。「戦闘がしたかった。敵を撃てないなら辞める」と去る人も多い。


ミャンマー北西部チン州テイザーンの「チン防衛隊(CDF)」前線本部で笑顔を浮かべるミンレイさん=3月11日撮影(共同)

 ▽若い兵士たち、明るさの源泉は

 厳しい環境で多くの仲間が死傷している。自分も死ぬかもしれないのに、なぜ明るいのだろう。牧師が本業のザカイ司令官(34)は「チン州の人々がこれほどの自治と自由を手にしたのは初めてだから」だと語った。確かに、部隊を包んでいるのは高揚感だ。
 チン州に接するインドとの国境地帯からは国軍が排除され、国境管理も警察業務も「チン民族戦線(CNF)」などが担っている。国境ゲートにたなびくのはミャンマー国旗ではなくCNFの旗だ。道路の補修や拡張など公共事業は、軍政が残した予算をCNFが管理して継続していた。


ミャンマー北西部チン州シムゾールで取材に応じる「チン防衛隊(CDF)」の女性隊員ら=3月10日撮影(共同)

 少数民族は教育も取り戻した。チン州シムゾールの小学校を訪ねると、笑顔の子供たちが歓迎してくれた。女性ばかり8人の教師が約160人の児童を教えている。国際NGOの支援と児童の父母から毎月集める協力金でなんとか運営しているが、新しい教科書は用意できず軍政のものを再利用。教師の月給は6500円ほどで、27歳の教師は「お米も満足に買えない」と笑った。
 ザカイ司令官や若い兵士たちに住民が寄せる期待と信頼は厚い。2021年11月、村に駐留していた国軍兵士3人にレイプされた主婦マンサンさん(33)は、取材班の前でザカイ司令官につらい記憶を打ち明け「もう2度とあんな思いはしたくない。軍政を消してほしい」と訴えた。

 ▽「民主的な連邦国家」を目指すが、大きな障壁は民族間の不信感

 今の勢いが続き軍政をチン州から完全に追い出したとしよう。その後、少数民族はミャンマーをどうする考えなのか。理想はミャンマー全土の民族が一致団結し、最大民族ビルマ人主体の民主派政治組織「挙国一致政府(NUG)」や、同じくビルマ人主体の「国民防衛隊(PDF)」と共闘して軍政を倒し、それぞれの地域で高度の自治を実現しつつ民主的な連邦国家を樹立することだ。だがその夢を実現するための道筋は何も定まっていない。


ミャンマー北西部チン州シムゾールの小学校で学ぶ子供たち=3月14日撮影(共同)

 最大の問題は、チン州を含め各地の少数民族が、人口の7割を占めるビルマ人に強い不信感を抱いていることだ。ビルマ人は常に国政を独占し、少数民族の土地や権利を奪い抑圧してきたという記憶が不信感の源だ。今回の軍政との戦いでも、実際に戦闘で成果を挙げているのは少数民族が中心。ビルマ人主体のNUGとPDFに対して「口を動かすばかりで行動しない」という批判が高まっている。ザカイ司令官の部隊はこの2年間、NUGからは何の支援も受け取っていない。

 ▽戦闘に明け暮れる司令官は何を望むのか

 ザカイ司令官に「ビルマ人を信頼できるのか」と尋ねると「彼らは俺たちを〝部族〟と見下している。信頼するのは難しい。だが軍政を倒すにはビルマ人と協力するしかないんだ」と語った。司令官は民主派指導者アウンサンスーチー氏についても「本当はあまり好きではない。民主主義を語る一方で軍との共存を図ったからだ。軍は必ず市民の権利を奪うのに」と打ち明けた。


ミャンマー北西部チン州の村で、民俗衣装姿の女性たち=3月14日撮影(共同)

 司令官には新婚の妻がおり、夏に待望の第1子が生まれる予定だ。「チン州から国軍を追い出したら俺の役目は終わり。村に帰って牧師に戻る。自治ができれば満足だ」。司令官は「民主的な連邦国家が実現するなら最高だが、首都ネピドーまで行って国軍を倒すのは俺の仕事じゃない。それは誰か別の人がやればよい」と話した。「先のことは分からない。目の前の戦いを続けるだけだ」

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