F1の裏に“レノボ”あり 500TBのレースデータを高速処理
ASCII.jp / 2024年4月17日 7時0分
2024年4月7日に三重県・鈴鹿サーキットで決勝レースが開かれたF1日本グランプリ。F1日本グランプリは例年秋に開催されていたが、今年は初の春開催となった。
ちょうどサクラが咲くなか日本に滞在できるとあって、F1ドライバーやチームスタッフ、外国人観戦客からは大好評なイベントとなった。
世界180の国と地域、5億人のF1ファンがテレビで観戦している。そんなテレビ中継の現場を支えているのが実はレノボだったりする。
750台のレノボマシンがレースのデータを監視・処理
レースをするサーキットは、例えば鈴鹿の場合、1周5km以上の長さにもなる。路面の周辺には28台のカメラが設置され、さらに無線で接続されたカメラが4〜8台、ピットウィールには3台、表彰台の前に2台など、あらゆるところにカメラが設置。マイクは147本となっている。
また、F1では10チーム20台のマシンがレースを戦うが、1台につき最大9台のオンボードカメラが設置されており、100台近いオンボードカメラからの映像を集め、放送に使っている。
サーキットの敷地内には38個のアンテナと、60キロ近い光ファイバー網が張り巡らされ、サーキットのサイドやオンボードカメラからの映像を流しているのだ。
鈴鹿サーキットのピットには「トラックサイド・イベント・テクニカル・センター(ETC)」という映像やクルマから集められるデータをすべて集積する作業場が存在する。その中には、F1に技術協力をしているレノボのノートパソコンやディスプレー、サーバーやワークステーションなど750台の機材が並び、F1マシンやサーキットから集められる映像やデータを監視、処理などをしている。もちろん、スタッフが持っているスマートフォンはレノボグループのモトローラだ。
データ容量は1レースあたり500TB、配信遅延は300ミリ秒程度
ここに集まってきたデータは、イギリス・ロンドンにあるMedia & Technology Centreに送られている。
F1は金・土・日の3日間で開催されるが、その間に作られるデータは500TBにもなるという。フリー走行や予選、決勝の映像はリアルタイムにサーキットからイギリスに配信されるが、遅延としては300ミリ秒程度だという。
ちなみに回線としては10Gbpsとなっており、メインとサブでそれぞれ2系統、計4系統確保し、通信状況のいい回線を自動的に選んで送信しているという。ちなみに日本グランプリでは鈴鹿からシンガポールを経由し、フランス・マルセイユまで接続。そこからロンドンに直接、つながるルートと、フランクフルトを経由してロンドンにつながる2系統となっている。
こうした光ファイバー網はインドのタタ・コミュニケーションズが担う。
担当者によれば「日本グランプリの数日前に大きな地震があった(3日午前に台湾付近を震源とする地震のこと)ため、急遽、回線の確保に終われた」という。
確かに台湾付近は日本から東南アジア、さらにはインドにつながる海底ケーブルが数多く敷設されている地域でもあるため、地震の影響は受けやすい場所だったりもする。幸い、F1日本グランプリ開催中には特に問題はなかったようだ。
F1はレノボにとって最高の“リモートオフィス現場”
ちなみに、こうしたサーキットとロンドンの2拠点体制になったのはコロナ禍以降のことなのだという。それまでは、すべてのスタッフと機材がサーキットにやってきて、現場で対応していた。しかし、コロナ禍となり、世界中のサーキットへの転戦が難しくなる中、レノボの機材を活用することでリモートプロダクション体制を強化。それまでは250人が世界を転戦していたが、いまでは130人まで減らすことができたという。
また、データ処理能力に関しても、ロンドンに比重を移すことで、サーキットに持ち込む機材の重量が100トン、削減されたとのことだ。
F1の担当者は「F1の現場ではとにかく安定した信頼性が求められる。その点、レノボは心強いパートナーと言える」と語る。
今年、F1は世界で24戦、開催される予定だ。市街地や山間部、砂漠や海岸線などあらゆる場所に運搬し、数日でくみ上げ、レースが終わればコンテナに詰めて、また別のサーキットに運搬するといったロジスティックにも耐えられる信頼性が機材に求められている。
レノボ・ジャパンの檜山太郎社長は「F1は世界180の国と地域で視聴されており、我々がビジネス展開する市場とマッチングしている。スポーツに最先端の技術が投入されているというのは我々の業界に通じるところがある。F1に参加したことで、企業からの問い合わせが増えたことを実感している」と語る。
「あらゆる場所でパフォーマンスを発揮できる信頼性」をアピールできる点においては、F1はレノボにとって最高の「リモートオフィス現場」なのかも知れない。
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