【レビュー】ソニーの新ヘッドホン「ULT WEAR」は常識破りの重低音! 巨大なコンサート会場にいるみたい
ASCII.jp / 2024年5月3日 18時0分
ソニー史上最高の重低音再生を実現したという、ワイヤレスヘッドホン「ULT WEAR(アルト・ウェア)」をレポートします。音楽再生を開始した瞬間に巨大なコンサート会場の情景を思い描かせるヘッドホンでした。
新シリーズのULT(アルト)が誕生
ソニーの重低音ヘッドホンといえば、クラブ/ヒップホップ系の音楽再生にチューニングを合わせた「EXTRA BASS」シリーズが2008年の誕生以来、約16年間に渡るロングランヒットを続けてきました。ULT(アルト)シリーズはEXTRA BASSシリーズに代わる新たな重低音モデルです。最初はこのワイヤレスヘッドホンと2種類のワイヤレススピーカー「ULT FIELD」が商品化されます。
ULT WEARはアクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)と外音取り込み、内蔵マイクによる音声通話、スマホアプリ「Sony Headphones Connect」との連携など多彩な機能を搭載しています。ANCをオンにした状態で最長30時間の連続音楽再生に対応。サウンドは個性が際立っていて、機能面も充実する新ヘッドホンはソニーストアで3万3000円です。
ULT WEARはハイレゾ対応のコーデックであるLDACをサポートしていますが、ヘッドホンに搭載するドライバーがハイレゾの音域をカバーしていないため、「ハイレゾ再生には非対応」のヘッドホンです。LDACに対応するスマホやオーディオプレーヤーと組み合わせるのであれば、AAC/SBCのコーデックよりもLDACを選んだ方が転送レートが向上するので、さらにきめ細かなサウンドが楽しめるメリットはあります。でも若干紛らわしいポイントなので要注意。ソニーのハイレゾ対応ワイヤレスヘッドホンを探している方は、現行モデルであれば「WH-1000XM5」と「WH-1000XM4」の2機種が対象です。
重低音が3段階から切り替えられる
今回は3色あるカラバリの中から「Forest Gray」を借りて試しました。Google Pixel 8に高音質コーデックのLDACで接続して、Amazon Music Unlimitedが配信するカタログの中から、重低音たっぷりなマドンナの楽曲『Hung Up』を聴いています。
再生を開始してすぐに低音がかなり充実していることがわかります。低音はだぶつくことがなくタイトで上質。ボーカルの音像をセンターにキリッと立たせて、立体的な音場を描きます。
ULT WEARには重低音の量感、サウンドのパワー感の設定が異なる3つのサウンドモードがあります。左側イヤーカップに搭載する「ULT」ボタンをクリックするとサウンドモードが切り替わります。モードを「ULT1」にすると、楽曲のベースラインの輪郭が一段と太くなって重低音の迫力がアップします。筋肉質で瞬発力に富んだ低音なので、ボーカルやメロディを演奏する楽器との分離がよく、演奏がもやっとしないところがやはりULT WEARの魅力です。
ULTボタンをもう一度押して「ULT 2」に切り替えると、重低音が腹の底に響くほどの迫力を増してきます。本機には”重低音を再生するとヘッドホンが振動する”ような機能は載っていませんが、実際に『Hung Up』のような重低音多めな楽曲をULT2モードで聴くと、こめかみのあたりがブルブルと振動する手応えがあります。
ノイキャンの性能も強力だった
正直、筆者にはULT2モードのド迫力な低音は消化し切れない感じもしましたが、ふだんから重低音多めの音楽を好んで聴く方にはULT WEARが絶好の選択になると思います。
ULT WEARはイヤーカップの外側と内側に合計4つのマイクを載せて、リスニング環境周囲のノイズを低減するANC機能を搭載しています。その性能をソニーは自社製品のWH-1000XM4未満と定義しています。実際には厚みのある重低音を再生すると、周囲のノイズはかなり聴こえなくなるので、消音効果がかなり高いヘッドホンだと思います。屋外で「ながら聴き」を楽しむ際には、アプリからレベルが調整できる外音取り込みを積極的に併用するべきです。
サウンドはかなりの個性派。筆者が好きなロックやポップス系の楽曲は、まるで東京ドームや日本武道館のような巨大アリーナ会場で聴いているような熱量を感じることができました。驚きのポータブルヘッドホンです。
静かなボーカルやクラシックの楽曲を中心に聴きたい方は、少し値段はアップしますが、ハイレゾ再生にも対応するWH-1000Xシリーズの方が期待に合うかもしれません。ショップで聴き比べながら吟味してください。
筆者紹介――山本 敦 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
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