細胞のブドウ糖代謝を制御する新たな仕組みを解明--北里大学
Digital PR Platform / 2024年4月4日 14時5分
北里大学医学部の堤良平講師、堺隆一教授は、斎藤芳郎教授(東北大院薬)、Benjamin G. Neel教授ら(米国ニューヨーク大学)と共同研究を実施し、増殖因子受容体およびブドウ糖トランスポーター1(GLUT1)を含むエンドサイトーシス小胞が、細胞外からミトコンドリアへのブドウ糖輸送装置として機能し、細胞の解糖系によるブドウ糖代謝において重要な役割を果たすことを明らかにしました。この結果は、現在考えられている「ブドウ糖は細胞膜を通して細胞内に移行し細胞質で代謝される」という教科書モデルを大きく更新するものです。
この研究成果は、2024年4月2日付で、Nature Communications誌に掲載されました。
■研究成果のポイント
・増殖因子受容体エンドサイトーシス小胞の機能にはこれまで不明な点が多かったが、その簡便な単離法を開発し、同小胞にGLUT1を含む多数の解糖系酵素が集積することを明らかにした。
・以前から知られていた増殖因子による急性の細胞ブドウ糖代謝亢進が、このような解糖系酵素が集積したエンドサイトーシス小胞の生成とそのミトコンドリアへの輸送に依存していることを示した。
・メタボローム解析によりエンドサイトーシス小胞が細胞内代謝の恒常性に必要なこと、ならびに同小胞によるブドウ糖の輸送が細胞の生存に必須であることを示した。
・本現象は、増殖因子受容体の活性化や糖代謝の亢進が知られているがんなどの疾病への関与が示唆され、新たな治療法の開発への展開が期待される。
■研究の背景
増殖因子受容体は様々ながんで活性化型変異や過剰発現が見られ、これまでに抗がん治療の標的として様々な薬剤の開発が進められてきました。細胞表面に発現する増殖因子受容体は増殖因子刺激により活性化し細胞内情報伝達の起点となることが知られていますが、刺激により細胞膜から生成されるエンドサイトーシス小胞によって細胞内に引き込まれます。近年、情報伝達の起点としてこのようなエンドサイトーシス小胞の機能が注目されてきましたが、完全には明らかになっていませんでした。
一方、1970年代から増殖因子刺激により細胞の糖代謝が急性に増加することが知られていましたが、インスリン依存的なブドウ糖トランスポーター4(GLUT4)の細胞膜表面への移行や転写・翻訳による長期的な解糖系酵素群の発現量制御が注目されたこともあり、当初発見された現象は、これらでは説明が困難であるにもかかわらず、詳細な機構は明らかにされていませんでした。
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