【武蔵野大学・帝京大学 共同プレスリリース】水虫治療薬に対する耐性真菌治療に向け新たな抗真菌療法を提案
Digital PR Platform / 2024年4月16日 14時5分
【研究の内容と結果】
(1)白癬菌のテルビナフィン耐性に関与するタンパク質TrPtk2を同定
新たな抗真菌薬標的を探索するため、遺伝子組換え技術を用いて、白癬菌のもつ機能未知タンパク質TrPtk2を欠損させた変異株を作出したところ、野生株(遺伝子組換えをしていない元の菌株)と比べ、TrPtk2欠損株ではテルビナフィンを加えた培地*2における菌の成長が抑制される状態(感受性)になることが分かりました(図1)。 白癬菌以外の真菌も感染症を引き起こし、臨床上問題となります。そこで、白癬菌だけでなく他の真菌種においてもPtk2がテルビナフィンの自然耐性に関与するかを知るために、一般的に実験室で用いられている真菌の一種である出芽酵母を用いて調査しました。その結果、出芽酵母においてPtk2タンパク質を欠損するとテルビナフィンの抗菌活性が上昇することを見出しました (図2)。これらのことから、Ptk2タンパク質が種を超えてテルビナフィンに対する自然耐性を付与することが示唆され、Ptk2が感染症を引き起こす様々な真菌に対する抗真菌薬を探索するうえで有力な標的候補であるとわかりました。
(2)プロトンポンプ*3阻害剤オメプラゾールは、テルビナフィン耐性白癬菌に対し、テルビナフィンの抗菌活性を上昇させることを発見
Ptk2は、細胞膜上のプロトンポンプPma1を活性化することが知られています。白癬菌のTrPtk2もプロトンポンプPma1を活性化し、テルビナフィン耐性をもたらすのではないかと考え、プロトンポンプ阻害剤として知られる胃酸抑制薬オメプラゾールを作用させた際のテルビナフィン感受性を確認しました。その結果、テルビナフィン耐性白癬菌においてテルビナフィンに部分的な感受性を示すことがわかりました(図3)。
以上の結果から、白癬菌TrPtk2-TrPma1経路が、近年報告が増加しているテルビナフィン耐性白癬菌に対する新たな治療標的となり、新規医薬品の発見につながるものと期待されます。
【出典・用語解説】
・*1 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン 2019
・*2 培地:細胞や微生物が成長しやすいよう人工的に作られた環境のこと。
・*3 プロトンポンプ:細胞内のエネルギーを利用して、H+(プロトン)を細胞の外に汲み出すタンパク質。胃が酸性なのは、このプロトンポンプが働くためであり、病原性真菌にとっても生きるために必要なタンパク質である。
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