8年前の悪夢蘇った敗戦で見えた一筋の光 日本代表は“日韓戦”で逆境を跳ね返せるか【現地発】
FOOTBALL ZONE / 2024年4月19日 19時30分
■セットプレーから3失点を喫して、キルギス代表に2-3で敗れる
8年前の日の悪夢が蘇ってくるような敗戦だった。フットサル日本代表は、4月18日にタイの首都バンコクで行われたAFCフットサル・アジアカップ(アジア杯)の初戦でキルギス代表に2-3で敗れた。
試合序盤から攻守に歯車が噛み合わない日本は、前半13分にCKから先制点を奪われる。さらに後半開始直後にも直接FKを叩き込まれてリードを広げられると、後半11分にもセットプレーから強烈なミドルシュートで3点目を決められてしまう。試合終盤の後半18分にはFP新井裕生、同19分にはFP堤優太がゴールを挙げたが、反撃も及ばずに2-3で敗れてしまった。
8年ぶりとなるフットサル・ワールドカップ(W杯)予選を兼ねた今大会、日本が初戦で対戦したのは2016年の「タシュケントの悲劇」を起こした相手の一つだった。
2016年にウズベキスタンのタシュケントで行われたフットサルW杯を兼ねたアジアカップで、当時大会2連覇中のフットサル日本代表には、大会3連覇が期待されていた。そして、その過程であるベスト4進出で得られるW杯の出場権獲得は、達成しないことが考えられないようなノルマだった。
ところが、日本は準々決勝でベトナムと延長戦を通じて4-4で引き分けると、PK戦の末に1-2で敗れてしまう。それでも5位決定プレーオフに勝てば、同年にコロンビアで開催されたフットサルW杯に出場することができた。だが、ベトナム戦の翌日に行われた5位決定プレーオフ1回戦のキルギス戦で、日本は2-6と敗れてしまい、2004年から続いたフットサルW杯の連続出場を途切れさせてしまった。
4年前の大会は新型コロナウイルスの影響でアジア杯が開催されなかったことから、今回が8年ぶりとなるフットサルW杯予選を兼ねたアジア杯になった。そして、その初戦の相手が奇しくも、キルギスだったのだ。
初戦でキルギスに勝てば「8年前のリベンジ!」「日本フットサルの成長を見せた!」などと周りも盛り立てることができただろう。だが、結果は8年前と同じ敗戦。しかも今回はメンタル的に立て直す時間がないなかで臨んだ前回とは異なり、この大会までに事前準備をして、この初戦に照準を合わせてきたうえでの敗戦である。大会直前にチームの主軸だったFPオリベイラ・アルトゥールとFP清水和也がバンコク入りした後に負傷離脱した点など、木暮賢一郎監督をかばいたくなる要素も多くあるが、指揮官自らが「今置かれている状況を跳ね返す強さを出していこう」と選手たちに強調して臨んだ上での結果だ。
初戦やフットサルW杯予選の重圧があったなかでも、力を出せていた選手もいた。木暮監督が前半の終盤に起用したFP甲斐稜人、後半のスタートからピッチに立たせたFP山中翔斗は、最初の出場機会から積極的に仕掛けてチャンスをつくった。2つのゴールを挙げた新井と堤を含め、この左利きカルテットは全員がアジア杯初出場ながら、それぞれ期待を持たせるような場面を創出した。
前日練習の後に「アルトゥールや和也がいないから負けたというのは、一番言われたくないし、一番悔しい」と話していた山中は、もどかしい思いで試合を見ていたという。
「僕自身も前半に1回くらい(出場の)チャンスはあるかなと思っていたんですけど、チャンスは来ずに。ハーフタイムで(監督に)『1対1を仕掛けるチャンスがすごくある。交代のスタートは(山中)翔斗で行く』とロッカールームで言われた時に『やっと来たか』という気持ちで挑みました」
次戦は韓国代表と対戦【写真:河合 拓】
■続く日韓戦では勝利が求められる
ベンチで戦況を見ていた前半からも、常に自分に何ができるかを考え、「チームの雰囲気を良くするために声を出し続けていた」という山中は、ボールを受けて1対1の局面になると積極的に仕掛けた。中1日で行われる20日の韓国戦、22日のタジキスタン戦では連勝が求められるが、「自分は得点だったり、得点につながるプレーでチームを助けることができると思っているので、(W杯出場や優勝の)可能性はまだあるし、可能性がある限りはみんなで前を向いてやっていきたい。この雰囲気をマイナスにもっていくのではなくて、プラスに持っていけるように、ホテルに帰ったところから切り替えて、次の韓国戦に向けて頑張っていきたいと思います」と、チームの盛り立て役も買って出た。
2016年はキルギスに敗れて、すべてが終わった。しかし、今回はまだ1試合目が終わったところだ。木暮監督は「フィールドプレーヤー全員がピッチに立ち、ポジティブな働きをしてくれた選手もいればぶっつけ本番の選手たちもいました。そこは最適な選手の組み合わせを分析して、韓国戦にしっかりつなげていきたい」と口にした。初戦のパフォーマンスからすれば、山中らの出場時間は増えてもおかしくないだろう。初戦で敗れながらも優勝した前回大会のようなハッピーエンドとなるのか、8年前のような絶望を味わうのか。日本のフットサルにとって重要な数日間となる。(河合 拓 / Taku Kawai)
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