世界陸連会長ブチ上げ「金メダリストにボーナス」は五輪を単なる賞金大会へと変える大暴挙【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判 #1】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月3日 10時50分
世界陸連のセバスチャン・コー会長(C)共同通信社
新連載【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判】
4月初旬、世界陸連の会長セバスチャン・コーが驚くべき発表をした。「パリ五輪で金メダリストにボーナスを支給する」と言うのだ。
さらに驚いたのは、このニュースについて日本のメディアがほとんどスルー状態であったことである。
これは五輪史初の試みであり、日本オリンピック委員会事務局として五輪プロ化問題に携わった私にとっては、五輪史を揺るがすほどの大問題にしか思えない。
オリンピックを長年支えてきたアマチュアリズムという概念が忘却のかなたに去ってしまっているが、金銭のためではなく純粋にスポーツを愛するが故にスポーツをする思想は、オリンピックの哲学「オリンピズム」を支えるものであった。元来、競技に参加することで金銭的報酬や物質的恩恵を得たものはオリンピックに参加することができなかったのだ。
1980年のモスクワ五輪ボイコット事件から政治に左右されない経済基盤をつくるべく、国際オリンピック委員会(IOC)が五輪の商業化に踏み切った頃、ソ連や東独など国家が全ての面倒を見る選手は五輪参加可能であった。競技を職業とする実質的なプロであった彼らはステートアマと呼ばれ、資本主義国のアマチュア選手との競技力不均衡が問題となった。そして五輪を世界最高峰のスポーツ祭典とすべくプロ選手の参加を容認するオープン化に至る。
■五輪を「滅びに至る門」に立たせることに
88年ソウル五輪がその最初となった。だが、その時も五輪参加によっていかなる選手も金銭的対価を得ないことが大前提。高額報酬のプロ選手があえて五輪に参加するのは金銭のためでなく、五輪に価値があるからだ! という図式が成り立たなければならなかった。
コーが金メダリストに渡す金額は5万ドル(約770万円)で、陸上48種目にわたる。その原資はIOCが五輪によって得た収益の分配金である。IOCは放映権料やスポンサーシップなどで得た収益の90%を国内オリンピック委員会や国際競技連盟(IF)などに配分する。その分配金を使って金メダリストに金銭を提供するとなれば、実態はIOCが大会で稼いだ金で選手に賞金を与える構造になる。
一部のIFから猛反論も出ているが、IOCは今のところ無言。オリンピックが抱える矛盾をコーが突いたのか? 彼は「この決心はIOCへの相談は不要、IOCに通告した」としている。もし追随するIFが増えれば、コーの提言はまさにオリンピックの「滅びに至る門」となるかもしれない。平和の祭典が単なる賞金大会になってしまうことをIOC、メディアはどう考えているのか。問題意識の希薄さは、オリンピックの危機を加速させる。
(春日良一/五輪アナリスト)
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