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肩こりや腰痛で「湿布薬」を貼ったら、まさかの血圧上昇。市販品でも心臓に負荷が…恐いのはよく聞く「あの成分」【上皇陛下執刀医が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月20日 9時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

湿布薬は、飲み薬よりも安全性が高いというイメージがあるためか、多用している人も少なくありません。しかし、実は心臓に負荷がかかる副作用もあるため、安易に使いすぎると危険です。本稿では、2012年の上皇陛下(当時の天皇陛下)の心臓手術を執刀した経験もある心臓血管外科医の天野篤氏による著書『60代、70代なら知っておく 血管と心臓を守る日常』(講談社ビーシー)から一部抜粋し、湿布薬の注意点について解説します。

湿布薬はじつは要注意な外用薬

市販の湿布薬も含めて、血圧上昇を招く成分が入っている

ほとんどの人は、肩こりや腰痛で湿布薬を使ったことがあるのではないでしょうか。通院している医療機関で処方してもらえますし、ドラッグストアでも市販品を購入できますから、 もっとも身近な薬といっていいかもしれません。

しかし、手軽だからといって安易に使いすぎてはいけません。とりわけ、心臓にトラブルを抱えている人は注意が必要です。湿布薬には血圧を上昇させたり、病状を悪化させたりする危険があるのです。

湿布薬に含まれている代表的な成分は「フェルビナク」「ジクロフェナクナトリウム」「インドメタシン」の3つで、いずれも「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs=エヌセイズ)」に分類される薬剤です。解熱鎮痛剤のアスピリン、ロキソプロフェン、イブプロフェンも同じ分類です。

エヌセイズは、体内で炎症、痛み、発熱を引き起こす「プロスタグランジン」という生理活性物質がつくられるのを抑えることで症状を改善します。プロスタグランジンは「シクロオキシゲナーゼ(COX=コックス)」という酵素が作用してつくられることから、エヌセイズはその酵素の働きを阻害し、プロスタグランジンが産生される経路を抑制するのです。

これにより、体内で水やナトリウムの再吸収の抑制に関与している「プロスタグランジンE2(イーツー)」や「プロスタサイクリン」という生理活性物質の産生が抑えられます。 また腎臓の血管が収縮して、腎血流量が低下します。その結果、体内に水やナトリウムがたまりやすくなり、血圧の上昇や浮腫が生じるのです。

湿布薬を多用すると、降圧薬の効きが弱くなることもある

エヌセイズが血圧に及ぼす影響を検討した報告によれば、平均5mmHg程度の血圧上昇を招くとされています。血圧が正常な高齢者がエヌセイズの使用を開始した直後から、血圧が高血圧の範囲まで上昇し、使用を中断すると血圧が正常化したという報告もあります。それだけ、エヌセイズは血圧に影響します。

もともと高血圧の人であれば、エヌセイズの過度な使用は、狭心症、心筋梗害、大動脈解離といった心臓疾患を発症するリスクが高くなる可能性があるのです。

またエヌセイズは、ACE阻害薬、ARB受容体拮抗薬、利尿薬といった降圧薬と相互作用があります。普段から血圧の薬を飲んでいる人が安易に湿布薬を多用していると、気づかないうちに血圧の薬の効き目が弱くなり、血圧が高い状態のまま過ごすことにもなりかねないので注意が必要です。

効き目が強力な湿布薬の容量・用法では、1日2枚

さらに、先ほども少しふれたように、エヌセイズは長期にわたって使っていると体内に水分を貯留させます。すると、頻脈などの不整脈、息切れ、浮腫といった心不全の症状が表れる場合があります。これは、人工透析の患者さんにも同じような症状が見られます。

体内にたまった水を一気に吐き出したり、再びたまったりすることを繰り返していると、心房は水がたまっている状態に対して鈍感になり、心房細動が起こりやすくなります。すると、心拍出量が少なくなるので、だんだんと心房が大きくなっていきます。その結果、心臓の働きが落ちて血液の流れが悪くなり、心房内で血栓ができやすくなります。それが脳の血管に移動して詰まれば脳梗塞を引き起こします。

こうしたリスクがあるため、心臓にトラブルがある人は安易に湿布薬を使ってはいけません。とりわけ、近年登場した「ロコアテープ(一般名=エスフルルビプロフェン・ハッカ油製剤)」と呼ばれる湿布薬(経皮吸収型鎮痛消炎剤)は効き目が強力で、2枚貼っただけで主成分の血中濃度が飲み薬を服用した場合と同程度まで上昇します。そのため、「1日1回、上限2枚まで」と用法・用量が決められています。また、心臓疾患に対してよく使われる抗凝固薬の「ワルファリン」との併用には注意が必要とされています。

「外用貼付薬」はれっきとした薬…当然、副作用も

湿布薬は、飲み薬よりも安全性が高いというイメージがあるためか、多用している人も少なくありません。しかし、皮膚から薬剤を吸収させる外用貼付薬で、れっきとした薬です。これまでお話ししたようなリスク、深刻な副作用もあります。

いっぽうで、患者さんから「出してください」と言われれば、医師は簡単に処方してしまいがちな薬でもあります。医療機関で処方できる1処方当たりの枚数は、2022年度診療報酬改定で上限63枚に制限されましたが、それでも少ない量とはいえません。手軽な薬だからこそ、しっかりリスクを把握したうえで、適切な用法と用量を守る必要があるのです。

天野 篤 順天堂大学 医学部特任教授/心臓血管外科医  

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