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「酒の街」の魅力満載!…京都・伏見の酒蔵を活用した美しき名建築11選

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月8日 14時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

良質な水に恵まれた京都の伏見エリアは、古くから日本酒の名産地として栄え、運河が多いのが特徴です。酒蔵を再利用したレストランがいくつもあり、食文化を活かしたまちづくりが魅力的なこの街もまた、名建築が数多く存在しています。建築家である円満字洋介氏の著書『京都・大阪・神戸 名建築さんぽマップ 増補改訂版』(エクスナレッジ)より、伏見でぜひ足を運びたい「名建築」を紹介します。

“酒の街”伏見の酒蔵を活用した「まちづくり」とは

伏見は古くから京都の外港だった。明治以降は鴨川運河をさかのぼって京都へ至り、岡崎のインクラインを使って琵琶湖へ抜けることができた。伏見は運河が多く残っているのが特徴だ。夏場には観光用の三十石船も出ていて水路めぐりも楽しい。水路が迷路のように入り組んでいるのは、ここが城下町であったことのなごりなのかも知れない。日本の都市は港町タイプが多いが、伏見を歩いていると都市の構造が水運中心に決められているように見える。また、伏見には酒蔵を再利用したレストランがいくつもある。食文化を活かしたまちづくりもおもしろい。

01.幸せなジョブチェンジ「三栖閘門(みすこうもん)」

京阪中書島駅から伏見港公園の西向こう宇治川手前の三栖閘門は、ふたつの水門を使って、濠川と宇治川との水位を調整する仕組みになっていた。今は宇治川の水位が低すぎるので使えるようには見えないが、宇治川の堤防を造るときに伏見港への出入り口として設置されたそうだ。現在この水門は、観光用の伏見三十石船の折返点として再利用されている。水門が再び開くことはないのかも知れないが、幸せなジョブチェンジだと思う。

02.優美なレンガ建築「モリタ製作所」

肥後橋を渡った北側はモリタ製作所だが、これほど優美なレンガ建築が残っていること自体が驚きである。これは幻の電力会社、京都電力の火力発電所だったが、送電直前に京都電灯に買収され、以後、京都電灯の発電所として使われていた。2棟あってそれぞれデザインが違うので建築時期が違うかも知れない。正門から見える東棟は妻壁をギザギザと飾って、まるでオランダの運河沿いにある商館のようなたたずまいである。

03.昭和初期へのタイムトリップ「新地湯」

京阪中書島駅北の新地湯は、地元に愛されている銭湯である。とても愛らしい外観で、左右のアーチ窓にステンドグラスも残る。正面上部のアーチに温泉の文字があり、その上に照明の付いていた跡がおわかりだろうか。夕暮れ時、ここにポワッと明かりがともると、そこだけ宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に出て来るような幻想的な光景となる。

04.丁寧につくられた地域の会館「南浜会館」

壕川の支流を渡り、川沿いに京阪をくぐれば南浜会館が現れる。木造校舎のようないでたちで、下見板張りの壁面がよい趣きを残す。西側玄関の庇がよくできているので必見だ。妻側の縦長の屋根裏換気口も丁寧に作られている。妻側の軒下を覗きこむと母も屋や(屋根の骨組み)が壁から突き出ていて、それが屋根勾配と同じ向きに傾いているのがおわかりだろうか。これは屋根の骨組みがトラスであることを示している。トラスとは鉄橋のような構造のことで、木造小学校でよく使われた。

05.こだわりの復元「平戸樋門」

外環状線をくぐり、宇治川の堤防にのぼる。教えられるまで復元だと気づかなかった。鉄の扉の上部が湾曲しているデザインがかっこいい。城門を意識しているように見える。洪水を避けるために伏見港と宇治川とを切り離す堤防工事に着手したのが1922年だった。平戸樋門完成が1926年、三栖閘門完成が1929年、堤防の全部が完成したのが1931年である。上流から順に造っていったわけだ。樋門と閘門が洋風なのは琵琶湖疏水のイメージを踏襲しているからだろう。

清酒の聖地から飲食店まで……魅力あふれる「酒蔵」が立ち並ぶ

06.伏見の美風景「月桂冠大倉記念館」

濠川の支流右岸を引き返し、橋までもどる。ここからは、酒蔵活用のまちづくりを見てまわろう。最初の月桂冠大倉記念館は水路側からも見ておきたい。水路に面して酒蔵の並ぶ様子は美しく、もともと水運を利用した施設であることがわかる。月桂冠は江戸時代の創業だが、明治になって鉄道用のビン入り清酒を売り出したことで有名になった。いわゆる鉄道効果によって伏見は清酒の産地として急成長をとげたようだ。

07.酒蔵の骨組みが美しい「鳥せい本店」

少し北へ歩くと、地元でも人気の高い焼き鳥レストラン鳥せい本店だ。元は山本本家「神聖」の酒蔵で、酒蔵の骨組みをそのまま見せたインテリアデザインが楽しい。ランチタイムも営業している。

08.食文化を活かしたまちづくり「キザクラカッパカントリー」

鳥せい本店の西、キザクラカッパカントリーは、酒屋による地ビールレストランとして有名で、河童資料館も併設されている。伏見は明治以降に産地形成が進んだことで、酒蔵などの歴史資産が多く残っている。そのなかで、もっとも大きな歴史資産は清酒を中心とした食文化だと思う。食文化を活かしたまちづくりというのがおもしろい。そこへ古い建物が関わるとなればたいへんうれしい。

09.今はなき伏見市の市章レリーフ「壕川護岸の伏見市章」

キザクラカッパカントリーから少し南、壕川護岸の伏見市章は護岸工事の際に付けられた。護岸は蓬莱橋のたもとの「御大典記念埋立工事竣工記念碑」によって、1930年に竣工したことが分かる。1889年に発足した伏見町は1929年に市となったが、2年後の1931年に京都市に編入され伏見区となった(伏見市章は伏見町章をそのまま使った)。市章は葉っぱとつる草で飾られている。整備工事によって地域が伸び行くことを願ったのであろう。

10.伏見の美風景その2「松本酒造」

大手筋を西へ、新高瀬川手前の松本酒造の煙突は、京都に残るレンガ煙突のなかでも大きいもののひとつである。黒い酒蔵と赤いレンガ煙突との取り合わせが美しく、後ろのレンガ建物は大きな丸窓が見せ場を作っている。レンガは本当に自由自在だ。

11.らしくなさが興味深い「昭和蔵事務棟」

大手筋を東へ戻り、竹田街道を北へ向かう左手の昭和蔵事務棟は、3階を増築しているので、知らないと通りすぎてしまうかも知れない。軒廻りの大胆な丸型飾りがウイーン分離派のオットー・ワグナーを思わせ、2階正面の窓と窓の間の模様はコロマン・モーザーのポスターデザインに似ている。いずれも世紀末ウイーン分離派だけど、それがなぜここに現われるのか。なかなか興味深い建物だ。

円満字 洋介 建築家

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