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「糖質制限」中は要注意!〈唐揚げ〉〈ドレッシング〉〈脂身〉を避けると、逆に太りやすくなる“意外なワケ”【肝臓外科医が助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月29日 11時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の国民病とも言われる「糖尿病」。予防するために重要なのは「脂肪を落とすこと」だと、肝臓外科医の尾形哲氏は言います。尾形氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』(KADOKAWA)より、糖尿病の予備軍である「境界型糖尿病」に加え、「脂肪肝」と診断された広人さん(仮名)の事例を通して、健康的に減量する方法について見ていきましょう。

食事制限しても体重減少が停滞する時期に突入…

【登場人物】 ・前田 広人(会社員)……20代から10kg以上太ってしまった30代の会社員。健康診断により「肝機能」と「糖代謝」で要精密検査となり、スマート外来へ。スポーツドリンクの大量摂取が一因となり、「境界型糖尿病」と「脂肪肝炎」との診断が下される。  

・前田 美希(主婦)……広人の妻。妊娠5ヵ月。  

・尾形 哲(医師)……肥満・脂肪肝専門外来「スマート外来」担当医。外来患者の8割以上を3ヵ月で5kg減、脂肪肝改善に導くメソッドを確立する。

3回目の受診に向かう朝、妻から手渡された食事の記録表を見ている。

9月14日の夕食は、めかじきソテーのトマトソースがけ、ブロッコリーサラダ、かぶのポタージュ、ご飯70g。

9月15日の夕食は、アスパラガス入りとりつくね、きゅうりとたこの酢の物、しいたけとわかめのみそ汁、ご飯70g。

9月16日の夕食は、接待で外食。瓶ビール2分の1本、刺し身盛り合わせ、焼きとり、シーザーサラダ、だし巻き卵、もろきゅう。追記、みんなは焼きそばを食べていたが我慢した。

9月17日の夕食は、とり肉ポトフ、トマトとアボカドのサラダ、雑穀ご飯70g。

9月18日の夕食は、豚肉のザーサイ炒め、たことセロリの和え物、しいたけと長ねぎのスープ、ご飯70g。

9月19日の夕食は、残業で遅くなる。会社にてサラダチキン、おにぎり1個。夜食に卵入りの野菜スープ。

9月20日の夕食は、なす入り麻婆豆腐、大根とわかめのサラダ、チンゲン菜としいたけのスープ、ご飯70g。以下、続く。

朝食は目玉焼きかレンチンで作る温泉卵、納豆、豆腐と具を2品入れたみそ汁、ご飯70gの和食バージョンと、目玉焼き、チーズトースト、サラダか野菜スープの洋食バージョンを、ローテーションした感じだ。

よくもまあこんなにメニューを思いつくものだ。妻は自分の体のこともあるのに、よくやってくれている。なかなか言葉にしてお礼を伝えられないが、ありがたい。

僕のほうはと言うと、筋トレを始めた。やっぱり体を動かすと気分もいい。ただ、体を動かしても体重があまり変わらなくなっているのも事実だ。妻の努力をムダにしたくないのだが……。今日、先生に相談しようと思う。

糖質制限時の外食のメニュー選びのポイント

「こんにちは。だいぶ秋めいてきましたね。今日は、広人さんお1人ですね」

「はい。妻からは先生のご指導で献立を考えやすくなったとお礼を伝えて欲しいと言付かってきました」

「それはよかったです。食事の記録を見せてもらって、糖質は控えつつ、野菜とタンパク質をしっかり摂れるメニューを工夫されていることがよくわかります。これは、広人さんも頼りになっているのではありませんか?」

僕は、深くうなずいた。

「では、血液検査の結果から確認しましょうか。空腹時血糖96。ヘモグロビンA1c5.5、AST19、ALT45、γ-GTP32。血糖値もヘモグロビンA1cも基準値内になりましたよ。順調です。体重は……83kg。これも目標達成です。努力されましたね」

「やっとメニューの選び方がわかってきて……。付き合いで食事に行くときも、糖質が少なそうなメニューを選んでいます。居酒屋ってメニューが多いので、意外と困らないんですね。唐揚げとポテトフライ、焼きそばの誘惑に負けなければ……。ロース肉も脂身は残したり、サラダのドレッシングもかけないようにしたりして。新鮮な野菜とそうでない野菜の味の違いに気づけるようになってきました」

「体にいい食事を続けていると、食材の味がしっかりわかるようになるんです。すばらしい成長ですね。ただ、唐揚げやドレッシング、脂身を完全に避ける必要はありませんよ

「え、だってカロリーが高いから太るかと思って……。父親が、カロリーの高さから、肉をあまり食べられないような話をしていたのですが」

私からはカロリーを気にしてくださいとは伝えていなかったはずです。糖質を控える食事に切り替えながら、脂・油・肉まで減らしてしまうと筋肉量が低下してしまいます。それでは、かえって太りやすい体になってしまいます。さあ、原点回帰です。広人さんが減らすべきは糖質です。つまり、砂糖、白米、小麦です」

確かに先生からカロリーというワードが出てきたことはない。では、父親が言っていたことは間違っていたのか?

すると、先生が説明をしてくれた。

「糖尿病と脂肪肝の改善効果が認められている食事法には、『カロリー制限食』と『糖質制限食』があります。カロリー制限食は身長や1日の活動量から摂取カロリーが決められ、炭水化物、タンパク質、脂質の摂取バランスが厳格に決められています。

対して、糖質制限食は基本的にカロリーを気にすることなく、糖質量のみを控えます。個人差は考慮せずに、1食あたりで摂取できる糖質量が決められています。今、広人さんが取り組んでいる食事です。糖質を半分に減らすと、毎回計算しなくてもトータルの摂取カロリーが減少することが、多くの研究で示されているのです。

ご飯を減らせば、肉や魚を無制限に食べていいわけではありません。ただ、体重を見ながら糖質を減らして野菜を増やす。それでも体重が減らない場合は、肉や魚も減らすという方針のほうが、毎食カロリー計算をするより、続けやすいですよ」

「唐揚げは食べてよかったんですね!」

「ぜひ、野菜を先に食べた後にどうぞ。運動も始められたようなので、とり肉は貴重なタンパク源ですよ」

<先生からの処方箋>

脂・油・肉を減らすと筋肉量が低下し、太りやすい体になります。

体重が停滞したら「食事量」で調整

「ほかに、広人さんのほうで気がついた体の変化はありますか?」

「運動をするようになったからか、就寝時間が少し早くなりました。これまで仕事で遅かったこともあるのですが、夜テレビを見たり、スマホでネットサーフィンをしたりとベッドに入るのは深夜になることが多かったんです。でも、最近、10時を過ぎると眠気に襲われます。妻が『妊娠中は眠いのよ……』と言って、僕以上に早めに寝てしまうせいもあるかもしれません。ただ、逆に朝の目覚めはいいので、朝早めに出勤して仕事を済ませ、帰宅時間を早めにしています」

「体は素直ですね。私も朝型人間で5時には目覚めます。でも理由は簡単。夜、寝る時間が子ども並みに早いですから」

「ただ、体重がなかなか落ちなくなってきていて。ここ数日は、数字にあまり変化がありません。逆に微増する日もあったりで……」

「糖質を減らすと、同時に体から水分も失われるので、最初の1~2ヵ月は体重の減少が急速に起こるのです。この時期が過ぎると、水分が戻ってきて体重が落ちにくくなります。

もう1つの理由としては、少ないエネルギー量に体が慣れてきた可能性もあります。人はガソリンが減ってくると、少ないエネルギーで生きることができるように、燃費がよくなるのです。この停滞期の対策が、筋肉量の増加です。体組成計の測定結果を見ると、広人さんは、筋肉量が増えて、脂肪量が減っていて体重の変化がないだけです。この調子でOKです。体重も、このまま続けていけば落ちていきます」

「わかりました。ただ、あと1ヵ月と思うと焦りもあって……」

「アドバイスをするなら、減量が停滞していると感じたら順番を変えてみてはいかがでしょう。食べる量を減らしているのに体重が減らないなら、体重が減る量までしか食べないようにしたり、体重が減るまで運動をしたりというように。ここまで、とてもがんばっています。自分の体を信じてあげてください」

<先生からの処方箋>

体重が落ちなくても焦る必要はありません。飢餓下で生き延びるための正常な反応です。

10㎏の減量に成功!境界型糖尿病からの離脱

緊張していた。右手と右足が同時に出そうなぎこちなさで、診察室に入った。

「広人さん、こんにちは」

先生はいつもの口調で挨拶をしてくれた。

「よろしくお願いします」

先生は僕が提出した体重記録表と食事記録、今日の血液検査の結果表にじっくり目を通していた。その沈黙に僕の緊張は増すばかりだった。

「おめでとうございます」

先生の右手が僕の前に差し出された。思わず、僕も手を出し握手をした。

「まずは血液検査の結果から。空腹時血糖87。ヘモグロビンA1c5.2、AST19、ALT23、γ-GTP29。体重80kg。体脂肪率21%。血糖値、肝機能の数値ともに基準値内になりました。今の広人さんは、もう境界型糖尿病ではありません。スマート外来もめでたく卒業です。よくがんばりましたね」

言いたいことはたくさんあったのに、言葉が出なかった。

「……あ、ありがとう……ございます」

「完走を終えての感想はありますか?」

「たすき、重かったです。途中で何度も外したくなりました。でも、そのたびに妻に励まされました。父からは自分が糖尿病だから、体質が似てしまったんだろうと謝られてしまって……。それもつらかったです。だから、絶対に治りたいと思って」

先生は静かにうなずいていた。そして、言った。

「3ヵ月の挑戦でしたが、広人さんの人生はここでゴールではありません。気を抜けば、3ヵ月前の体にすぐ戻ります。そうなりたいか、もう一段上の健康を目指すかは広人さん次第です。明日の体は、今日食べたもので変わります。念のため、3ヵ月後に経過を確認させてください。お待ちしています」

「本当にありがとうございました」

病院を出て、妻のスマホにメッセージを送った。

「血糖値も脂肪肝も改善! 美希ありがとう。今度は僕が支える番だ」

<先生からの処方箋>

肥満には百人百様の理由がある。口には出せない苦労を乗り越えた汗を讃えたい。

尾形哲 長野県佐久市立国保浅間総合病院 外科部長/「スマート外来」担当医

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