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2人とも元国家公務員で〈年金40万円と退職金4,000万円〉の70代“最強安泰”夫婦だったが…「もう少し贅沢したい」人生最後の背伸びでジリ貧老後へ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月5日 11時45分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

安定のイメージが強い公務員。なかでも国家公務員は、年金額や退職金額も高いケースも多く、ひと昔前までは「絶対安泰」といったイメージも。しかし現在では、定年後に生活苦となる人も少なくないようです。豊富な老後資金があっても、生活苦に陥る原因とは……。本記事では、塚田さん(仮名)の事例とともに老後資金を活用した投資トラブルについて、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

夫婦ともに国家公務員だった最強の安泰夫婦

塚田奈津子さん(仮名/76歳)。夫の紘一(仮名)さんと20代で職場結婚し、夫婦ともに国家公務員としてのキャリアを歩んできました。

収入は一般の会社員と比べて大きく変わらないものの、国家公務員の共済年金を受け取り、夫婦揃って退職金は2,000万円を受け取ることができ、公的年金は夫婦合計で40万円。まさにゆとりの老後を送っていました。

老後のマネープランに綻びが生じたワケ

塚田さんはある日、実家の両親から相続した土地にアパート建設を勧められます。

実家の両親は地方に土地を保有しており、生前は畑仕事をしていましたが、両親が畑仕事ができなくなってからは塚田さんが地元に戻った際に草刈りをするなど手入れをしていました。

地元に帰ってきて、いつもどおり土地の草刈りをしていたとき、不動産業者の営業マンからアパート建設の話を持ち掛けられたのでした。

塚田さんは、その当時、2015年より相続税の制度が変わり、相続税の課税対象になる人が増えるという話を営業マンから聞きます。そして、営業マンは塚田さんの土地の価格を調べ、「このままでは相続税が発生してしまう可能性が高い」と畳みかけ、塚田さんは不安になったのです。

さらに、営業マンは相続税について税理士を招いてセミナーを行うので参加してはと勧めます。塚田さんはそこで相続税の説明を聴くことにしました。

家賃収入で年金の足しに…

セミナーに参加した税理士は相続の税制改正について話し、空き地になっている土地にアパートを建設すると相続税の評価額が下がるため有効であるという話をしました。

アパート経営などしたことがなかった塚田さんでしたが、税理士の話と、家賃収入がこれからの年金の足しにできればもう少し豊かな生活を送ることもできるのではと考え、アパートの建設を決めたのでした。

建設コストは約8,000万円、そのうち2,000万円を自己資金から支払い、6,000万円を借入れました。当初は建設コストに対して年利6%程度が見込まれていました。

――しかし、それから年数が経つと、塚田さんにとって予想外のことが……。

「話が違う…」不動産会社のルール

5年ほど経過したころ、ところどころに外壁の塗装の剥がれが見られるようになりました。建設会社との契約ではそういった建物の劣化などにつき、定期的な修繕が義務付けられており、「指定の業者に依頼すること」といった内容が記載され、約500万円の修繕費を支払うことになったのです。

また当初、営業マンの説明では空室があっても家賃は保証され、塚田さんは特にアパートの管理を自分でしなくてもよいということで安心して契約していたのですが、2年ごとに契約が更新となり、更新の度に毎月の家賃が引き下げられてしまっていたため、収益を生まないどころか返済を差し引くと収支がマイナスする物件へと変わってしまったのでした。

そして、具体的にどの程度の収支になっているのか、実績を把握せずに経営を続けてしまっており、家賃収入は入るものの大きな支出が発生するたびに手元の預金が大きく減ってしまいました。また、今後も家賃の引下げや大規模な修繕費が必要な状況が予想され、じりじりと収支がマイナスになっていくのです。

悪徳業者に付け込まれないために…税金に関する知識武装の必要性

塚田さんのケースの最大の問題は、長期的にどの程度の利益、収支になるのかしっかりシミュレーションを行わず、また契約内容をよく理解しないまま契約してしまったことにあります。不動産投資で利益を得るにはしっかり学び、戦略的に活用することが重要ですが、業者のいわれるがままで理解せずに契約してしまうとこのようなことに繋がってしまいます。

また、そもそも塚田さんが心配した土地は農地ですので、相続税評価額はさほど大きくはならず、預金資産も生命保険を活用したり、孫への教育資金の贈与などの制度を活用することで減らすことができるため、わざわざ不動産で土地価格を下げる必要などありませんでした。

そもそも必要がなかった節税対策のために初めから収益化が難しいと想定される不動産投資を行ってしまい、その結果老後の生活には十分と思われる預金を使い果たす結果に。老後の資金の運用手段として、不動産投資もひとつの選択肢ではありますが、自身の資産と知識、そしてそのほかの選択肢も知ったうえで行うことが必要です。

安泰神話が崩れた公務員…老後破産は誰にとっても他人事ではない

今回はさほど心配する必要のない相続税をきっかけに、ゆとりの老後を送ることができたはずが預金を使い果たしてしまった塚田さんの事例をご紹介しました。ゆとりがあると思われる老後も、こういった誤った判断がきっかけに塚田さんのような状態になってしまうこともあります。

また、令和5年退職公務員生活状況調査報告書によると、余裕があると思われる公務員でも40%が毎月のやりくりに苦労しているという調査結果があります。退職金、公的年金に恵まれた余裕があると思われる公務員でも半数近くが老後の資金のやり繰りに不安を抱えているのです。

そのため、しっかり現役のころから資産形成を行う必要があり、また塚田さんのように退職金で不適切な運用をしてしまわないように知識を身につけ、しっかり責任を持って自分で判断したり、わからないものはそのまま契約せずに専門家に相談したうえで決めることが大事です。

小川 洋平

FP相談ネット

FP

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