会社員の平均手取り「月28万円」…老後も「年金だけでは到底足りない」という現実
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月30日 9時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められていますか? 厚生労働省年金局発表『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』などをもとに解説していきます。
「ゆるやかに低下する見通し」国が示した深い絶望
銀行に預けても増えないお金、かさむばかりの教育費、寿命が伸びるなかで膨れあがる老後生活費、その一方で減額続きの年金、増えることのない給料、どんどん高くなる税金と社会保険料……どん詰まり連鎖の日本社会。
老後不安が増すなか、厚生労働省のパンフレット『公的年金って将来も十分な給付ができるの?』(令和3年改訂版)を見れば、年金について、追い打ちをかけるような一文が目に入ります。
“少子高齢化の進む中で、長期定期には給付水準はゆるやかに低下する見通しです。”
“現役世代の手取り収入のおよそ5割の年金を受給できる見通しです。”
では現在、現役世代の手取り収入はいくらなのでしょうか。国税庁『民間給与実態統計調査』(令和4年分)によると、1年を通じて勤務した給与所得者は5,078万人で、平均給与は458万円。正規社員523万円、非正規社員201万円となっています。
平均給与458万円、月換算で38万円ほど。人によって異なりますが、手取りでは28万円ほど。年金は「手取り収入のおよそ5割」ですから、約14万円が給付水準と考えられます。
実際の年金受給額は?…支出を見れば「到底足りない」
実際、年金受給額の平均値はいくらほどなのでしょうか。厚生労働省年金局発表『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』より現在の受給状況を見ていくと、公的年金被保険者数は、令和4年度末現在で6,744万人で、前年度末と比べ26万人減少しています。
厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、老齢年金が14万4,982円です。一方、国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、5万6,000円となっています。
収入もさることながら、月々の支出も気になるところ。厚生労働省『年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年』によると、支出額(月額)の中央値は18.3万円となっています。65歳以上は年齢が高いほど平均支出額は低くなっていますが、それでもなお年金月「14万円」だけの生活は厳しいものになるでしょう。
「現実はそんなに甘くなかった」55歳男性の悲鳴
現在、年金を受け取れるのは原則65歳からですが、繰上げ受給(=受給を早めること)と繰下げ受給(=受給を遅らせること)に関する論議も活発になっています。年金受給予定の現役世代にとっては「年金だけでは老後の生活費が賄えないから、足りない分は働いたり、投資で増やしたりしてください」と言われているように感じられるかもしれません。
55歳の吉田さん(男性・既婚/仮名)も、老後不安に悩む現役世代の一人。現在貯金は2,200万円、投資信託を主とした金融資産を500万円ほど所有しています。住宅ローンはあと5年で完済予定です。
「金融資産500万円は親から受け継いだものです。私自身、あまり現金に換算する気はなく、我が子に遺そうと思っています。貯金は2,200万円ありますが、正直老後は心配でなりません」
「自営業ですから、年金に関してはあまり期待していないというか、諦めている節があります。妻も長い間専業主婦をしていましたし。その分、貯蓄は若いころから意識的に行っていたのですが……」
「『老後2,000万円問題』が話題になったとき、絶望しました。2,000万円は最低限、ゆとりある生活には『3,000万円』必要だと。長かった道のりに目途がついたと思っていたのに、現実はそんなに甘くなかった」
「子どもは今24歳です。もう家を出ていて、日々の暮らしには困っていないようですが、何かあったら援助はしたいし、結婚資金だって渡したいんです。でも、我が子にお金あげた結果自分たちが困窮して、子どもに迷惑をかける……なんて事態になってしまったら、元も子もないですよね」
このまま老後を迎えて大丈夫なのか?国の対策は?
厚労省は対策の一つとして「高齢者や女性が働きやすい社会をつくり、経済を活性化させる」と述べています。
“2019年に行った財政検証では、女性や高齢者の労働市場への参加が進み、日本経済が成長していけば、将来のモデル世帯の所得代替率はおよそ50%という結果になっています。
女性や高齢者が安心して働ける社会にしながら、日本経済をより良くしていくことが、将年金の将来の水準を確保することにもつながります。”
「70歳を過ぎてもなお働き…」“自助努力”の方法
2021年4月1日より改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの定年引上げを努力義務にする制度が新設されました。しかしあくまで「努力義務」の枠は出ていないため、実際の雇用の実態は芳しいものではありません。労働者としても「70歳を過ぎてもなお働き続けなければいけないのか…」と暗い気持ちになってしまうものです。
「日本経済が成長していけば」という、願望にも似た予測。国民に自助努力が求められていることは、悲しい事実といえましょう。
資産形成の手段として投資にも注目が集まっていますが、「いきなり大儲けする可能性がある投資」(FXやデイトレ等)はもちろんそれなりのリスクがありますし、「長い時間をかけて行う投資」(新NISAや不動産投資等)は、大きな期待をしすぎると、「全然増えないんだけど!?」という事態にもなりかねません。
自身の老後の安心のためにも、「適切なお金の知識」を蓄えることが、第一に求められています。
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