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新入生4人だけ…江差高等看護学院の新学期 「パワハラ問題」以外にも「存続の危機」の課題

HTB北海道ニュース / 2024年4月29日 19時9分

(c)HTB

先週金曜日、江差高等看護学院で行われていた生物の授業。

自らメスを握って鳥の心臓を解剖しているのは、今月入学したばかりの1年生です。

■教師:

「切れなかった?あの~逆です。メス。それは切れません。」

実験を取り入れるなど工夫を凝らした授業ですが、教室にいた学生はわずか4人。

今年、学校に入学したのは彼女たちだけでした。

看護師を育てる3年制の江差高等看護学院。

1学年の定員は40人で本来であれば学校には3学年合わせて120人の学生がいます。

しかし、いまは20人にも達していません。

■江差高等看護学院・夕下司学院長:

「当学院の入学者ですけれども、2年前が8名で昨年が6名で今年が4名と減少してきております。」

看護教育では、複数グループに分かれた実習形式の授業も重要で、道は、教育の質を確保するためには最低でも1学年12人の学生が必要だとしています。

しかし、江差高等看護学院はそれを大幅に下回っています。

■夕下司学院長:

「学生数が少ないことで逆に丁寧に指導が行えるというメリットがありますけれども、一方で、やはり実習形式の講義をするというのが非常に難しいという課題がありますので、そこは学年を超えた学生間の交流という形で進めていきたいと考えています。」

原因の1つは、3年前に問題になった教師による学生へのパワーハラスメントです。

学校は問題の反省から運営体制を一新し、ハラスメント対策を行うなど取り組みを進めてきました。その成果もあって、学校の環境は改善。学生たちも学びやすい環境になっています。

■亡くなった学生の母親:

「うちの子は江差の学校に殺されたんだという思いが強くなって…。」

しかし、2019年に男子学生が自殺した問題はまだ解決していません。

第三者調査委員会はパワハラを認定し、学校の学習環境と自殺との相当因果関係を認める結論を出しましたが、道は自殺に対する賠償には応じない考えを示しています。

■鈴木知事会見(去年11月):

「誠意を持って対応させていただきたい」

■道議会予算特別委員会(去年12月):

「丁寧かつ誠意を持って対応させていただきたい」

■知事会見(今月5日):

「誠意を持って対応していきたい」

■亡くなった学生の母親:「誠意なんかないですよ、一切。逆に踏みにじられているとしか、言いようがないじゃないですか。」

学生の保護者らで作る父母の会も、学校が変わる中、道が足を引っ張っていると訴えています。

■父母の会(去年12月):

「現場はものすごく改善されて、学院内もものすごく変わっているんです。ですので、やはり現場は改善しているのに知事の対応があまりにもちょっとお粗末ではないかと思っています。」

ただ、入学者数の減少は、ここにに限ったことではありません。

いま、学生の大学志向、都会志向が強まり看護学校の定員割れが相次いでいます。

■北海道看護教育施設協議会・金子明会長「大学はやはり人気が高い。大学は大きな都市に集中しています。なので、専門学校と大学を比べると、専門学校の方が地方に多くあるので立地としてはやはりなかなか難しいということがあります。」

HTBが道内の看護学校と看護系大学47校の入学者数を調べたところ、看護系大学は定員に達しているところが多い一方で、看護学校はおよそ8割に当たる27校で定員に達していないことが分かりました。

看護師を目指す子どもたちも減っています。

小学生のなりたい職業ランキングで2019年に1位だった看護師。

しかし、去年は8位でした。

■金子明会長:

「非常に勤務がコロナの影響で激務だということで何か悪い面だけが広がってしまったようなそういった印象は持っています。」

この春、苫小牧市と伊達市にあった2つの看護学校が閉校しました。

入学者数の減少などが理由です。

地域医療の担い手を育てる看護学校。

看護師不足が深刻な地方こそ重要にもかかわらず、地方で厳しい状況に立たされています。

■金子明会長:

「看護の役割というのは人々の健康を守るそういった役割があります。そのためにも、やはり看護学校、看護大学も含めて、役割というのはますます重要になってくると考えています。」

地域医療の担い手を育てる、これは江差高等看護学院も同じです。

道南の八雲町出身の渡部真緒さん。

将来、地元で看護師として地域医療を支えていきたいと考えて、江差高等看護学院を選びました。

■渡部さん:

「地域に根付いた病院での実習や過疎地域ならではの実際の医療を学ぶことが地元で看護師として働いた時に役に立つ、看護師として働く時の基盤になると考えてこの学院を選びました。」

パワハラ問題以降、地域との関わりを増やし、学生がボランティア活動に参加したり、対岸の奥尻町で実習をしたりするなど地域ならではの魅力あるカリキュラム作りに取り組んでいます。

■渡部さん:

「人の命を預かる看護師になるという意味ではしっかり勉強することが私の義務なのかなと思っているので大変ですけれど頑張ろうという気持ちで今はやっています」学生を確保するため、学校も試行錯誤しています。

去年初めて地域住民を対象としたオープンキャンパスを開催したほか、入試制度の変更や高校でのPR活動などを行っています。

それでも今年の入学者数は過去最低の4人に…これには地域特有の厳しい現実があります。

江差高等看護学院の地元、江差町の人口はおよそ6700人。

0歳から14歳の人口は、看護学院ができた1998年ごろには1500人を超えていましたが、いまは500人ほどです。

■夕下司学院長:

「看護職員が充足していない地域で必要とされる看護職員を各地域に送り出していく役割を担っていると考えてますので、我々としてはこの地域にこの看護学校は必要だと考えております。」

1人でも多く。

…北海道、そして地域に根ざす看護師を養成する看護学校。

現場ではその存在意義をかけた試行錯誤が続いています。

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