麻しん(はしか)の流行に備えるために(前編)
Japan In-depth / 2024年3月28日 12時7分
また、2つ目の理由、診断がつけられない可能性に関しては、多くの医療者が麻しんを診断した経験がないことが理由にあります。流行の時期に臨床医を経験していた医師なら、麻しんの診断は決して難しいことではありません。しかし、麻しん患者の診療経験がない若手医師には難しいことは間違いがありません。
3.流行は生じうるのか?
2016年に生じた麻しんの流行では、MRICで記事を掲載していただきました。
この時には、空港を起点として感染拡大が生じました。
Vol.204 麻しん(はしか)対策:妊婦さんにも、子どもにも感染させない!( http://medg.jp/mt/?p=7001 )
この時と全く同じような状況が、また再現されてしまう懸念があるのです。
世界では中央アジアを含む欧州地域等での流行が見られ、米国CDC(Center for Disease Control)では、現在の状況を「世界的麻しんのアウトブレイク(Global Measles Outbreaks)」であると警告を発しています。
Global Measles Outbreaks
つまり、世界各地で麻しん患者が発生しているため、麻しん感染した人たちが国内に麻しんウイルスを持ち込んで来る可能性があるのです。実際に、2024年3月11日時点までに日本で確認された患者11人のうち8人までが、関西国際空港に到着した国際線の乗客でした。
はしかの感染拡大懸念 海外で流行、国内患者は11人―専門家「ワクチン接種が重要」
もし、麻しんウイルスが海外から持ち込まれたとしたら。そして、上で述べたように医療機関でウイルスが拡散されてしまったとしたら。十分に懸念される事態なのです。
4.予防にはワクチンが決め手!
麻しんには有効な治療薬がなく、ただただ、重症化しないように、サポート療法を行う以外にありません。医療施設に入院した成人の麻しん患者さんの親族からは、「本当に大丈夫か?命に関わるのではないか?」と再三質問される医師がいたほど重症感が強いです。
しかし、予防策に関しては、ワクチンという最強の武器があります。麻しんワクチン(現在流通しているのは麻しん風疹(MR)ワクチンのみです)は、一回接種するだけで約95%の人に免疫が付きます。約5%の人に免疫獲得漏れが生ずるため、2回接種するのが世界標準になっています。一方、自然感染してしまえば終生免疫が付きます。つまり二度と麻しんにはかからないのです。しかし、その代わりに、重い症状に苦しみ(特に成人は重症感が強いです)、さらには周囲にウイルスを播種してしまうことにもなります。
もし、「お前は、過去にはしかにかかっているから、心配ない。」と親に言われたとしても、信用しないことです。それは、水痘(みずぼうそう)に感染したエピソードを、麻しんに感染したと勘違いしているケースが時たまあるからです。
「水ぶくれがたくさんできて、最後に黒いかさぶたになった。」という話であれば、まちがいなく水痘感染です。麻しん=発疹というイメージが強い人ほど、水痘の記憶とごちゃまぜになっているようです。
もし、麻しんワクチンを接種した覚えがない方がいたら、成人であっても積極的にワクチンを受けることをおすすめします。特に空港や交通機関関係で働く方はワクチン接種をおすすめします。
(後編につづく)
トップ写真:イメージ(本文と直接の関係はありません)出典:Singjai20/GettyImages
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