米国防総省、宇宙空間で民間と一体化した抑止戦略を発表(米国、日本)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月15日 1時0分
米国国防総省は4月2日、米国初となる、宇宙空間で民間企業と一体となって抑止力を強化する「商業宇宙統合戦略」を発表した。本戦略は、民間宇宙セクターの創意工夫を活用するために、国防総省全体で旧来の慣行を乗り越える努力に沿うものとし、弾力性を高め、抑止力を強化することができるとしている。
商業宇宙統合戦略は、国家防衛戦略に沿ったものであり、民間部門が宇宙ビジネスにおける革新と敏捷性を推進しているという認識に基づき策定された。
国防総省によれば、宇宙空間は米国の安全保障と繁栄に重要な役割を果たしており、国防総省の人員が任務を遂行するために、日々、宇宙ベースのサービスに依存している。米国の競争相手も、これを理解しているからこそ、対衛星兵器を開発してきた。近年、商業宇宙部門は、国家安全保障を支援する可能性を秘めた能力とサービスを開発しつつある。民間部門を統合することは、宇宙分野での国家安全保障の強靭(きょうじん)性を向上させるとともに、安全、安心、安定、持続可能な宇宙領域に貢献するとして、本戦略を策定したとしている。
このような動きは、国防総省が、打ち上げ、宇宙機能の構築、宇宙ネットワークの構築などを専門とする何百もの民間企業と、あらゆる分野で協力したいという明確な意思表示だとしている。
本統合戦略は、次の4点を優先事項として挙げている。
1. 必要なときに商業的なソリューションが利用できるよう、国防総省は契約やその他の協定を利用して要件の概要を説明する。
2. 国防総省が危機や紛争時に商業宇宙ソリューションを切れ目なく利用できるよう、計画、訓練、日々の運用を含め、平時から商業ソリューションの統合を達成する。
3. 国防総省は、宇宙および地上を含む、米国の国家安全保障上の宇宙利益を脅威から守る。国防総省は、規範と基準、脅威情報の共有、財政的保護の仕組みという3つの取り組みを通じて、商業的ソリューションの安全性を促進する。
4. 国防総省が「統合軍を支援する可能性のある」新しい商業宇宙ソリューションの開発を後押しするために、財政面や契約上、また政策的に利用可能な手段を最大限に活用することを強調している。
4月10日に行われた日米首脳会談(2024年4月11日記事参照)においても、両国の防衛・安全保障協力の強化と、宇宙における新たなフロンティアの開拓での協力強化が発表されている。具体的な事例として、日系宇宙開発企業のアストロスケールの米国子会社であるアストロスケールUSは、2023年9月に米宇宙軍と人工衛星に燃料補給を行う衛星の開発に関する契約を交わしており、同分野における日系企業の今後の活躍が期待される。
(谷本皓哉)
(米国、日本)
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