米国有権者の人工妊娠中絶権への支持率上昇、米シンクタンク調査(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月17日 0時10分
米国シンクタンクのピュー・リサーチ・センターは5月13日、米国における人工妊娠中絶に対する世論調査結果(注1)を発表した。
同調査結果によると、「人工妊娠中絶は全てあるいはほとんどのケースで合法であるべき」と回答した人は、民主党および民主党寄りの無党派層で85%、共和党および共和党寄りの無党派層で41%となった。2007年に実施された同様の調査では、民主党寄りの無党派層で63%、共和党および共和党寄りの無党派層で39%だった。2007年から2024年にかけて民主党および民主党寄りの無党派層で22ポイント、共和党および共和党寄りの無党派層でも2ポイント上昇した。
また同調査結果によると、2022年に「ロー対ウェイド判決」が破棄(注2)されて以降も、「人工妊娠中絶は全てあるいはほとんどのケースで合法であるべきだ」と回答する人の増加が確認されている。判決が破棄される前の2021年と比較して、2024年には63%と4ポイント上昇した。米主要メディアによると、判決が破棄されてから現在までに、14州で人工妊娠中絶がほぼ全面禁止されている(2024年4月12日記事参照、注3)。
11月の大統領選挙に向けて、ジョー・バイデン大統領(民主党)は、人工妊娠中絶を全面的に支持する姿勢を見せている。バイデン大統領は3月7日の一般教書演説でも、「もしも選択の権利を支持する議会を米国民が選んでくれるなら、『ロー対ウェイド判決』を再び米国の法律として復活させることを約束する」と述べている。
一方、ドナルド・トランプ前大統領(共和党)は3月19日、「15週目が合理的」との考えを述べ(2024年3月26日記事参照)、4月10日には、「11月の大統領選挙で再選されたとしても、全国的な禁止措置には署名しない」と述べている。同氏は4月8日に、人工妊娠中絶に関するSNSへの投稿で、「われわれ(共和党)は勝利しなければならない」と発言しており、米主要メディアは、トランプ氏は「ロー対ウェイド判決」の破棄がどれだけ2022年の中間選挙で共和党勝利の可能性を奪ったかを認識しており、全国的な禁止措置は再選の可能性を犠牲にすると考えている、と指摘している(政治専門紙「ポリティコ」4月8日)。
(注1)米国の成人8,709人を対象に、2024年4月8~14日に実施。
(注2)「ロー対ウェイド判決」は1973年に、女性の人工妊娠中絶権を全米で認めたものだったが、ドナルド・トランプ前政権下で破棄された(2022年6月27日記事参照)。
(注3)アリゾナ州ではその後、人工妊娠中絶の全面禁止法が廃止された(2024年5月7日記事参照)。
(吉田奈津絵)
(米国)
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