ヒットにつながった先駆者? 成功の原動力となった車3選
くるまのニュース / 2021年3月4日 16時10分
大ヒットしたクルマや普及した新技術には、必ずそのきっかけとなったモデルが存在します。そのクルマが成功したからこそ、後に続くモデルが誕生したといえるでしょう。そこで、成功の原動力となったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
■ある意味賭けだったかも!? 成功の礎になったクルマたち
歴代モデルが大ヒットを繰り返しているクルマや、普及した新技術など、どれも成功のきっかけになったクルマが存在します。
そのクルマの成功により、後に続いたといっても過言ではありません。
そうしたクルマはたくさんあるわけでなく、数多くあるモデルのなかでもひと握りです。
そこで、成功の原動力となったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「Be-1」
パイクカーシリーズの第1弾として見事成功を収めた「Be-1」
日産は1985年に開催された第26回東京モーターショーで、1台のネオクラシックな佇まいのコンセプトカーを出展。それが1987年に発売された、「Be-1」の原形となったモデルです。
Be-1という車名は「B-1案」だったデザイン案の呼び名から命名され、Be動詞になぞらえて、「あなたの1台になります」というメッセージも込められたといいます。
Be-1は初代「マーチ」のコンポーネンツを流用して開発されたモデルで、最大の特徴は内外装のデザインにありました。
外観は「ミニ」をオマージュしたような張りのある曲面を多用したスタイルで、クラシカルさとモダンなデザインの融合が斬新です。
内装も極めてシンプルながら安っぽい印象は無く、トレー状のインパネにはドライバーの正面に大型のスピードメーターを配置し、左に小ぶりなタコメーター、さらに空調の吹出口もすべて丸にすることで、ポップな印象となっています。
エンジンはマーチと同じ1リッター直列4気筒SOHC自然吸気を搭載。最高出力はわずか52馬力でしたが、700kgほどの車重には十分なパワーで、そもそも飛ばして乗るようなキャラクターのクルマではありませんでした。
Be-1は限定1万台で発売されると、台数を超える受注が殺到。購入者を抽選で決定する異例の事態となり、中古車市場では新車価格を上まわるプレミア価格で販売されるなど、社会現象にまで発展したほどです。
また、プロモーションもユニークで、東京都港区にグッズ販売をおこなうアンテナショップの「Be-1ショップ」を開店。まさに、景気が良い時代背景を反映していたといえます。
このBe-1の成功によって、1989年に「パオ」、1991年に「フィガロ」を発売し、同じく大ヒットを記録。この3台は後に「パイクカー」と呼ばれ、いまも高い人気を誇っています。
●三菱初代「パジェロ」
「ジープ」並の悪路走破性ながら普段使いも考慮した初代「パジェロ」
三菱は1956年に、軍用車から民生にスイッチした本格的なクロスカントリー4WD車である「ジープ」を発売。堅牢な車体とストロークが長い足まわりによって高い悪路走破性を誇り、プロの現場や豪雪地域の足、レジャー用として人気となります。
しかし、ジープは快適性とは無縁のクルマで乗り心地も悪く、普段使いにはハードなモデルでした。
そこで、三菱はジープに匹敵する悪路走破性を発揮しつつ、より乗用車に近い使い勝手の良いモデルとなる初代「パジェロ」を発売。
1982年に登場したパジェロは当初、メタルトップとキャンバストップの商用車登録のみのラインナップでしたが、1983年には乗用車登録のワゴンと3列シート車を追加するなどバリエーションを増やし、徐々に人気を高めていきました。
車体はクロスカントリー4WD車では定番の、頑丈なラダーフレームにボディを架装する構造で、搭載されたエンジンはさまざまなニーズに対応できるよう、2リッターのガソリンと2.3リッターのディーゼル、同ディーゼルターボを設定。
さらに使い勝手を向上させる4速ATの追加や、トップグレードのワゴンには3リッターV型6気筒エンジンを搭載することで、幅広いユーザー層に対応しています。
そして1991年には、悪路走破性はそのままに走行性能や快適性、安全性を向上させた2代目パジェロが登場。「RVブーム」はパジェロがけん引役となって、大ヒットを記録しました。
初代パジェロは2代目ほどの大ヒット作ではありませんでしたが、まさにヒットの下地をつくったクルマといえます。
■高出力と低回転域のトルクを両立した夢のようなエンジンが誕生!
●ホンダ2代目「インテグラ」
自然吸気エンジンながらリッター100馬力を達成した2代目「インテグラ」
ホンダは1973年に初代「シビック」を発売して以降、ユーザーの拡大を図るためにラインナップの拡充を進めました。
そうして誕生した1台が、1980年に発売された「クイント」です。
しかし、5ドアハッチバックのクイントは取り立てて優れた面は少なく、販売は低迷。この事態の打開を図るために、1985年に後継車の「クイントインテグラ」を発売し、見事にヒット作になります。
そして、1989年に初代からキープコンセプトとした2代目がデビュー。車名は「インテグラ」に改められました。
ボディタイプは3ドアハッチバッククーペと4ドアハッチバックをラインナップ。車格的には、シビックとアコードの中間に位置します。
このインテグラ最大のトピックスは、ホンダ初となる「VTEC」エンジンが搭載されたこと。VTECとは「Variable valve Timing and lift Electronic Control system」の略で、「電子制御式可変バルブタイミング・リフト」と訳され、バルブ開閉機構を可変制御するというものでした。
自然吸気エンジンで高出力化をおこなうには、高回転域でいかにトルクを発生させるかにかかってきますが、それに伴って低回転域のトルクを犠牲にすることになります。
しかし、VTECは可変バブル機構によって低回転域のトルクを犠牲にすることなく、高回転域でのトルクの向上を実現。1.6リッター直列4気筒DOHC VTECエンジンは、自然吸気ながら最高出力160馬力(MT車)と、リッターあたり100馬力を達成しました。
その後、高性能なVTECエンジンは「NSX」や「シビック」、そして「タイプRシリーズ」に搭載され、高性能自然吸気エンジンの代名詞でもありましたが、燃費性能の向上を目的としたエンジンにも採用されるなど、ホンダ製エンジンの定番技術となります。
また、他社も追従したことで、可変バルブタイミング機構はグローバルなスタンダードとなり、インテグラの成功なくしてなし得なかった偉業といえます。
※ ※ ※
最後に紹介したインテグラのVTECエンジンですが、初期のモデルは非常に繊細なエンジンでした。
とくに重要だったのがエンジンオイルの管理で、純正オイルを使って推奨される期間で交換しないと、最悪はカムシャフトのカム山のカジリや、焼き付く可能性もあったといいます。
自然吸気でリッター100馬力を実現するためには、それほどまでにギリギリの設計が必要だったのかもしれません。
現在は加工技術や表面処理技術、オイル性能の向上から、高性能なVTECエンジンでもそれほど気を使わなくなりましたが、いずれにしてもエンジンオイルは内燃機関にとって重要なことに変わりはありません。
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