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韓国ヒュンダイが日本で「年間販売ゼロ」記録も乗用車市場復帰をもくろむ訳

くるまのニュース / 2021年4月13日 7時10分

2009年に日本市場で乗用車販売から撤退した韓国ヒュンダイですが、それ以降も大型バスの販売は続けていました。しかし2020年度は1台も売れず、大型バス部門の日本撤退の噂もささやかれている状況です。そのような状況で、ヒュンダイは日本の乗用車市場への再参入に向けた動きを見せているといいます。いったいなぜなのでしょうか。

■コストパフォーマンスの高さで堅調だったヒュンダイの大型バス

 2021年現在、日本は世界でもっとも多くのブランドのクルマが買える国のひとつです。しかし、世界4位の自動車グループである韓国ヒュンダイのクルマは正規輸入されていません。

 正確にいえば、2009年までは正規輸入されていましたが、販売不振などを理由に撤退しています。

 複雑な歴史的背景のある日本と韓国は「近くて遠い国」といわれるほど、非常にデリケートな関係です。

 ヒュンダイの販売不振の背景にはそうした国民感情の問題もあると思われますが、それ以前にヒュンダイの作るクルマが「コストパフォーマンスに優れた量販車」であり、国産メーカーのクルマと立ち位置が似ていることが大きな原因です。

 海外市場では日本車と競合しているヒュンダイですが、日本では圧倒的に不利な立場であることはいうまでもありません。そのため、日本市場撤退は賢明な経営判断だったといえます。

 一方、大型バスを中心とした商用車部門は2009年以降も日本市場での販売を継続しています。

 輸入車ブランドの大型バスに関していえば、年間販売台数は数十台から数百台程度と、乗用車とは比べ物にならないほどです。

 しかし、乗用車に比べ、商用車はブランドイメージなどよりもコストパフォーマンスを重視する傾向が強く、その点でヒュンダイの大型バスは有利でした。

 ヒュンダイの主力大型バスである「ユニバース」は、世界戦略車として多くの地域で販売することで量産効果を発揮し、1台あたりのコストを下げることに成功しました。

 さらに、年々厳格化する環境規制にも対応するなど、技術力にも定評があるモデルです。加えて、日本市場では国産車と同程度のアフターサービス体制を構築するなど、徹底した戦略によって販売台数を拡大してきました。

 ユニバースによってヒュンダイは順調に販売台数を増やし、2016年にはインバウンド客の増加による観光バスの需要増を追い風に、ブランド全体で年間163台を販売しました。

 その後も安定して数十台の販売をしてきたヒュンダイですが、2020年度は1台も売れず、「ゼロ」となったことが、日本自動車輸入組合(JAIA)の発表で明らかになったのです。

 その背景に、世界的な新型コロナウイルスのまん延があることはいうまでもありません。多くの事業者が影響を受けるなかで、観光業、とくに海外からの観光客をメインターゲットにしていた事業者は大きな打撃を受けました。

 渡航制限によって海外からの観光客が文字通りゼロとなったことや、新型コロナウイルスの収束が見えないなかで、新規に大型バスを購入する顧客がいないことは、当然といえば当然です。

 日本国内でもワクチンの接種が開始するなど、収束に向けてゆるやかに前進しているように見える一方で、かつてのような日常生活が戻ってくる目処が立っているとはいえません。

 このような先行きが見えないなかで、事情の継続は難しく、ヒュンダイは商用車部門でも日本市場から撤退するのではないかという噂もささやかれています。

■日本の乗用車市場への再参入はあり得るか?

 一方、ヒュンダイには別の噂もあります。それは乗用車部門の日本市場復帰です。

 前述のとおり、日本市場からは2009年をもって撤退しているヒュンダイの乗用車部門ですが、その後は、コストパフォーマンスとデザインに優れたクルマを続々と発売し、グローバルでは大きく成長しています。

 一部の海外市場では、日本車と同等以上の売れ行きを見せていることからも、かつてのヒュンダイ車と比べて、品質は大きく向上しているといえます。

 そんなヒュンダイにとって、世界の主要市場のひとつである日本において、売れ行きが悪いどころか販売すらできていないことについて、忸怩(じくじ)たる思いをもっていることでしょう。

 真のグローバルメーカーになるために、日本市場復帰はヒュンダイにとって悲願といえます。

 しかし、いくら品質が向上したからといって、日本市場と日本車と対抗するのは難しいでしょう。そこで、ヒュンダイは燃料電池自動車(FCV)である「ネッソ」を軸に、展開すると考えられます。

 水素と酸素の化学反応によって生じる電気を利用して走るFCVは、次世代のクルマとして期待されています。

 その技術は日本がリードしているといわれており、トヨタやホンダがFCVの市販に成功しています。一方、ヒュンダイもまた、ネッソによってFCVの市販化に成功しているメーカーのひとつです。

 ただ、FCVには水素を充填するための水素ステーションが必要です。水素ステーションの拡充には官民一体となった施策が必要であり、多くの国ではまだインフラ整備が整っていないのが実情です。

 ネッソも当初は北米市場をメインターゲットに展開していましたが、シェールガスの発掘によってガソリン価格が低下したことで、北米での水素ステーション拡充はトーンダウンしてしまいました。

 一方、日本は世界でもっとも水素ステーションが整備された国であり、将来的にも増加することが見込まれています。ヒュンダイはここに目を付けて、FCVであるネッソを日本で販売すると考えられているのです。

 実際、ヒュンダイはFCV関連のイベントにネッソを出展したり、一般向けイベントを開催したり、さらにはカーシェアリングにネッソを提供するなどのマーケティング活動をおこなっています。

 また、日本語かつ日本で撮影された写真素材を使用した公式ホームページも公開されています。

 ヒュンダイ・ジャパンの関係者は「日本市場復帰については未定」と話しますが、これらの背景を見ると、いつでも市場復帰できる準備はなされていると考えられます。

ヒュンダイの大型バス「ユニバース」(海外仕様、画像はヒュンダイ トラック&バス グローバルサイトより)ヒュンダイの大型バス「ユニバース」(海外仕様、画像はヒュンダイ トラック&バス グローバルサイトより)

 しかしここで気になるのは、前述した商用車部門の不振です。商用車と乗用車では市場のニーズも考え方も異なり、また、日本における会社組織も異なるため、両者を同様に捉えることはできませんが、前向きに働かないことは事実でしょう。

 ただ、商用車も乗用車も、すべては新型コロナウイルスの動向に依存しているというのが正直なところでしょう。

 新型コロナウイルスが一定の収束を見せれば、商用車も乗用車も需要は回復すると考えられるほか、物流やアフターサービスネットワークの構築にも目処が立つため、いよいよ本格的に市場復帰を検討することができます。

 馴染みのない、あるいはあまりポジティブなイメージのない韓国車ですが、ユーザーにとって選択肢が増えることは決して悪いことではありません。

※ ※ ※

 ヒュンダイの商用車部門の撤退が事実となれば、新型コロナウイルスによる大きな影響のひとつといえます。

 また、乗用車部門の日本復帰が噂のまま立ち消えれば、それもまた新型コロナウイルスの影響といえるのかもしれません。

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