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本当にガソリン税は適正なの? 改善の声高まるも「正しい使われ方」が最重要か

くるまのニュース / 2021年12月2日 11時10分

2021年10月にJAFが発表した「2022年度税制改正に関する要望書 」には、自動車関連諸税を負担に感じるユーザーの声がまとめられています。ガソリン税に関しては、「当分の間税率」の廃止や「Tax on Tax」の解消が要望事項として挙げられていますが、いったいどういうことなのでしょうか?

■強い言葉で現在の税制を非難するJAF

 2021年10月にJAFが発表した「2022年度税制改正に関する要望書 」には、自動車関連諸税を負担に感じるユーザーの声がまとめられています。
 
 ガソリン税に関しては、「当分の間税率」の廃止や「Tax on Tax」の解消が要望事項として挙げられていますが、いったいどういうことなのでしょうか。

 JAFが発表した要望書には「自動車ユーザーは強く訴える」というサブタイトルが掲げられ、ユーザーによる声をまとめたものであることが強調されています。

 この要望書によると、2021年8月24日-9月12日までの20日間に実施した11万5813人を対象にしたアンケートの結果、実に98%のユーザーが「自動車に係る税金が負担」であるとしています。

 なかでもガソリン税に関しては、「ガソリン税などに上乗せされ続けている『当分の間税率』は論理的な説明もなく追加負担を求めているものであり、直ちに廃止すべき」と強い言葉による要望を出しています。

 JAFの主張によれば、揮発油税と地方揮発油税、軽油引取税をまとめた「ガソリン税」は、緊急の道路整備を目的として本来の税率を上回る特例税率が課せられ、およそ40年にわたって本来よりも高い税金をユーザーは負担し続けているといいます。

 また、本来は道路特定財源として、道路整備などに限定して利用されるはずの税金であったにもかかわらず、2009年には一般財源化し、道路整備以外にも利用されることになりました。

 しかし、その際にも特例税率は維持されており、2010年の税制改正で「当分の間」特例税率が維持されることが決定されました。

 この点について、JAFは「論理的な説明もなく引き続き負担を強いられる自動車ユーザーとしては到底納得できるものではありません」と述べています。

 税金には、そのメリットを享受する人がその費用を負担するという「受益者負担」と呼ばれる考え方があります。

 自動車関連税が、道路整備などに利用されるのであれば、自動車ユーザーが直接的にメリットを享受していると理解しやすいものですが、それ以外のものに使用されるとなると、自動車ユーザーとしては納得できないというのも無理はありません。

 また、JAFは「ガソリン税に消費税が課税されるというTax on Taxはまったく不可解であり、消費増税後の負担増を考慮しても、早急に解消すべき」という要望も出しています。

 JAFによれば、クルマの燃料としてのガソリンには、ガソリン本体の価格に対して1リッターあたり48.6円の揮発油税と、同5.2円の地方揮発油税が掛けられており、そこに対して10%の消費税が発生しているTax on Taxの状態であると指摘しています。

 JAFはこの状態について「極めて不可解な形」、「自動車ユーザーが到底理解・納得することができない課税形態」と非難しています。

■「適正な課税」とは「税金の引き下げ」ではない

 JAFの要望書を読む限り、自動車ユーザーは非常に重い税金を課せられているような印象を受けます。

 一方で、自動車ユーザーへの課税が「重い」かどうかは定量的に判断しにくいものでもあります。

 諸外国との比較などが例に挙げられる場合もありますが、自動車関連以外の税制や、社会保障の状況も異なるため、同じ条件で比較することはできません。

 もちろん、一般論としては税金は安いほうがありがたいことは間違いありませんが、とにかく安くすることが、税制のあるべき姿とはいえません。

 正しい税制とは、納税者が理解しやすく公平で適正な課税がおこなれることです。

 ただ、現実的には世論の多くが「適正な課税」と「税金の引き下げ」ことが混同しているように感じます。

 重要なのは、納税者が理解しやすいかどうかであるというのが筆者(PeacockBlue K.K. 瓜生洋明)の見解です。

ただ安さを求めるだけじゃなく適正な税の使われ方が重要!ただ安さを求めるだけじゃなく適正な税の使われ方が重要!

 例えば、先に述べた、自動車関連諸税の一般財源化も、ある側面から見れば自動車ユーザーが不利益をこうむっているようにも思われますが、

 それによって公共サービスや社会保障が充実するなら、自動車ユーザー以前に日本国民である納税者にもメリットはあるといえます。

 ガソリン税のTax on Tax(「二重課税」)も、違法行為であると批判されることがありますが、ガソリン税は販売事業者に対して課せられているものであり、消費者が課せられているわけではありません。

 飲食店などが店舗の固定資産税や食材を仕入れる際の消費税や関税などのコストを加味したうえで価格を決定し、消費者が購入する際にその商品価格に消費税が発生するというのと仕組みは変わらず、当然のことながら違法行為ではありません。

 ガソリンの場合、販売事業者がガソリン価格の内容を消費者に説明するために、ガソリン税をレシートに記載することが慣例化しているため、このような誤解が生まれたものと考えられます。
 
 もちろん、現状の税制が完成しているとは思いませんし、常に議論をしていくことは重要です。

 ただ、その際にはやみくもに税金の引き下げを要求するのではなく、幅広く多角的な視点を持った上で適正な課税を提案してかなければなりません。

 JAFはその立場上、自動車ユーザーにメリットのある税制を要望していますが、JAFの要望通り自動車関連税が引き下げられたとして、そのほかの部分でどのような影響が出るのかはまったく触れられていません。

 筆者も自動車ユーザーですが、それ以前に日本国民のひとりです。

 自動車関連税を引き下げられたとしても、それによってほかの税金が増税されたり、公共サービスが社会保障に影響が出たりするなら、それを手放しで支持することはできません。

※ ※ ※

 今回のJAFから発表された要望書は、センセーショナルな部分が強調されたものとなっています。

 ただ、われわれユーザーは常に冷静な視点で自動車関連税のあるべき姿を考えていかなければなりません。

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