アルファードやキャストのパクリは健在!? でも全体レベル高くなった? チャイナデザインのイマ
くるまのニュース / 2024年4月9日 22時10分
昨今、世界的な電動化の流れもあり、中国の自動車産業はここ数年で目まぐるしく成長しました。しかし一方では他社のデザインをコピーしたものも健在。いまの中国車デザインはどうなっているのでしょうか。
■中国自動車デザインのイマ
かつて「中国車=コピー車(パクリ)」というイメージを持つ人がいました。
現在では、デザイン、性能など世界の自動車メーカー・ブランドに匹敵するレベルも見られますが、一方では未だにパクリデザインもわずかに残っています。
中国車デザインのイマはどうなっているのでしょうか。
世界的な電動化の流れもあり、中国の自動車産業はここ数年で目まぐるしく成長しました。
内外ともにクルマ自体のクオリティが向上しただけでなく、お手頃な価格をもって先進国各国の乗用車市場に次々と参入、消費者にとっての新たな選択肢のひとつになりつつあります。
これは日本も例外ではありません。販売台数ベースでは世界一のEV(含PHEV・BEV・FCEV)メーカーの「BYD(中国語名:比亜迪)」は2023年3月より日本でも乗用車の販売を開始、参入初年で1511台を販売しました。
クルマとしての質以外に、デザイン力も大幅に向上しています。
ひと昔前まで「中国車=コピー車」のイメージは根強く、今では世界中の自動車メーカーと肩を並べる規模を誇るトップランナーの中国メーカーも、みんな最初はコピーの色合いが強いものでありました。
例えば、先述のBYDが2008年に「世界初の量産PHEV」として販売した「F3」も当時のトヨタ「カローラ」との類似性が指摘されていました。
また、2009年ごろに少量生産した2ドアコンバーチブル「S8」はフロントがメルセデスベンツ「CLK」。
初のミニバン車種「M6」はトヨタ「エスティマ」のコピーとも言われていました。
また現在は世界各国にSUVを輸出したり、BMWと合弁会社でミニの純電動モデルと生産したりする「グレートウォール(長城汽車)」も、2007年発売のコンパクトカー「ペリ」がフィアット「パンダ」に酷似しているとしてフィアットより法的措置を取られたこともあります。
コピーはエクステリアだけでなく、内部もコピー元と同じ設計にしている例も多く、コピー元のクルマ専用設計の社外サスペンションがコピー車にも装着できることは珍しいことではありませんでした。
ですが、いつまでもコピー車を作っていられるわけではありません。
シザードア(左上)・メッセージを映すLEDディスプレイ(右上)・トレンドのイリュミネーションを採用(左下)・窓枠のないサッシュレスドア(右下)
中国国内の消費者の間でも「コピーやパクリは恥」という認識が強くなり、中国の自動車デザインは2010年代中盤以降、徐々に進化を遂げていきました。
多くのメーカーは欧州メーカーなどでデザイナーを務めた一流デザイナーを引き抜き、そこから自分たちのアイデンティティとなる独自のデザイン言語を形作るようになるのです。
例えばBYDも同時期にコピーを脱却すべくオリジナルのデザインに取り組みましたが、その垢抜けさは相変わらず強く、良い意味でも悪い意味でも「中国車らしい」デザインのままでした。
ですが、ランチアやアルファロメオ、アウディなどでの経験が豊富なヴォルフガング・エッガー氏を2017年にデザイン部門の責任者として迎え入れたことを機に、BYDの自動車デザインは飛躍的に向上することとなりました。
「龍の顔」を想起させる「ドラゴンフェイス」をさらに進化させ、BYDファミリーの根幹となるデザインとしたのです。
また、2021年には新たな商品群「海洋シリーズ」をローンチし、その名の通り「海洋生物」や「船舶」からデザインの着想を得たモデルを続々と投入させていきました。
結果、どこかの国やメーカーの寄せ集めではない、BYD独自の「洗練された中国らしさ」がエクステリアデザインという結果に現れ始めたのです。
BYDだけでなく、ボルボやロータスを傘下に収める「ジーリー(吉利汽車)」や、数多くの中国要人に愛されてきた歴史を持つ第一汽車の高級車ブランド「紅旗」。
中国新興EVメーカー御三家に数えられる「シャオペン(小鵬)」「NIO(蔚来)」「理想」など、今ではさまざまな中国メーカーやブランドが自身のアイデンティティとなるデザインを確立させています。
今日の中国車では、他国メーカーの車種では見ないような斬新な要素がトレンドになっています。
もちろん中国メーカーによるガソリン車もいまだ健在ですが、それよりもプラグインハイブリッド車(PHEV)や電気自動車(BEV)の新車が全体的な傾向として大多数となります。
これらEVではグリルがほとんど存在しない「グリルレス」は当たり前とし、細く水平に伸ばされたイルミネーションや、繊細なガラス細工のような灯火類は中国車独特の要素と言えるでしょう。
また、バンパー下部や左右ヘッドライトの間に簡易的なドット絵や文字を表示できるディスプレイを備える車種も増えてきており、歩行者などの他の交通との円滑なコミュニケーションに用いられています。
機能的な面を掘り下げると、セダンやクーペ、SUVなどボディタイプ問わず、窓枠のない「サッシュレスドア」も非常に多くの車種で採用。
それに加え、中国では2ドアのハイパフォーマンスBEVが増えつつあり、それらではシザードアの積極的な採用が見受けられます。
■それでもアルファード顔は多い!? 未だに「コピー車(パクリ)」は蔓延っている?
飛躍的にデザインセンスが向上した中国の自動車産業ですが、一方で末端ではいまだコピー車が蔓延る現実もあります。
業界全体があまりにも広いため、自動車先進国のメーカーにも引けを取らないトップランナーだけでなく、最下層には自社での開発・デザイン能力がないために容易にコピーに手を出す弱小泡沫メーカーも抱えているのです。
例えば、上海汽車が展開するブランド「ロエウェ」の高級EVミニバン「iMAX8 EV」のフロントマスクはアルファードを意識した印象でした。
最近では「アルファードの顔を持つ超小型BEV」として鴻日汽車の新ブランド「未奥」が2023年にリリースした「BOMA」が話題となりました。
このクルマはフロントマスクをトヨタ「アルファード」からコピーしただけでなく、ボディ自体も日産「デイズ」からコピーしており、リアクオーターやフロントフェンダーなどの形状がデイズそのままであるのが確認できます。
また2018年にリリースした「U8」のデザインはダイハツ「キャスト(キャスト アクティバ)」と瓜二つでした。
これは完全にダイハツ「キャスト」じゃないの? 鴻日汽車「U8」が似すぎている(公式サイトより)
鴻日汽車は元々、ナンバープレートを必要としない低速走行車「老年代歩車」を手がけていたメーカーです。
これら「老年代歩車」はメーカー問わずデザインのコピーや、おどろおどろしい魑魅魍魎のようなデザインを持つものが多く、また車両自体のクオリティも「自動車」とはほど遠い低質なものとなります。
なので、「中国のコピー車」としてたびたび話題になるクルマたちの正体はこういった部類のものであり、大抵はその販売・生産規模も非常に限られているため、中国国内でも滅多に目にしないような存在となります。
事実、先述のBOMAもほとんど売れておらず、会社自体が存続できるか怪しいレベルにあると予測できます。
目先の利益だけを考え、平気でデザインを盗用する中国の弱小メーカーは中国自動車産業の恥と言えます。
一方で、市場は優れたデザインの選択肢で溢れており、「コピーだけど安いから選ばれる」という時代は終わりに近づいています。
今後、中国の消費者の目はますます肥えていき、デザインやインフォテインメント機能だけでなく、乗り味でもクルマを選ぶようになっていくでしょう。
コピー能力しか取り柄のないメーカーは必ずや淘汰される運命にあり、業界全体のデザインにおける躍進には期待が寄せられます。
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