社説:メーデー 労働格差解消に本腰を
京都新聞 / 2024年5月1日 16時0分
メーデーのきょうは、労働者が職場を超えて連帯し、権利の向上を訴える日だ。人への投資と働く環境改善の重要性を改めて確認する機会としたい。
2024年春闘では大企業を中心に大幅な賃上げ回答が続いた。初任給引き上げも目立った。
世界的なインフレ傾向に加え、このままでは人材獲得競争で遅れを取りかねない―。
賃上げ回答を後押ししたのは、グローバル企業のこうした危機感だったといえよう。
しかし、十分に中小企業に及んだとは言い難い。財務省の調査では、賃上げ率5%に半数以上の大企業が届いたが、中小企業では24%にとどまった。
急激な円安を受け、食品やサービスの値上げが相次ぐ。調査会社によると、4月は食品2806品目が平均約23%値上がりし、今月は電気、ガス料金の引き上げが見込まれる。
物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金は2月まで23カ月連続でマイナスとなっている。このままでは春闘の成果が費やされてしまい、暮らしを補い切れない。労働組合や中央組織は継続的な賃上げを訴え、交渉を続ける必要がある。
一方で、4割弱を占める非正規労働者をはじめ、処遇改善の裾野拡大は欠かせない。
各地の労組や労働団体でつくる「非正規春闘実行委員会」が3月に実施したアンケートでは、「賃上げ予定がない」が82%を超え、大企業勤務の人でも同じ傾向になった。
日本の非正規労働者の1時間あたりの賃金は正規の6~7割と格差が際立つ。働き方改革で導入した「同一労働同一賃金」とのずれを埋めねばなるまい。
問題なのは、政府も企業も格差是正に本腰が入っていないことだ。あらゆる差別の撤廃を掲げる国際労働機関(ILO)の条約をいまだに批准していない。
条約に抵触しかねない国内法の改正に、政府や経済団体が消極的な姿勢のためとされる。放置すれば、雇用の機会均等と公平な処遇を求める世界の潮流から取り残されかねない。
日本の男女の賃金格差は先進7カ国(G7)の中で最悪で、すでにILOから是正勧告を受け、報告も求められている。外国人労働者の低処遇でも批判を集める。
メーデーを機に、国際的な労働基準に照らして働き方を再検討するべきだ。
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