いまに語り継がれる悲劇的結末のアニメ 放送当時はどのように受け止められたのか?
マグミクス / 2024年4月22日 18時25分
■放送当時の空気はどのようなものだったのか?
アニメ作品において、最終回、すなわち物語の幕の閉じ方というのは、やはり見どころのひとつといえるでしょう。そしておよそ創作物なるものは古今東西、ハッピーエンドのみではありません。いまなお語り継がれる悲劇的な最終回を迎えた作品は放送当時、どのように観られていたのでしょうか。当時を知る人たちに話を聞きました。
●『ぼくらの』
2000年代の「鬱アニメ」としてよく挙げられるタイトルのひとつが、鬼頭莫宏先生の同題マンガを原作とする『ぼくらの』です。2007年4月から2クール24話がTV放送されました。
自然学校に参加した15人の少年少女が、地球を守るための争いに巻き込まれていくという内容で、その戦闘に使用するロボットの原動力はパイロットの生命力であり、戦いに勝ってもパイロットには死が待ち受けているという、凄惨かつ衝撃的な設定が当時、大いに話題になりました。
最終回ではついにふたりだけとなり、戦いに命を差し出すことを決意した少年に対し、残されることとなった小学生の少女が「私も死にたい」と告げるシーンは、「(小学生女子に)ここまで言わせるか」といまなお語り継がれています。
ただ残念なことに、ネット上の感想などに触れながら本作を観ていた視聴者は、純粋に物語を楽しめなかったかもしれません。というのも、原作から大幅に改変された内容であったため、アニメ放送中から原作ファンのあいだで大きな騒ぎとなっていたからです。
原作未読で視聴していた、当時を知る40代男性によると、毎週放送が終了するたびにネット上では、(原作とは)あそこが違う、ここが違う、アニメオリジナルキャラが云々、といったネガティブな感想があふれかえっていたといいます。石川智晶さんによるOP/ED曲が素晴らしいものだっただけに、本編に対する声は余計、厳しいものに見えたとか。トドメは、放送期間中に発生したアニメスタッフの不用意な発言による炎上騒ぎだったとも。「そういう周囲のノイズが大きすぎて、とにかく気の毒な最終回という印象です」とのことです。
なお、小学館「月刊IKKI」にて連載されていた原作は2009年8月号にて完結しており、つまりTVアニメ放送当時はまだ連載中でした。よってアニメの物語後半については、鬼頭先生による原作マンガの続きの大まかな構想をもとにしたオリジナルストーリーとなっており、いわゆるアニオリ展開は最初から決まっていたことではあります。
それはそれ、これはこれとして視聴者を楽しませるような状況を作れなかったことが、不幸だったといえるかもしれません。
●『ベルサイユのばら』
1979年10月より約1年にわたりTV放送されたアニメ『ベルサイユのばら』は、池田理代子先生が1972年より集英社「週刊マーガレット」にて連載した同題マンガを原作とする作品です。宝塚歌劇団による同題演劇作品(1974年初演)も大成功を収め、そのブームの過熱ぶりは社会現象といわれました。
ところが、これを「鬱アニメ」と評する声が聞かれます。主要キャラクターが次々と凄惨な結末を迎えるから、だそうです。
その最終回は、開始早々、主人公の「オスカル」が銃弾に倒れてしまいます。さらに主要キャラクターのひとり「マリー・アントワネット」はギロチンで処刑されることになり、その愛人であった「フェルゼン」も、民衆によって虐殺されるのでした。フランス革命という史実を題材にした作品であるため、実在の人物をモデルとするキャラクターが悲劇的な最期を迎えるのは、ある意味、当然の帰結といえます。
では物語の行く末が一応、未確定な原作マンガの連載当時、読者はどのような気持ちで本作を読んでいたのでしょうか。当時を知る70代女性に話を聞いたところ、「史実は知っており、最後は悲劇になるだろうことは想像していたけれど、そんなことお構いなしに読んでいました。オスカルとアンドレがとにかくカッコよかったの!」とのことでした。そして結末については「まぁ、そうなっちゃうよね」といった感想だったとか。実に正しい楽しみ方ではないでしょうか。
確かに悲劇的な結末ではあります。しかし「鬱アニメ」と評するのは少々、野暮なことなのかもしれません。
(マグミクス編集部)
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