猫の保護活動に立ちふさがる「年齢の壁」小さな命を救い続けた80代女性の願いと受け継がれた決意
まいどなニュース / 2024年5月2日 11時0分
人間の都合やエゴなどから捨てられた動物たちの命を救うため、保護活動を行なっている方々がいる。
「野良猫たちは、過酷な環境で必死で生きています。せめて最後の時だけでも、安心できる環境で過ごさせてあげたい……それが私の強い思いです」と語る、雨と雪(@63NiY6yY7YDHiYk)さんもその1人だ。実は彼女の母も、不幸な猫たちを保護し里親を探す活動を、なんと25年間も続けてきたという。
「25年餌やりを続けている母。大切にお世話をしてきた渚ちゃんの目が白濁してきているとのこと。母の家には他にも保護猫がいるのと、歳を考えると母の家で暮らすのは難しいなぁと思い、うちで保護すると母に伝えると、涙を流して喜んでくれました。これから保護に向かいます。無事保護できますように」
X(旧Twitter)にそう投稿した、雨と雪さん。「渚ちゃん」と名付けられたメスのシニア猫は、今から12年前、とある公園に突然現れたという。おそらく身勝手な人間に遺棄されたという「渚ちゃん」は、先日、雨と雪さんの手で無事に保護された。
動物病院での検査の結果、渚ちゃんは歯が1本しかなく、右目は角膜が傷つき少し白濁しているものの、お腹に寄生虫などもおらず健康体だという。
その後、雨と雪さんのお宅の「保護猫部屋」で過ごし始めた渚ちゃん。毎日ごはんをもらっていた雨と雪さんのお母さんが訪ねてくると、こわばった体と表情が和らいだ。
棄てられ老いた「猫」と、80代のボランティア
本来であれば、もっと早い段階で渚ちゃんを保護するべきだったのかもしれない。しかし、25年以上の保護猫活動で多くの「飼育崩壊」の現場を知る雨と雪さんのお母さんは、自身の家にすでに保護猫が1匹いること、そして、自身の年齢が80代であることを考え、渚ちゃんをすぐに迎え入れることができなかったという。
「個人でも団体でも、保護できる頭数は限られています。すぐに保護してあげられない猫たちには、TNR(※繁殖力の高い猫をむやみに増やさないよう避妊去勢手術をして戻すこと)を行い、お腹が空かないよう見守ってあげたい。雪が降ったり、寒波や猛暑が来る度、餌をあげている猫たち全てを連れて帰ってあげたいと思います。フードを食べ終わってもずっと帰らない猫がいます。過酷な外暮らしを思うと……ごめんね、連れて帰ってあげられなくて……と、辛い気持ちになります」(雨と雪さん)
譲渡条件が厳しい理由
ペットを迎えるということは、最期の時までその命を預かり守るという、大きな責任が生じる。そのため、保護動物を迎える「里親」には厳しい条件が課せられる。飼育放棄や虐待の可能性を避けるため、住環境や留守時間の長短に加え、里親の「収入」や「年齢」も重要な条件となる。
「保護された猫や犬たちの多くは、本当は飼い主さんのもとで幸せに暮らすはずだったのに、何かしらの理由で遺棄された不幸な子です。厳しい譲渡条件は、つらい経験をした動物たちに二度と不幸な思いをさせないためのものであり、その子たちが幸せになるための条件なんです。家族に迎えるのなら当たり前の条件だと思いますし、保護した子たちを託す側としては、その子の命が尽きるまで幸せに暮らして欲しい、と願わずにはいられません」(雨と雪さん)
これからの「渚ちゃん」について
雨と雪さんは現在、猫の預かりボランティアや地域猫のごはんボランティアのほか、『猫にゃんネットワーク府中』が主催する譲渡会の手伝いを行なっている。
「譲渡会ではやはり子猫が人気です。ただ、シニア猫には唯一無二の可愛さがあります。動きもゆったりしていて1日中よく寝ますが、そんな存在そのものが尊くて可愛いです。シニア猫や大人の猫は性格も安定していて、飼い主さんとの相性や生活環境などに合わせて選びやすいと思います。高齢者の方がいらっしゃるご家庭には、お互いに良いペースで暮らせるシニア猫をおすすめしています」(雨と雪さん)
渚ちゃんも当初、譲渡会やSNSで里親を募集する予定だった。しかし、雨と雪さんのお母さんに抱かれ、幸せそうにしている渚ちゃんの様子を見て、「私がサポートするから、渚ちゃんとずっと一緒にいてほしい」と、お母さんに提案した雨と雪さん。「私も渚ちゃんと一緒に暮らしたい」と、お母さんは涙を流して喜んでくれたそうだ。
25年、小さな命を見守り続けた母の意思を継ぎたい
雨と雪さんのお母さんが保護猫活動を始めた約25年前は、「地域猫」の取り組みに理解を示す人はほとんどいなかったという。それでも、たった1人でTNRを行い、餌やりを続けた、雨と雪さんのお母さん。
「母はずっと1人で活動してきて、猫嫌いの人からひどい暴言を吐かれたことも数えきれないほどあったそうです。それを思うと……たまらない気持ちになります。地域猫活動は課題が多いと思いますが、とにかく近隣の方々との対話を欠かさないように私も心がけています。
母の意志は私が繋いでいこうと思っています。いつかシェルターを作って、たくさんの猫を保護できるようになりたいと考えています」(雨と雪さん)
雨と雪さんも参加する『猫にゃんネットワーク府中』では、5月4日に「聖マルコ パリッシュホール」(東京都府中市)で猫の譲渡会を開催する。また、「ジェリー・ジャムスタジオ」(東京都府中市)でも、5月12日に猫の譲渡会を開催する予定だ。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ かな)
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