「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月7日 13時0分
<強力な破壊力を持つ燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)は今回の戦争で、ウクライナとロシア双方に使用されている>
ウクライナ軍のFPV(一人称視点)ドローンが燃料気化爆弾(サーモバリック爆弾)を使って、ロシア軍が占拠する建物を攻撃した瞬間だとされる新たな映像が公開された。ウクライナの攻撃ドローンが平屋の建物に窓から突入すると、その直後に強力な爆発が発生し、一瞬にして建物が崩壊したように見える。
■【動画】「燃料気化爆弾」ドローンが砲弾不足のウクライナを救う? ロシア軍拠点を「木端微塵」にする衝撃の瞬間
この映像はウクライナ軍の第28機械化旅団が撮影したもので、ネット上で拡散している。第28機械化旅団が投稿したより長い映像は、この建物に向かうFPVドローンからの映像と見られ、その後、飛行中の別のドローンからの映像に切り替わる。
本誌はこの映像の信ぴょう性を独自に確認できておらず、第28機械化旅団にコメントを求めている。
燃料気化爆弾は、ウクライナ戦争の開始直後から使用されており、二度の爆発によって通常兵器よりも破壊的な効果をもたらす。
FPVドローンはウクライナにとって、ロシアよりも速く、優れている無人機を、より多く開発する競争の要だ。ドローンがロシア軍の車両に向かって爆発するドラマチックな戦場の映像を記録するのに使われたり、砲撃を誘導する偵察ツールとして配備されたりしている。
ウクライナ軍の弾薬はロシア軍の5分の1程度
軍事専門家のデービッド・ハンブリングによれば、ウクライナが燃料気化爆弾を搭載したFPVドローンを大量に製造しているため、最近ではそれらのドローンの攻撃を目にする機会が増えているという。
「ウクライナはロシアの防衛陣地を攻撃する際、砲弾不足を補うために、大きな爆風効果を持つ精密なドローンを使用する可能性がある」とハンブリングは本誌に語った。
ウクライナの東部と南部で2年以上続いている地上戦では、大砲とその弾薬が重要な役割を担っている。だがウクライナ政府高官や欧米のアナリストは、ロシア軍が西に進撃する中、ウクライナは砲弾不足によって作戦の制限を余儀なくされていると指摘する。ウクライナ軍の弾薬は、ロシア軍が使用可能な弾薬の5分の1程度と考えられている。
ウクライナはこの差を埋めるため、ドローンに燃料気化爆弾を搭載するなど、新しい戦術に目を向けていると、ハンブリングは述べる。
燃料気化爆弾は「地下壕や塹壕、建物の中にいる部隊を攻撃する場合に選ばれる」とハンブリングは説明する。一方のロシア軍は、燃料気化爆弾の弾頭を搭載したドローンはまだ使用していないとみられるという。
燃料気化爆弾は「最も破壊的で卑劣なロケット爆弾」
しかし、ロシア軍はウクライナ軍に対し、「重火力投射システム」と銘打っているTOS-1A「ソルンツェペク」を使用している。ロシア国防省は、TOS-1Aはウクライナ軍に対する自軍の「強力な武器」だとしている。
英国防省は2022年3月に、「TOS-1Aの衝撃は壊滅的だ」と述べている。「インフラを破壊し、攻撃を受けた人の内臓に大きなダメージを与え、やけどを負わせ、死に至らしめる」
「バキュームボム(真空爆弾)」の名前でも知られる燃料気化爆弾は、旧ソ連軍がアフガニスタンやチェチェンで使用したほか、1960年代には米軍も使用していた。米シンクタンク、ケイトー研究所の政策アナリストであるジョーダン・コーエンは、燃料気化爆弾について「現存するロケット爆弾の中で最も破壊的で卑劣なものだ」と本紙に語っている。
エリー・クック
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