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森永卓郎が持論~日本のワクチン接種が遅れた最大の原因は「官僚の保身」にある

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年5月12日 20時35分

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大阪で新型コロナワクチン接種開始 ワクチン接種を受ける医療従事者=19日午後1時4分、大阪市中央区の大阪医療センター

「垣花正 あなたとハッピー!」(5月12日放送)に経済アナリストの森永卓郎が出演。日本の新型コロナワクチンの接種率が遅れた原因について解説した。

大阪で新型コロナワクチン接種開始 ワクチン接種を受ける医療従事者=2021年2月19日午後1時4分、大阪市中央区の大阪医療センター 写真提供:産経新聞社

先進国のなかで最もワクチン接種率の低い日本

5月11日時点での新型コロナのワクチン接種率、少なくとも1回接種した人の割合は、イギリス52%、アメリカ46%、チリ45%、カナダ40%、以下、ドイツやスペインなど先進国が続き、日本は2.77%です。桁が違います。ブラジルが15%、インド9.8%、韓国7.2%、インドネシア4.9%ですから、日本はとても低い。アメリカのバイデン大統領は、「独立記念日(7月4日)までに成人の7割が少なくとも1回目の接種を終えることが目標だ」と言っています。

日本のワクチンが遅れた最大の原因は「官僚の保身」

もともと日本の外交力が弱くて、ワクチンの優先確保に失敗したということもありますが、未だ承認されているワクチンはファイザー社製だけです。モデルナはもうすぐと言われていますが、イギリスのアストラゼネカはまだ目途が立っていません。もう1年経つのですよ、1年。なぜ、こんなに承認が遅くて、ワクチン確保が後手に回ったのか。その最大の原因は官僚の保身、特に厚生労働省の官僚の保身だと思います。

かつては安い給料で生き生きと働いていた官僚

厚生労働省の官僚が承認しないからです。国産ワクチンは1年前にできていたのです。でも延々と承認を先送りしているわけです。正規の手続きを厳しく踏んでいるのですが、なぜこんなことになってしまったか。かつて官僚は給料が安かったのです。でも彼らは生き生きと働いていた。私も2年間だけ官僚の仕事をしていましたが、当時の私の年収は300万に届かないくらいでした。でも毎日深夜2時~3時まで働いていました。残業代が出ないのになぜ働いていたのかと言うと、みんなで集まって日本の天下国家を議論していたのです。その結果、その議論に沿って日本丸が動くのです。大臣は来ますが、「適当に丸め込んでおけばいいや」というような感じで使命感に燃えていたのです。仕事が面白いから、出世したいとも思わなかった。当時は課長補佐レベルが国を動かしていたので、それが日本の高度成長の大きな要因になったのだと思います。

官僚が保身に走ってしまった2つの理由

そういう背景を踏まえて、なぜいま保身なのか。それには2つ理由があります。1つは給料です。「大企業の正社員に合わせる」という巧妙な仕組みを人事院がつくり、給料が高くなってしまった。それによって官僚は一流企業並みの収入を得られるようになった。そうすると、それを守りに行くわけです。さらに、官邸主導になったので仕事がつまらなくなった。自分たちで考えられない、「言われた通りにやれよ」と。仕事がつまらなくて給料が高いとなると、「忖度をして問題を起こさないようにして、いまのポジションを守ろう」というように官僚が変わって来てしまったのです。

神戸でワクチン集団接種開始 神戸市で新型コロナワクチンの集団接種がスタート。仕切られたブースの中でワクチンを注射器に詰めていくスタッフ=2021年5月10日午後1時16分、神戸市兵庫区の兵庫区役所 写真提供:産経新聞社

官僚に残る「日本ワクチンの苦い歴史」

ワクチンに関しては、辛い歴史が官僚にとってはあります。1970年代に天然痘のワクチンでいろいろな事故が起こったわけです。その他にもいろいろなワクチンの事故が起こり、集団訴訟を起こされるようになりました。1992年の東京高裁判決では国が全面敗訴しました。つまり、「ワクチンを安易に承認すると裁判を起こされてとんでもないことになるぞ」と思ってしまった。そうすると保身を図る官僚は、正規の手続きで厳密な検証をするわけです。それを誰も責められないのです。なぜならば正規の手続きですから。

国民の命を守ろうと思ったらリスクを取らなければならない場合もある

しかし、今回のコロナ禍で世界は「緊急承認」に出たわけです。「そんなことは言っていられない、とりあえずやろう」と。例えばアストラゼネカのワクチンは、イギリスで大量に打たれています。ある程度の安全性は確認されているのだから日本でもやればいいのに、「日本人に打った場合はどうなるかわからないですよね」と言って、この期に及んで延々と治験を続ける。その間に、コロナで亡くなった人はもう1万人を超えています。大変なことになっているわけです。本当に国民の健康と命を守ろうと思ったら、リスクを取らなければならないときもあるのです。

疑問が残る菅政権のコロナ対策

世界の潮流は「ワクチンとロックダウンと大規模PCR検査」なのです。イギリスはそれを実施しました。1月8日が日本もイギリスも感染者のピークだったのですが、イギリスはそのとき1日の陽性者が日本の約9倍いました。ところが現在は逆転して、イギリスでの新規陽性者は日本の約半分しかいない。劇的な抑え込みに成功したのです。それは、イギリスがこの3つを同時にやったからです。日本はロックダウンもしない、PCR検査もしない。東京都は1万件レベルの検査しかしていません。なぜPCR検査をしないのか。「ワクチンとロックダウンと大規模PCR検査」、その3つをイギリスと比較すると、日本は無策に近く見えてしまいます。厚生労働省が決まったことを淡々とやり、「問題を起こさないようにしている」ということが最大の問題なのだと思います。

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