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「ストーブとエアコン」寒い冬に健康を守るにはどちらを使うべきか

プレジデントオンライン / 2021年1月22日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AlexLM

■WHOは「冬の最低室内温度として18度」と勧告

寒くなってきても、これくらいなら耐えられるからと、暖房器具を利用することをつい控えていないだろうか。

しかし、それでは健康を守れない。

2018年11月に発表された「WHO 住宅と健康に関するガイドライン」では、「冬の最低室内温度として18度」(高齢者や小児はさらに暖かく)と勧告された。国内の大半の家は、何もしなければこの室温に達しないことがわかっている。

長年、住宅と健康について調査研究を続けてきた慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授も「寒いのを我慢しないこと」と強調する。

「いろいろな家を訪問していると、国内では驚くほど寒い家が多いんです。住んでいる方は、冬だからこれぐらい寒くても当たり前、ずっとこういう生活だったからと言います。でも室温が低い環境で生活し続けると、血管に負担がかかって病気のリスクが高まり、年齢を重ねるほど健康寿命に影響します」

18度を下回ると循環器疾患、16度を下回ると感染症などの発症や、転倒、怪我のリスクが高まるという報告が数多くある。そのほかにも脳の若さや咳の症状、頻尿リスクなど、室温は体に多くの影響を与えているのだ。

光熱費の心配より、健康のために暖房器具を使うことを意識しよう。

■空気を汚さずに暖房力があり、月々の電気代が低コスト

それでは、どういった暖房器具を使うといいか。選ぶ指標としては、空気の汚染、暖房力、コストが挙げられるが、総合的に優れているのはエアコン。空気を汚さずに暖房力があり、月々の電気代が低コストであるためだ。一級建築士の加藤真哉氏はこう語る。

「エアコンは『ヒートポンプ』という原理で、投入する電気エネルギーよりも多くの熱エネルギーを使うことができるのです。しかしエアコン以外の電気を使う暖房設備、例えば電気ストーブやオイルヒーターなどは、エネルギー消費量がとても多くなってしまいます」

こたつも、小さな空間だけを暖めるので発熱量(消費電力)が電気ストーブやオイルヒーターの半分以下であり、うまく使えば省エネになる。

だが、小さなホットカーペットやこたつなどのような部分的に暖めるものよりも、エアコンやオイルヒーターなど、室内全体を暖めて室温を上げるもののほうが健康の観点からはいいだろう。

■室内が湿度過剰になって、結露やカビができてしまう

反対にできる限り避けるべきなのは、石油ストーブなどの開放式燃焼器具だ。暖房力は強いが、いわば部屋の中で“焚き火”をしているようなもの。加えて室内にカビを発生させやすい。

日本エネルギーパス協会代表の今泉太爾氏は、“暖房加湿器”と表現する。

「石油ストーブは燃焼時に水分が出るのです。そのため室内が湿度過剰になって、結露やカビができてしまう。燃焼時には一酸化炭素など有害物質も一緒に発生するため、定期的な換気が必須になります」

ただし、石油ストーブの中でもFF式と呼ばれるものは燃焼ガスを給排気筒から室外に排気するため、湿気を出さず空気も汚さない。

エアコンを使う前にはフィルターを掃除してから使おう。エアコンそのものは空気を汚染するものではないが、夏の冷房使用後にカビが生えやすいため、そのままの状態で冬も使用すると空気が汚れやすい。最近はエアコンと空気清浄機が一体化しているものもあるので、検討してもいいかもしれない。

■冬は「室温」と「湿度」を両方保つことが重要

また、エアコンを使用して乾燥が気になるときには、加湿器を併用すると◎。湿度過剰もよくないが、「乾燥」は睡眠の質の低下や、感染症リスクの上昇、要介護度の悪化を招く。

「私たちの研究で湿度30%以上か、それ未満かで比較すると、30%未満の乾燥している介護施設は、なんと2倍も要介護度が悪化しやすかったのです」(伊香賀教授)

感染症対策の観点からは50~60%の湿度がいい。インフルエンザウイルスの6時間後の生存率を調べた研究では、室温22度、湿度50~60%で生存率が低くなるという結果であった。冬は「室温」と「湿度」を両方保つことが重要なのだ。

ちなみに加湿器には「気化式」や「スチーム式」「超音波式」などがあるが、運転コストが安価なのは気化式である。どのタイプを使用するにしても雑菌の繁殖を防ぐため「水道水」を使い、毎日水を交換すること

また、たとえ暖房によって室温が18度以上に保たれていたとしても、冷気は下にたまりやすい特性がある。特に断熱性の低い住宅では、窓からの冷気が部屋の下層に流れ込む。これを「コールドドラフト現象」と言う。

「足元が寒い群では、そうでない群と比べて1.5倍も高血圧で治療を受ける可能性が高くなる」と伊香賀教授。

ほかにも足元が寒いと自律神経に悪影響を与えたり、子供の活発性が低下してしまう。

■アルミ製の窓に、樹脂製の内窓を付けるといい

効率よく暖房器具を使用するには、住宅の断熱性を高めることが重要だ。リフォームまでいかなくても、室内の熱の半分以上が逃げる窓に対策を施せば、室温は下がりにくい。

暖房器具とあわせて考えたい住宅の断熱

「既存のアルミ製の窓に、樹脂製の内窓を付けると熱を通しにくくなります。自宅内のすべての窓に取り付けるのが難しければ、使用頻度の高いリビングや寝室に取り入れるだけでも断熱の効果が実感できるでしょう」(加藤氏)

内窓は1カ所につき、数万円程度。それが難しい人は、割れ物の梱包に使うようなプチプチのシート(気泡緩衝材)を窓に貼り付けても効果がある。

■適切な換気と、18度以上の室温、30%以上の湿度を目安に

カーテンは厚手のもの、織りのしっかりした目の詰まったものを選び、床につくぐらいの長さでかけよう。オイルヒーターなどの暖房器具は窓側に置くことで、窓からの冷気を押しとどめ、暖房効率を上げることができる。

またカーペットを敷く際には、床との間にアルミシートなどを挟むと、床下からの冷えが和らぎ、断熱が高まる。エアコンの対角線上にサーキュレーターを置いて送風し、室内上部にたまりやすい暖かい空気を攪拌するのも一案だ。

時節柄、「換気」について気になる人も多いかもしれない。2003年施行の改正建築基準法で24時間換気システムの設置が義務化されたため、新築住宅は2時間に1回は室内の空気が入れ替わる。

それらを稼働させていればあまり神経質になる必要はないが、システムがない場合は、浴室の換気扇を24時間つけっぱなしにしておこう。それで部屋の空気は少しずつ入れ替わる。浴室の換気扇もない場合は、2時間に1回5分程度、自然換気を習慣に。

今冬は適切な換気と、18度以上の室温、30%以上の湿度を目安に、室内環境を整えてほしい。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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