異動で適応障害に…「相性が最悪の上司」にあたった時にやるべきたった一つのこと
プレジデントオンライン / 2021年1月25日 8時15分
■異動先でなじめない人が無意識のうちに口にしていること
「新しいところに移ったけれど、全くなじめなくて……」という悩みは、よく聞きます。なじめない理由は大きく2つ。自分に原因がある場合とまわりに原因がある場合です。
自分に原因がある人は、こだわりが強く、新しい部署でのアドバイスを素直に聞けていないことがあります。たとえば「一斉に休憩をとるのは、やめたほうがいいのではないでしょうか。前の部署では休憩時間をずらしてとっていました。そっちのほうが効率がいいです」など、前のやり方を捨てられないケース。「前の部署では……」と、新しい部署に入りたてのタイミングでそれを言ったらギスギスするだろう、ということを無意識のうちに口に出してしまっているんですね。
また「前よりレベルの低い部署に来た」「ここは仕事ができない人ばかり」などと、部署にランクをつけているケース。さすがにこうしたダイレクトな表現を使う人はあまりいませんが、言わないまでも態度に出ている人がいます。
どちらのケースも、せっかく新しいメンバーが仲良くしてくれようとしているのに、自分から壁をつくってなじめなくなっているのです。
■雰囲気やノリが合わない場合も
まわりに原因がある場合は、単純にその部署のノリや雰囲気が合わないというケースが多いですね。
「年配の人が多くて自分だけ若いから、話が合わない」「みんなのテンションが高くて、自分はそうでもないのでついていけない」……、そういう声をよく聞きます。
■なじむ努力をしない人も多い
自分自身が原因になっている人は、まず前の部署と比較することをやめましょう。会社である以上、一人で仕事をしているわけではないので、お互いに尊重し合い、チームワークを大切にした言動をとるようにすることが大切です。やはり「郷に入っては郷に従え」という謙虚な気持ちで新しい部署のルールを受け入れて、足並みをそろえていくということです。
なじめないことで悩んでいる人には、意外になじむ努力をしていないことがあります。新しいところでは当然、わからないことがたくさんあります。それなのに頑なにまわりに聞こうとせず、自分で解決しようとする人がいます。ここで質問や相談をすると、距離はぐっと縮まりますよね。また自分から挨拶したり、相手の名前を呼んだり、こちらから仲間に入ろうとしていることをアピールする必要もあります。
■周囲のテンションに合わせなくてもいい
まわりに原因がある場合は、環境は変えられないので、無理に合わせようとしなくてもいい。無理なものは無理ですから。とりあえず自分に与えられた仕事を一生懸命やって、成果を出すことに集中する。いずれ仕事で評価される人になれば、勝手にまわりに人が集まってきて、なじめるチャンスが出てきます。
反対にノリも雰囲気も合っていないし、仕事もできていなかったら余計になじめません。ですから、まずノリや雰囲気についてどうこう言わず、仕事で評価されるように頑張る。
中にはノリが合わないことを自分が悪いと思ってしまう人もいます。先ほどのパターンとは逆で、郷に入っては郷に従いすぎてしまう。そういう人には、そこに無理に合わそうとしすぎないようにと伝えています。自分が合わせるのは難しそうだなと感じたら、肩の力抜いて、仕事でちゃんと結果を出していくというところに集中してほしいと思います。職場に行くのは、なじむためじゃなくて、仕事をするため。そういった考えで乗り切ってほしいですね。
■相性が最悪な上司に当たってしまったら?
一番難しいのは、異動によって相性の合わない上司と出会ってしまった場合。これで体調を崩す人が本当に多いので、一対一の影響力は相当大きいと感じています。先ほどの、周囲の属性が違って話が合わずなじめないといったケースは、諦めもつきますし、じゃあ仕事で結果を出すしかないなと割り切れることもできます。
けれども一対一の人間関係は無視もできないし、割り切りもできない。うまく適応できなくて、頭痛や吐き気、めまい、胃痛、ひどくなると円形脱毛症や突発性難聴など、体にいろいろな症状が出て、精神科に行くと適応障害という診断がつく。ここまで体調が悪くなって、精神的にダメになる人は、実は少なくありません。
これは部署異動で上司が異動してくるケースでも同じことが起こります。あたりが強い管理職というのは、元いた部署でも問題を起こしているケースがあり、(悪い意味で)社内で有名人であることも多いです。そうした上司に僕たちが話をすることもあるのですが、能力がある程度高いので、一応お医者さんの話は真面目に聞いてくれます。だから、部下側から聞くような、そんなに攻撃的な人なのかなと感じるくらい普通の印象です。でも部下には厳しい、そういう人が多いのです。
■部署を離れるだけで症状は改善する
この場合、その部署を離れることが何よりの治療になります。それだけで、ぐっと状態がよくなるということが、よくあるのです。ただ、休職して体調はよくなったけど、また元の部署に戻ると、同じ症状が出てしまいます。ですから本人が戻るときは別の部署に変えてほしい、上司を変えてほしい、間にクッションの役割として誰かをはさんでほしい、といったことは僕たち産業医が、強めに会社に要求することがあります。
ただし、その上司がある程度能力が高く会社に貢献している人であれば、会社としてはそう簡単に変えることはできず、僕らの要求はなかなか通らないことがあります。
昔のやり方と今のやり方は違うのに、上司が昔のやり方を通すことで苦しんでいる人がいることを、会社のほうがわかっていないというのも事実としてあります。そんなときは、別の会社に移ることもひとつの解決策だと思いますね。
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産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務
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(産業医・精神科医 井上 智介 構成=池田純子)
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