巨大企業に派遣で入り、34歳で最年少執行役員になった男性の仕事ルール
プレジデントオンライン / 2021年2月25日 11時15分
■資格や知識がなくても出世する人の共通点
私はアメリカの短大を卒業して23歳の時に帰国し、大塚製薬という企業に派遣社員として入りました。最初に配属されたのは、ヘルプデスクという部署です。そこから10年間、試行錯誤を続けながら働き、34歳で大塚グループの最年少執行役員になりました。
大塚製薬は誰もが知る大手製薬会社で、有名大学を卒業した優秀な正社員が数多います。アメリカで2年制の短大しか出ていない自分と学歴で比較すると雲泥の差です。「それなのに、なぜ日本の老舗の大手企業で役員にまでなれたのか?」「何か特別な仕事術があったのか?」という質問をよくされます。
無我夢中で走り抜けた10年間が『派遣で入った僕が、34歳で巨大グループ企業の役員になった小さな成功法則』(ダイヤモンド社)という本になりました。
執筆しながら振り返った、自分の仕事術についてまとめてみました。
実は私の仕事のやり方は、誰にでもできる至ってシンプルなもので、特別な「術」は何もありません。ただ、いくつかの徹底したルールがあります。
仕事のテクニック、学歴や資格を身につけることはみんなやっているし、時間と労力を掛けたからといって、そんなに差がつくものではありません。大事なことは、どうすれば自分が職場で有利なポジショニングを獲れるのか、どのようにすれば自分の行動を変えていけるかという意識だと思います。
なぜなら、学歴だけあっても組織の中で待遇や地位が飛躍的に向上している人をあまり見たことがないからです。逆に、学歴や資格がなくても出世している人たちがいます。その人たちは決まって七転び八起きのように、くじけず前進する圧倒的な行動力があるように思います。また、彼らは切り替えが上手で、常に自身のコンディションをいい状態でキープできる方法を知っているのです。
行動力と自身のベストコンディションを維持するためのルールをいくつかご紹介したいと思います。
■スピード感を持って仕事に取り組むこと(=“量”は“質と信頼”を生む)
大塚製薬に入社時、私は「ITのヘルプデスク」の部署で仕事をしていました。簡単に言うと社員がコンピューターを使っていて、何か困ったことがあった時に、それを解決してあげる部署です。
ヘルプデスクの仕事と企業のビジネスの共通点は「個人や社会の課題を解決する」ことです。現在はコンピューターがないと仕事ができません。ヘルプデスクには、問題をいち早く解決することが求められます。ビジネスも同様で、顧客や社内が抱える課題の解決について、早ければ早い方が喜ばれます。他社、他社員より仕事が速いと、次からも指名してもらえるようになります。仕事が速いと、1日にできる仕事の量も増え、やればやるほど、経験が積めるので質が上がるようになります。
気が付けば同僚より仕事の量は多いかも知れませんが、社内外から「仕事が速くて、質がいい社員」との信頼を得られるようになります。信頼されてスピーデイに仕事ができていると、仕事に対するやりがいや達成感を得られ、いいコンディションで仕事に向かえる好循環が生まれます。
今、目の前にある仕事のスピードを上げて、アウトプットしながら仕事の質を高めていく努力をするのが第一のルールです。
■仕事の最終形をイメージしてから取り掛かり、必ずやり切ること
私は、仕事に取り掛かる前に、顧客が満足するベストな状態のアウトプットをしっかりイメージするようにしています。ヘルプデスクではパソコンの不具合を解決するだけでなく、問い合わせてきた社員が何をしたくて困っているのか、その課題を解決するまで向き合いました。
どんな仕事もゴールが設定されていると思います。コロナ禍の現在、リモートワークで気軽に社員やお客さまとミーティングできない中、ゴールの共有はメールやスラックなどの活字だけでなく、図やイメージ画像などで共有することもお勧めです。イメージを具体的に共有してからスタートした仕事はゴール時に「思っていたのと違う」「発注した内容と変わっている」などのトラブルを避けることができます。
次に、一度始めたら、そこから先は必ずやり遂げるという強い意志が重要です。やり始めると新たな課題や不具合に出合うことはままあります。時には諦めたり、最初に共有したゴールの形から安易なものに変更したりという逃げ道も考えがちです。しかし、やり切る事に固執してほしいのです。
計画も努力も止めてしまうと、すべてがそこで無に帰してしまいます。もちろん、社内、顧客ともゴールの変更が必須という意見の一致があった場合は別です。
できるだけ、最初に共有したイメージの最終形まで近づけてひた走ること。それは自身のためにもなります。やり切った後には共に仕事した仲間との信頼も増し、自己肯定感も高まります。
■何人たりとも、絶対にマウンティングさせない
世の中には顧客の立場や上下関係など、自分の意見を通すために、ポジショントークをして面倒な仕事を押し付けて、手柄は取り上げたりする人がいます。組織の大小にかかわらず、そういうマインドの人には近づかない、これも私が身につけたルールの一つです。
話を真に受けて、嫌々仕事をしたり、時間をとられたりしてはいけません。彼らはあなたを時間作業員としてしか見ておらず、成果を搾取して良心が痛まないのです。そんな仕事をしても、大抵大したパフォーマンスも上がらない上、独創的なクリエイティブな仕事はできません。また、そういう人は仕事に必要な知識や人脈の出し惜しみをすることも日常茶飯事です。
かといって組織で働く以上、逃げ回っていては仕事になりません。どうしてもそういった輩を相手にしなければならない時、私は相手をぬいぐるみだと思って、笑顔で接しながら、逃げる術を身につけました。どうしても関わらざるを得ない場合は、自分が傷つかない程度の妥協点を差し出して、損切りできる状態に持って行きます。自身の仕事に対する情熱と自尊心を守るためにも、絶対譲っては行けない線を明確にイメージしておく。万が一、相手がその線を乗り越える脅威となった時、言いにくいでしょうが、心を鬼にして、「難しいです」「できません」とハッキリ言い切るようにすることです。
■怒りが込み上げたら、飲み込み、じっと堪えること
怒って良いことはひとつもありません。怒ると視野が狭くなり思考が硬直化しますし、疲れます。怒りをぶちまけても相手も周りも気分が悪くなるだけで、何ひとついいことはないのです。だから、普段から対人関係やプロジェクトでいろいろ起こりうることを想定しておきましょう。何かあっても、「あ、そういう展開になったな」とひとごとのように処理することができます。いちいち感情に振り回されないことが大切です。
しかし時には、熱意のあまり、それでも怒りが収まらないこともあります。そんな時は、喉元まで言葉が来ても、ぐっと飲み込み、黙ってとにかく耐える。こんな時の判断はろくなことがないし、怒らせる相手の思うツボだ。その時は受け流して、落ち着いた時に冷静に判断してどうするか決めたらいいのです。怒りなんて、瞬間湯沸かし器のようなものです。そんな一瞬のことで、自らを不利に陥れるようなことをする理由はひとつもありません。
■人がやる気を失う言葉は口にしないし、言わせない
日本では一度「失敗」するとそれで終わりのような印象を持たれます。人は他人がチャレンジしてうまくいかったことを「失敗」とよび、ネガティブな印象づけを行います(本人はやったことないにも関わらず)。これはチャレンジする人のメンタルに極めてよくありません。うまくいかないことが、2度や3度あろうが、それは一時的な結果でしかない。それであなたが生涯ダメ人間だというレッテルを貼られるわけでもないのです。
チャレンジしなければ、人は成長もしないわけで、いちいちそんなささいなことで、人の気持ちをなえさせてどうするんだろうと思います。残念なことに日本社会は、失敗が許容できない方が多いように感じます。だから、逆張りをやる。何度コケてもいいので、かすり傷程度でへこたれてはいけません。小さなことで悔やんで辞めたら、あの時やっとけばよかったなんて、サイテーの思い出にしかならないのです。
また、仲間が頑張ってくじけていたら、応援してあげましょう。評論は不要です。うまくいかなかった事象について反省し、どうやったらうまくいくかの話のほうが100倍より重要です。
世の中にはいろんなタイプの人がいますが、皆それぞれ得意、不得意があります。ただ、どこかの本に書いてあるテクニックや、MBAのフレームワークをまねるだけでは、絶対に成功しません。それでうまくいくなら、今頃、世の中は億万長者で溢(あふ)れかえっていると思います。自分の性格や関心に合うやり方を選んで、自分にピッタリ馴染(なじ)むように改良を加えながら体得することが、自分の勝ちパターンを生み出す最初の一歩になるのです。
その結果、楽しそうに仕事がうまくいけば、自(おの)ずと明るくなり、人が集まるような人物になれるのではないかと思います。
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N&A、オリエント代表
1979年徳島県生まれ。高校卒業後、ミュージシャンを目指して米国に渡るが挫折。2001年に帰国。大塚製薬に派遣のヘルプデスクとして入社。上海万博出展などに携わり、またグローバルIT組織構築をグローバルリーダーとして推進。大塚倉庫執行役員IT担当を経て独立。情報セキュリティ戦略構築、組織づくり支援、教育等、各種コンサルティングを提供。特に欧米の高度セキュリティ・ソフトウェア開発の人材ネットワークを構築、国内外の企業に情報セキュリティ関連サービスを提供。
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(N&A、オリエント代表 二宮 英樹)
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