「東大生・京大生は頭がいい」は錯覚…学校教育を真面目にコツコツ積み上げてきている人たちに足りない視点
プレジデントオンライン / 2024年4月22日 15時15分
■東大生・京大生の「弱点」を見事に言い当てる
みなさんは、外山滋比古著『思考の整理学』を読んだことはありますか? 『思考の整理学』は、東大・京大の生協の売れ筋ランキングで1番になることが多い本であり、東大生と京大生のバイブルになっています。
東大生の友達でも「この本が今まで読んだ本の中で一番好きだ」という人も多いです。ただ、恥ずかしながら自分は、東大に入ってから長いことこの本を読んだことがありませんでした。
大学3年生に入ったあたりで、「有名だし、読んでみようかな」と思い立って、ある休日に一気に読んでみました。そして、「そりゃ、バイブルになるのも納得だ」と感じたのです。
この本を読む前は、「何がそんなに東大生・京大生の心を掴むんだろう? そんなに有益な情報が書いてあるのかな?」と不思議に思っていたものですが、この本を読んでその疑問は氷解しました。
読んでいて、「そりゃ、人気になるわ!」と思わず口に出してしまいそうになったほどです。本書は、東大生・京大生のような、学校教育を真面目にコツコツ積み上げてきた人たちの「弱点」を見事に言い当てて、その弱点を打破するための方法を教えてくれるものだからです。
■自分は本当に、「頭がいい」って言っていていいのか
受験勉強を積み上げている人たちのほとんどは、学校教育に染まっていて、「勉強というものは教えてもらえるのが当たり前だ」という認識になっていってしまいます。
「いいかい、これはこうなんだよ」と教わり、そこから先の広がりに関しては学ぼうとはしなくなります。僕も、「東大に合格しているんだから、自分は多くの人よりも、頭がいいはずだ」とプライドを持っていました。
ですが、この本を読んでいて、「自分は本当に、『頭がいい』って言っていていいのか?」と根本から揺さぶられました。
この本では、学校教育のことを「教える側が積極的すぎて、親切すぎて、学習者を受け身にしてしまっている」ということを語っています。
「これはこういうものなんだよ」と教えられて、それに対して疑うこともなく、「そういうものなのか」とただ受け入れてしまっている。それは教育というもののあり方として間違っている、と。
いまの学校は、教える側が積極的でありすぎる。親切でありすぎる。何が何でも教えてしまおうとする。それが見えているだけに、学習者は、ただじっとして口さえあけていれば、ほしいものを口へはこんでもらえるといった依存心を育てる。
学校が熱心になればなるほど、また、知識を与えるのに有能であればあるほど、学習者を受身にする。本当の教育には失敗するという皮肉なことになる。(P.18より)
■丸暗記するだけで、それ以上の領域に足を踏み入れない
この記述を読んでいて、僕はあることを思い出しました。それは、地理という科目についてです。地理では、日本と世界の産業について学びます。そして大抵、教科書や参考書には、こんな記述があります。
「先端技術産業では、水を多く消費するので、水が得られやすい地域に工場が立地する場合が多い」。
地理を勉強したことがある人なら、みんな読んだことのあることだと思います。ですが、よく考えると、これって不思議なんですよね。
「なんで先端技術産業では水を多く消費するんだろう?」と思いませんか?
でも、その理由について書いてある参考書は少なく、また学校でもその理由を教わることはほぼありません。習わないから、テストでも出題されませんし、多くの人は「そうなんだ、先端技術産業では水を使うんだな」と丸暗記するだけで、それ以上の領域に足を踏み入れはしません。
その先はないものとして扱ってしまい、「先生が話していなかったし、テストでも出ないから。後から戻ってこなくてもいいだろう」と、学びをストップさせてしまうのです。
本書を読んでいると、そんな「本当は疑問に思っていたんだけれど、でも教わらなかったから勉強しなかった部分」「『なぜだろう?』と感じたことはあるけれど、自分から答えを調べようとしなかった事項」を思い出して、大きく反省することになります。
■地理の勉強をして「できるようになった」は大間違い
ちなみに自分は深く反省し、「どうして先端技術産業では水を使うのか」について実際に深く調べてみました。するとその理由は、「埃やゴミなどが大敵で、それを水で洗い流しているから」だったのだとわかりました。
例えばICチップの工場に行くと、地面が金網状になっていて、その下でずっと水が流れ続けており、その水のおかげで埃が舞ってしまうのを防いでいるのだそうです。
僕はそんなことも知らずに、地理の勉強をして、「地理ができるようになった」なんて勘違いをしていたのです。
ですから、本書を読んで僕が得た教訓は、「頭が良くなったと錯覚していたけれど、それは本当の意味で勉強をしたわけではないんだな」というものです。
「学び」とは主体的に自ら知りたいと思って行動することであり、そうでないものはすべて紛い物の勉強だったのだと気付かされるのです。自分たちが勉強していたことというのは結局、本来の勉強ではなかったのだ、と。
もっと有機的に知識を繋げて、次の新しい広がりを得るための問いを自分の中で得ようとすること。そういう過程こそが、「思考の整理」なのだと思います。
『思考の整理学』は、頭のいい人であればあるほど陥りがちな勉強の弱点を教えてくれる本だと言えるのではないでしょうか?
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東京大学経済学部4年 カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35の無名校から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中、独自のスマホ勉強術を駆使して東大合格を果たす。自身のノウハウを全国の高校生に教える傍ら、人気漫画『ドラゴン桜2』(講談社)に情報提供を行う「ドラゴン桜2 東大生チーム『東龍門』」のプロジェクトリーダーも務める。『東大式スマホ勉強術』(文藝春秋)、『東大思考』『東大読書』など著書多数。
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(東京大学経済学部4年 カルペ・ディエム代表 西岡 壱誠)
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