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株が暴落してもこれだけはやってはいけない…"神改正"の新NISAで投資初心者に一番多い「危険すぎる勘違い」

プレジデントオンライン / 2024年4月29日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/izusek

新NISAを機に投資を始めたい。そんな人は何に注意すべきなのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「新NISAは損しないものと勘違いしている人が多いが、投資は常にリスクと隣り合わせだ。だからこそ、長期・積立・分散投資を心がけてほしい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

■新NISAによる投資をする層の広がり

2024年からはじまった「新NISA」。楽天証券では、2024年1月末時点において新NISA口座開設者の半数以上を30代以下が占め、男女別では女性が5割以上だったと発表しており、投資をする層の広がりを感じる結果になっています(楽天証券「2023年12月期決算説明会資料」2024年2月9日)。

そこで今回は、新しい少額投資非課税制度(=新NISA)で投資をはじめた初心者が陥りがちな失敗や注意点を挙げてみたいと思います。

最初に、「新NISA」とこれまでの「NISA」の違いからおさえておきましょう。

新NISAでは、制度が恒久化され、非課税期間も無期限になりました。さらに、年間投資上限額が引き上げとなり、40万円だった「つみたてNISA」は「つみたて投資枠」として上限が120万円に拡大。また、これまで年間投資上限額が120万円だった「一般NISA」は「成長投資枠」として240万円が上限に。そして、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が併用可能になったことから、新NISAの年間投資上限額は最大360万円まで拡大されました。

■「投資枠の復活」を活用して投資を続ける

そして、私が画期的だと思ったのは、非課税限度額における「投資枠の復活」です。新NISAでは、生涯非課税限度額の上限が1800万円となっています。たとえばつみたて投資枠と成長投資枠を併用して360万円を毎年投資した場合、5年で非課税限度額上限の1800万円になりますよね。それを、1年後に2000万円に増えたタイミングで売却したとしましょう。すると、売却した翌年に再び1800万円の非課税投資枠が復活する、というのが「投資枠の復活」の仕組みです。

ここでのポイントは、買付金額ベースでの復活である点。2000万円に増えたからといって2000万円が非課税投資枠として再利用できるのではなく、あくまで買付時の金額である1800万円がベースです。50万円投資して3年後、150万になった時に売却した場合は、買付額の50万円が翌年、非課税投資枠として復活する、ということです。

なぜこれが画期的かといえば、非課税というメリットを受けながらNISAを利用した賢い資産運用を続けることが可能になるからです。実際、証券会社の社員の方も、「儲かったタイミングですぐ売って、日用品に使っています。最近も売却益で冷蔵庫を買ったばかりですよ」と話してくれました。たとえば30万円投資して60万円になった時に売却すれば30万円の利益となり、新NISAであればまるまる非課税で受け取れますので、この30万円を元手に冷蔵庫やテレビを買う、ということですね。

売却後も年間の非課税投資枠に余裕があれば、すぐに投資を始めることができますし、非課税限度額上限まで利用していたとしても、上記のように元本ベースで翌年に非課税枠が復活するので、再度非課税での投資ができるわけです。

※翌年に非課税枠が復活しても年間で投資できる金額は最大360万円まで。

■一番多い勘違い「新NISAは損しない」

“神改正”とも言われ、メディアでも大々的に取り上げられている新NISAゆえ、「はじめないとヤバくない?」「やらなきゃ乗り遅れる」といった感じで、私のもとにもたくさん若い方から(特に女性が多い!)問い合わせがきています。その一方、これはマズいかも、と感じることもありまして……。

一番多い勘違いは、「新NISAは損しない」です。つみたて投資枠(旧つみたてNISA)でいえば、6000本ほどある投資信託の中で、国が定めた一定の基準を満たす商品が約280本(2024年4月現在)ラインナップされています。そのことが、「国が選んでおすすめしているなら安心・安全」という思い込みを招くようで、「新NISAは損をしないもの」と勘違いしている方が非常に多いのです。

国が積極的に展開しているものであっても、投資において、「絶対損しない」「必ず得をする」商品はありません。実際、成長投資枠で一気に買い付けて値下がりした人もいますし、今は好調でも、今後暴落する可能性もある。投資は常にリスクと隣り合わせであることは“基本のき”である以上、新NISAにおいても、「長期・積立・分散投資」を心がけてほしいと思います。

■「下がると怖い」つみたてNISAでは“狼狽売り”も

「長期・積立・分散投資」とは、決まった間隔で一定額を長いスパンで積み立て、さまざまな投資先に資産を分散させること。長期・積立・分散投資は、20年以上続けることで元本割れする可能性が低くなるものです。金融庁からも、長期投資によって収益が安定的に推移するという解説が公開されていますので、ぜひ確認してみてください。(金融庁「資産形成の基本」)

投資信託で資産が増えるイメージ
写真=iStock.com/shylendrahoode
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shylendrahoode

旧NISAのつみたてNISAをやっているお客様から、コロナショックやウクライナショックなどの暴落局面の時に、「下落したんですけど売った方がいいですか?」という問い合わせや、「下がると怖い」という連絡がきたり、“狼狽売り”する方も続出。「1、2万円であっても、一時的でも、元本割れすることが耐えられない」というお客様もいましたが、値下がりは、“仕入れ時”。売却のことだけ考えると損したように思えますが、安いということは例えば、投資信託での積立投資ならその分、口数が多く買えるということ。「長期・積立」を続けることによって価格変動の影響が抑えられ、リスクが低くなるのです。

また、高齢の方の場合、「債券」というワードに対して安心感を持つ方が多いそうで、新興国債券をポンと500万円分、買ってしまうようなお客さまがいると聞きます。また、「外貨建て保険」も、「保険」というワードが投資の顔をしてないように見えるからか、これまた大きな金額をドンっと入れてしまう方が後を絶ちません。「債券」も「外貨建て保険」も「新NISA」もすべて投資商品であり、常にリスクを孕んでいることをどうかお忘れなく。

■長期運用だからこそ「信託報酬」の影響は大きい

また、新NISAをはじめた人は「オルカン」こと、全世界株に投資する商品を選ぶ方が多いですが、新NISAの「つみたて投資枠」で購入できる商品だけでも20本程度ラインナップされています。しかし、「全世界株式なら何でもOKでしょ」という選び方をしてしまうと、信託報酬の高い商品を選んでしまっている可能性があるので、注意したいところ。購入の際には、「全世界株」の商品一覧から信託報酬を見比べてください。長期で運用することになる投資信託の場合、信託報酬という名の“手数料”の影響は大きいです。商品を比較し、低コストのものを選ぶようにしましょう。

ただ、今はさまざまな金融機関が新NISAをビジネスチャンスと捉えて顧客争奪戦を繰り広げています。信託報酬についても引き下げ合戦のような様相を呈しているところもあり、「あそこのファンドが最安値だったから買ったのに、今日はこっちのファンドのほうが下がってる!」みたいなことがしょっちゅうあります。商品の比較はもちろん大切ですが、かといってあまり右往左往せず、「コレ!」と決めたらどっしり構えるのが、長続きの秘訣。神経質になりすぎず、何度も言いますが、「長期・積立・分散」をおさえてやっていきましょう。

証券取引所
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■リスクを理解しつつ賢い資産形成を

政府がこのタイミングで少額投資非課税制度を拡充したのは、「自助」の意味合いが大きいでしょう。マイナス金利が解除され、賃上げの動きも高まる中ではありますが、物価上昇・実質賃金23カ月連続減少と、先行きはまだ不透明です。少子高齢化と社会保障の問題もあり、「現役時代からコツコツお金を増やして、将来に備えてください」というメッセージなのかな、と感じています。そんな中、私たちは“神改正”などという煽り文句に踊らされることなく、リスクを理解した上で、「長期・積立・分散」をベースにした賢い資産形成を進めていきたいですね。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)

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