「1年以内に経済危機がくる」世界的投資家ジム・ロジャーズが資産を守るために勧める"金融商品の名前"
プレジデントオンライン / 2024年5月2日 8時15分
※本稿は、ジム・ロジャーズ/渡邉美樹(著)、花輪陽子/アレックス・南・レッドヘッド(監修・翻訳)『「大暴落」 金融バブル大崩壊と日本破綻のシナリオ』(プレジデント社)の一部を抜粋・再編集したものです。
■迫りくる世界恐慌に対する、最強の資産防衛法とは
【ジム・ロジャーズ(以下、ロジャーズ)】世界恐慌から資産を守る方法としてもっとも有効なのは、金と銀の保有だと私は思います。なぜなら、何か悪いことが起きたときに金や銀の価格は上昇するので、保険的な役割を果たしてくれるからです。
金や銀を保有するのは、資産を増やすための投資ではなく、資産を守るための保険としての投資です。生命保険と同じく、資産の一部として金や銀を保有していると、危機が起きた際に資産を守ってくれます。
私は次の危機で「世界が崩壊する」と予言しているわけではありません。けれど、次の危機によりみなさんの資産が大きな痛手を受けないように備えることはとても重要です。その意味でも、私は金と銀の保有を勧めているのです。
一方で資産を増やすための投資をしておくことも大事です。読者のみなさんが興味のある国を調べて、有望な投資対象を探してみるといいでしょう。
私が子どものころ、アメリカ人の多くは日本製品をバカにしていました。当時、日本に投資していれば、アメリカ人のほとんどが巨大な富を築くことができたはずです。他人の言うことを聞いても当てになりません。自分で考えることが大事です。
■株式の時代から商品(コモディティ)の時代へ
【ロジャーズ】多くの人には投資対象としてなじみがないかもしれませんが、商品(コモディティ)には原油やガソリンなどのエネルギー、金や銀などの貴金属、トウモロコシや大豆などの穀物といったものがあります。それらすべてが投資対象となっています。
私は長い間、商品に注目して投資を続けてきました。長期的に見て、商品ほど儲かっている資産は少ないからです。
今は相関状態ですが、基本的に株式と商品の相場は、逆相関の関係があります。つまり、株式が上昇するときには商品が下がり、商品が上がるときには株式が下がる、といったように、逆に動きます。そして、約18年サイクルで両者の優位性が入れ替わります。
私は世界のインフレが再加速する可能性があると見ていますので、ポートフォリオには、ある程度の商品を組み入れておくのもいいと考えています。
商品への投資は以前よりも簡単にチャレンジできるようになっています。商品関連のETFやインデックスファンドを利用すれば、個人でも気軽に投資ができます。大きなリスクをとらなくても、商品相場の上昇を自身の資産に取り入れることができるようになっているので、もし商品に興味があるなら、あなたのポートフォリオに組み込んでもいいでしょう。ただし、私が言ったからではなく、あくまでもあなたがその商品に詳しくて、興味があればの話です。
【渡邉美樹・ワタミ会長(以下、渡邉)】仮に円の暴落が現実になった場合、目安として私は1ドル=300円を想定していますが、そのときには、日本の優良株も暴落します。そのタイミングで日本株を買う。不動産も下がるはずですから底で拾う。
その時点で「アメリカの国債3分の1、日本株3分の1、日本の不動産3分の1」のポートフォリオにします。おそらく、このオペレーションによって資産を守ることはできるというのが私の考え方です。
【ロジャーズ】私も渡邉会長の考えに似ています。私はいずれ大不況がくると予測していますが、そのときには、世界中が安全資産と考えるドルが、さらに買われるでしょう。
ただ、私自身はドルを安全資産だと思っているわけではありません。世界の金融市場が「ドルが安全資産だ」と考えているため、危機の際にドルの価格はより上昇するはずです。だから私もドルを保有しているのです。そしてドルがバブルの水準に達したらドルを売るタイミングですから、売らなければなりません。そのとき、私にドルを売る勇気があることを願っていますが、ドルを売って、何を買えばいいのか私にはまだわかりません。
私が今いちばん心配しているのはインフレです。インフレが続くと、金や銀の価格が上がっていきます。一方で金利が高くなるので、不動産や株式の価値は下がります。全面的な資産安になってしまうことを懸念しています。
【渡邉】世界恐慌になった際も、ドルが強くなると考えていますか。
【ロジャーズ】世界恐慌がきたとき、投資家たちは安全だと思っているドルに群がると考えています。そのときにドルはバブルになるかもしれません。ただ、一つ警告しておきたいのは、歴史的に見てもアメリカはどの国よりも借金が増えています。借金が多い国ですから、ドルは絶対的に安全な通貨とは言えません。
■日本円以外の通貨を保有して次の投資への準備を
【渡邉】かつては円が安全資産と考えられていたと思いますが。
【ロジャーズ】歴史が美しいと思うのは、常に変化があることです。昔は円が安全通貨だとされていましたし、日本はすばらしい国だと思われていました。しかし、国であろうと、通貨であろうと、すべてが変化していきます。アメリカもいずれは変化を遂げます。ですから、私もドルを売るタイミングを見つけたいと思っています。さまざまな国のさまざまな通貨のめまぐるしい変化を捉えることが、投資家としての大事なスキルの一つでもあるのです。
【渡邉】読者へのメッセージは「今はドルを保有して、次の投資をする準備をしよう」ということですね。
【ロジャーズ】正しくは日本円以外の通貨です。それがドルかどうかは私にはわかりません。なぜなら、もし円が崩壊してしまえば、ドルも崩壊する可能性があるからです。その意味で「ドル」と断言しにくいのですが、次のショックがくる前に日本円以外の通貨、あるいは金や銀などに投資しておくべきなのは確かでしょう。
世界中で刷られ続けている紙幣へのツケはいずれ必ず回ってきて、不幸な結果をもたらします。そのときには、紙幣への信頼性は失われ、相場は大暴落します。日本円が崩壊すれば、みなさんが持っている円は価値を失い、紙クズ同然になってしまいます。円以外の通貨をよくチェックして準備しておくといいでしょう。自国以外の国に投資する機会は必ずあるはずです。
■危機の後には、投資のチャンスがある
【渡邉】世界恐慌が起きたときは投資のチャンスと考えていいでしょうか。
【ロジャーズ】ハイパーインフレで通貨が暴落したときは、何もかもがバーゲンになります。コロナ禍は経済的にも大きなショックをもたらしましたが、「危機」の後には、さまざまな投資機会が生まれることも事実です。私は、以前からコロナショックの後には観光やそれにかかわる航空会社、飲食、ホテルなどの業界にチャンスがあると言ってきました。現に、日本でもコロナ禍前以上にインバウンド需要が高まっているでしょう。まさにチャンスが到来しているのです。
しかし、私自身は、2023年に入ってから先進国への投資を控えています。その理由は、今後1年程度の間に大きな経済ショックが待ち構えていると考えているからです。
アメリカでは2009年以降、大きな経済ショックを経験していません。14年もの間、何もショックがなかったのは歴史的に最長です。そう考えても、近いうちにアメリカで何らかの大きいショックがあると考えています。
ジム・ロジャーズ氏のインタビューは「プレジデント オンライン アカデミー」の動画でもご覧いただけます。
*視聴には会員登録が必要な場合もあります。
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投資家
ロジャーズホールディングス会長。1942年、米国生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。73年にクォンタム・ファンドを設立し、ヘッジファンドという手法にて莫大な資金を運用して財を成した。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。『大転換の時代』(プレジデント社)、『世界大異変』(東洋経済新報社)など著書多数。
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ワタミ会長兼社長CEO
1959年、神奈川県生まれ。明治大学商学部卒業。84年、ワタミを創業。2013年、ワタミグループ会長を辞任。同年7月、参議院選挙に出馬し、当選。現在、自民党の国会議員として活動している。『夢に日付を!』ほか著書多数。
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(投資家 ジム・ロジャーズ、ワタミ会長兼社長CEO 渡邉 美樹)
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