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内部告発に揺れる兵庫県 調査前から「法的措置」言及する斎藤知事の姿勢に疑問の声

産経ニュース / 2024年4月23日 19時54分

兵庫県が1件の内部告発に揺れている。3月に当時の県幹部が斎藤元彦知事ら幹部の言動を「違法行為」などと指摘する文書を作成し、県議などに配布。斎藤氏は名誉毀損(きそん)にあたるとして「告訴などの法的手続きを進めている」と言及した。ただ、調査前から文書の内容を「事実無根」と公言し、パワハラを含む自身の疑惑について説明していない斎藤氏の対応を県議らは疑問視している。

7項目にわたる疑惑

騒動の発端は、異例の人事だった。県人事課が3月27日、4日後に退職を控えた西播磨県民局長(部長級)の男性を解任し、総務部付とした。

同日の定例記者会見で斎藤氏は男性が文書を作成したとして、退職を保留した理由について「事実無根の内容が多々含まれている文章を職務中に職場のパソコンを使って作成した可能性がある。綱紀粛正しなければならない」と述べた。懲戒処分も検討している。

文書には、斎藤氏による職員へのパワハラ▽複数企業からの贈答品▽斎藤氏が初当選した令和3年知事選での県幹部による事前運動-などの疑惑を7項目にわたり記載。3月中旬に報道機関や県議、県警に送られた。

斎藤氏は「職員らの信用失墜、名誉毀損など法的な課題がすごくある。被害届や告訴も含めて法的手続きを進めている」と明言。「業務時間中に噓八百含めて文書を作って流す行為は、公務員として失格」と非難した。

県議「知事は説明を」

一方、男性は今月1日、報道機関あての文書で「内容の調査も十分なされていない時点で、記者会見という公の場で告発文書を『事実無根』と決めつけた」と批判。事実無根とする根拠を示すよう斎藤氏に求めた。

翌2日の会見で、斎藤氏は文書を虚偽と判断した具体的根拠は示さず、内容は今後調査していくと説明。調査は県の人事当局が担うとし、外部への委託には否定的な考えを示した。パワハラなど自身の疑惑の真偽については「全体を精査した上で伝えた方がよい」と回答を避けた。

潮目が変わったのは、16日の県議会常任委員会だった。文書に記載された贈答品の一つに関し、県幹部が受領を認める事態に発展。この幹部は斉藤氏からの指示を否定したが、一部の委員は、文書には事実も含まれていると指摘した。

議会側では、第三者委員会による調査を県に求めたり、地方自治法に基づく調査特別委員会(百条委員会)の設置を模索したりする動きもある。ある県議は「事実無根とするなら、知事側はその根拠を示さなければならない」と話しており、今後の展開は波乱含みだ。

公益通報態勢に「遅れ」

企業や官公庁における違法行為を告発する手段として、職員らが組織内の窓口などに訴える「公益通報」がある。兵庫県の通報窓口は県庁内に限られ、県民局長を解任された男性は「信用できない」として今月4日の公益通報に先立ち、県議や報道機関などに告発文書を配布していた。専門家は、独立性などに照らし「外部に窓口があった方が利用しやすく、組織として自浄作用を発揮できる」と指摘する。

公益通報保護法では、通報した人に対する不利益な取り扱いを禁止し、内部通報の体制整備を求めている。常時勤務する人が300人を超える組織には、窓口の設置が義務づけられる。

令和5年度の消費者庁の調査によると、弁護士事務所など外部に通報窓口を設けている都道府県は6割を超えた。だが兵庫県では通報窓口が県庁内にしかなく、公益通報制度に詳しい上智大の奥山俊宏教授は「兵庫県の内部通報制度は間口が狭く、現状では遅れている」と指摘する。

その上で、今回の文書の調査について「県職員による調査では、知事らが影響力を行使できたり職員が忖度(そんたく)したりする余地があり、結果への信用を得られない」と指摘。「独立性を確保し、客観性と専門性を備えた調査のためには、第三者委員会を設けた方がよい」と話している。(喜田あゆみ)

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