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「差別はあるが命の危険感じず」 トルコのクルド人、元UNHCR駐日代表が調査

産経ニュース / 2024年5月5日 8時0分

滝沢三郎氏

トルコの少数民族クルド人を巡り、欧米への密航を高額な手数料で手引きする違法なネットワークが現地で確立され、渡航費用が安い日本がクルド人の流入先になっていることなどが、日本の専門家による現地調査で明らかになった。調査では、トルコで過去に激しい迫害を受けていたクルド人の立場が、今世紀に入り激変していたことも判明した。

「クルド人への差別はあるが、ルールに従えば命の危険までは感じない」。トルコ国内の建設業の30代男性はいう。

トルコでは長らく、クルド人が迫害を受け、人権団体がたびたび警告を発してきた。男性の父親もクルド人というだけで軍の警察に逮捕され、親族は過去に殺害された。

だが、2003年に首相として政権を掌握したエルドアン現大統領はクルド人との融和政策を推進。その後、副大統領にもクルド系を据えた。

例外が、トルコからの分離独立を求める非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」だ。トルコはPKKをテロ組織と指定。トップは今も収監されている。

男性はPKK支持を公言。地元警察に逮捕され「テロ活動には従事するな」との警告を受けた。クルド人だというだけで警察に因縁をつけられたこともあり、根強い差別は実感しているが、家族と平穏に暮らしており「私は自分の土地で死にたい」と、移民を選択するつもりはないという。

海外の認識も変わりつつある。英国はトルコ情勢報告書で、PKK支持者は迫害対象というよりテロ行為に関する訴追対象だと指摘。訴追時の差別的な扱いなどの状況が示されなければ迫害を認定できないとしている。

日本ではクルド人とみられるトルコ人からの難民認定申請が令和5年に前年の5倍の2406人に急増。入管関係者は「一部は親族を頼った経済移民が危険性を過度に言い立てている可能性がある」との見方を示す。

「個々の事情に応じ対応を」 調査を行った元国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日代表の滝沢三郎・東洋英和女学院大名誉教授の話

今回、トルコでクルド人に関する現地調査を実施したのは、クルド人に関する現在の実情が必ずしも明らかになっていなかったからだった。

政府を頼らず、NGOなどの情報源を駆使した調査で判明したのは、クルド人に対する差別はないとはいえないが、クルド人というだけで身の危険を感じるような迫害を受ける状況ではないということだ。

トルコからの分離独立を求める「クルド労働者党(PKK)」に関しては今も対立が続いているが、支持を公表した後も平穏に生活するクルド人がいたことには驚いた。

日本ではクルド人とみられるトルコ人の難民認定申請が相次いでいるが、申請における迫害が何を指すのか、難民認定に該当するものなのか。現地の情勢も踏まえて慎重に判断すべきだろう。

埼玉県川口市では一部クルド人が地元住民とトラブルになっているようだが、日本には法令を順守して大過なく暮らすクルド人も多くいる。

今後もクルド人の海外における実態把握を進め、個々の事情に応じた対応をする必要がある。(談)

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