60代で5種類以上の薬を飲んでいると転倒リスクが2倍に…健康長寿につながらない、本当は怖い薬の副作用とは
集英社オンライン / 2024年4月21日 9時0分
〈60代女性が気をつけるべき「低血糖」の恐怖。意識混濁、失禁、やがては命の危険も…シニア世代が陥りやすい「フードファディズム」とは?〉から続く
高齢になるとカラダのあちこちにガタがきて、どうしたって薬に頼ることが多くなる。しかし、年をとればとるほど副作用が起きやすくなることをご存知だろうか。ではいったいどんなリスクが待ち受けているのか。
『60歳から女性はもっとやりたい放題』 (扶桑社新書) より、一部抜粋、再構成してお届けする。
骨粗鬆症の薬でかえって骨折しやすくなる!?
高血圧や高血糖自体を、薬を使って一時的に改善したとしても、それが本当に健康長寿につながるのかどうかは、実ははっきりとはわかっていません。
だから、頭がぼーっとするとか、ふらつくといった症状を我慢してまで、薬で無理に血圧や血糖値を下げる必要はないのではないかと私は思っています。薬を飲み続けることで血圧や血糖値が「正常値」になったとしても、他の症状に苦しめられるのだとすれば、果たしてそれは「正常」なのかという疑問も残ります。
薬というものに絶対的な信頼を寄せる人はとても多いのですが、高齢になるほど副作用が起きやすくなることは絶対に忘れてはいけません。
例えば歳をとるとどうしても深い睡眠が減るので、夜中に何度も目が覚めるようになります。それが嫌だからと睡眠薬を飲む人は多いのですが、最近睡眠薬として処方されるのはその大半が睡眠導入剤なので、寝付きはよくなっても、眠りが深くなることはありません。
だから睡眠薬を飲んだとしても夜中に目が覚めることには変わりないのです。つまり、本来の目的は果たせないので、睡眠薬を飲むことにたいしたメリットはありません。
ところが睡眠薬の中には筋弛緩作用が働くものが多く、足がふらつく原因になります。実際、睡眠薬を飲んでも結局夜中に目が覚めて、トイレでも行こうと立ち上がったら、ふらついて転倒するケースは珍しくありません。
また、女性に多い骨粗鬆症にも薬はありますが、実は胃腸障害という副作用が起こることが多々あります。そのせいで食欲が落ちてしまって栄養状態が悪くなり、かえって骨折をしやすくなるというのは、高齢者を専門に診る医者の間では有名な話です。
薬の多量摂取で転倒リスクが倍に
多くの種類の薬を一緒に飲むことでどのような作用が及ぶのかはほとんど検証されていないのですが、唯一わかっているのは、5種類以上の薬を飲むと転倒のリスクが倍になるということです。
特に女性の場合は骨粗鬆症の傾向もありますから、転倒したら骨折する可能性が高く、それがきっかけで体の自由が効かなくなってしまう危険もあります。これはもう、立派な薬害ではないでしょうか。
近年高齢ドライバーの暴走事故が問題になり、認知機能や判断力の話を持ち出して、あたかも年齢だけが原因であるかのような話になっていますが、そんなことよりむしろ服用している薬が影響していると私には思えてなりません。
高齢者はたいがい何らかの薬を服用していますから、降圧剤で血圧が下がりすぎたり、糖尿病の薬で極端な低血糖に陥ったりしたせいで、意識障害を起こしてしまったのかもしれません。
他の病気の薬のせいでせん妄という意識障害のような症状が出ていた可能性だってあると思います。もちろん意識がもうろうとした状態はとても危険で自動車の暴走事故が起こっても不思議ではありません。
製薬会社に忖度しているのか何なのかはよくわかりませんが、テレビなどでそういう問題に声をあげる人は私の知る限りほとんどいません。そんな重大な問題を一切検証することなく、「年寄りは免許を返納しろ」という空気をつくり上げていくことに私は強い憤りを感じずにはいられません。
薬の相談に乗らない医者は切り捨てよう
医者にもらった薬を言われるがままに飲み続けて、いつの間にか薬漬けになり、むしろ体調が悪くなったり、寿命を縮めたりするリスクはみなさんが想像している以上に高いのです。
この薬を飲むと体調が悪くなるなと思ったら、思い切って量を減らしたりやめたりしてみてもいいと私は思うのですが、自己判断でそれをするのはやっぱり怖いという方もいるでしょう。
だからといって我慢して飲み続けるのは、それ自体もストレスになっていいことは何もないので、どのような症状が出ているのかを処方した医師に必ず相談するようにしてください。
「副反応のようなものだから仕方がないですよ」とか「頑張って薬を飲み続けましょう」と言うような医者は、どれだけ親切そうな顔をしていても、教科書通りの診察しかできないダメな医者だと思います。
うまく言い返すことができず、その医者の言いなりになる方が多いのですが、本当に健康でいたいなら、ダメ医者はさっさと切り捨てて、別にいい医者を見つけるべきです。
理想的なのは患者が苦痛なく、そして、できるだけ生活の質を落とさずにいられるよう親身になって考えてくれる医者です。多くの高齢者を診てきた医者であればそのノウハウを持っている可能性が高いですし、70代・80代になっても良い相談相手になってくれるはずです。
どんなに腕がいいと評判でも、嫌だなと感じる人や、自分には合わないなと感じる人とは無理して付き合わないのが原則であることは、相手が医者であっても同じなのです。
文/和田秀樹 写真/shutterstock
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